岸田首相議長の「新しい資本主義実現会議」が緊急提言取りまとめ
政府の「新しい資本主義実現会議」(議長・岸田文雄首相)は11月8日、首相官邸で会合を開き、経済体制や税制改正などに関して最優先で取り組むべき項目を盛り込んだ緊急提言を取りまとめた。
岸田首相が打ち出している「成長と分配の好循環」の実現を後押しするため、経済成長促進策として、スタートアップ企業の支援や先端科学技術の開発推進などを列挙。分配については非正規労働者のキャリアアップ支援、フリーランスを保護する新たな法律の制定、看護師や介護士の待遇改善などを示した。岸田首相が所信表明演説などで訴えている公約を基本的に踏襲させた内容だ。
岸田首相は会合の席上、「明日以降、全世代型社会保障構築会議、デジタル田園都市国家構想実現会議、デジタル臨時行政調査会の3つを立ち上げ、岸田政権の主要政策の具体化を進める。新しい資本主義実現会議ではこれら3つの会議での検討結果を統合した上で、来春にグランドデザインとその具体化の方策を取りまとめ、世界に向けて発信する」と強調した。
政府は提言内容を11月中に策定する経済対策に反映させる考え。
会合で発言する岸田首相。右は山際大志郎経済財政・再生担当相(首相官邸ホームページより引用)
提言は成長戦略として、地方から社会のデジタル化を広げ、過疎化や高齢化などの課題解決を図る「デジタル田園都市国家構想」を起動させる方針を表明。そのため、低速・小型で非接触型の自動配送ロボット実用化のための関連法案を2022年召集の次期通常国会に提出する方針を明示した。
また、ドローンを物流や保安、防災など幅広い領域で活用できるよう、22年度中に人口が多い地域での目視外飛行(レベル4)を解禁することにもあらためて言及した。
併せて、地域の自主的なデジタル化の方策を応援するため、交付金を大規模に展開することや、テレワークをさらに広めるためのサテライトオフィス整備・運営をサポートしていくことなども記した。
高齢者の移動手段確保へ自動運転移動サービスを認める新制度を創設するための関連法案を22年の次期通常国会に提案すると明言した。
スタートアップ企業の支援では、中小企業の研究技術開発と事業化を一環して支えるSBIR制度の着実な運用、雇用を増やす企業への政策金融による融資、SPAC(特別買収目的会社)制度の検討などを通じた上場を促す環境の整備、大企業とスタートアップ企業の取引関係適正化といった施策を総合的に展開するよう求めている。
また、岸田首相が重視する姿勢を見せている、経済の側面で国や国民をさまざまな脅威から守る「経済安全保障」について、重要な技術・物資の生産・供給能力などの戦略的な国内産業基盤の確保を目指し、中長期的な資金拠出などの枠組みを検討、早期に構築する方向性を表した。
(藤原秀行)