【現地取材】兵庫・猪名川で竣工のプロロジス物流施設、地域との共生重視した“防災の砦”に

【現地取材】兵庫・猪名川で竣工のプロロジス物流施設、地域との共生重視した“防災の砦”に

ドクターヘリ着陸可能な8000平方メートルの防災広場整備

プロロジスは11月26日、兵庫県猪名川町で竣工した大規模なマルチテナント型物流施設「プロロジスパーク猪名川1」の内覧会を現地で開催した。

同社は猪名川町で造成工事を行い、大規模なマルチテナント型物流施設2棟を建設するプロジェクトを進めてきた。「猪名川1」は2棟目で、2005年から地元の猪名川町などと連携して展開してきた同社最大級のプロジェクトが一区切り付いた格好だ。

「猪名川1」は地上6階建て、延べ床面積は21万8179平方メートル。今年8月に隣で完成した「プロロジスパーク猪名川2」(15万8644平方メートル)と合わせて約38万平方メートルに達した。現時点で9割程度のフロアが契約済み。

大きな特徴が周辺住民との共生を重視し、災害発生時に避難拠点として使うことを想定している点だ。大規模災害が起きても物流拠点としての機能を失わず早期に復旧できるようにするとともに、避難できる場所の確保などにも配慮。従来の「倉庫」のイメージを完全に覆した、まさに“防災の砦”と言える存在だ。


「プロロジスパーク猪名川1」


隣接する「プロロジスパーク猪名川2」


敷地は高台に位置し、隣の川西市などの街並みが一望できる

非常時に14日間電力供給可能

「猪名川1」はBCP対策で基礎免震構造を採用しているほか、非常用発電設備を設置。加えて、プロロジスとしては初めて、建物の地下に発電用燃料を1万5000リットル貯蔵できるオイルタンクを導入した。防災センターや入居企業の事務所などに最大約14日分の電力を供給できると見込んでいる。備蓄する燃料は入居企業にも提供する計画。

また、防災備品庫を設け、同施設に避難してきた周辺住民に提供することを想定。貯水槽は30日分のトイレ用水を確保し、断水時でも物流施設としての機能がストップしないよう計画している。

施設に隣接したエリアには約4000平方メートルの公園と約8000平方メートルの防災広場を整備し、猪名川町に提供した。プロロジスは19年に猪名川町と防災に関する連携協定を締結済みで、防災広場はヘリポートとしてドクターヘリを受け入れたり、消防活動や避難の拠点として使われたりする予定だ。


免震装置の積層ゴム


施設の駐車場に隣接する防災広場。へリポートのマークも見える


整備が進む公園

不動産業界でもSDGs(国連の持続可能な開発計画)対応が重視されている潮流を受け、猪名川プロジェクトの2棟は環境負荷軽減策をふんだんに取り込んでいる。2棟全体に人感センサー付きLED照明を用いており、特に倉庫部分はプロロジスがメーカーと共同開発した、通常のLED照明より電力使用量を半減できる高天井用センター付きインテリジェントLED照明を活用。

2棟の屋根には合計6メガワットの自家消費用太陽光発電設備を検討しているほか、敷地内の電気自動車(EV)の充電設備も設ける。施設の消費電力や水の使用量をリアルタイムでモニタリングできるシステム「プロロジススマートボックス」を駆使し、施設全体の省エネを徹底。各施策を基に、建物内で石油などの「1次エネルギー」の消費量を限りなくゼロにするZEB(ビル)認証をプロロジスとして初めて物流施設で取得することを目指している。


高天井用センター付きインテリジェントLED照明。人がいる付近が他のところより自動的に明るくなっている

物流の機能面では、各階のバースに45フィートコンテナセミトレーラーがアクセスできる箇所を設けているほか、中央車路を隔ててワンフロアが最大約1万坪と入居企業が効率的なオペレーションを行えるだけの広さを確保している。
プロロジスが協力関係にあるHacobuのトラック予約受付システム「MOVO Berth(ムーボバース)」を2棟で使えるようにし、トラックの待機場も合計で約60台分をキープ。ドライバーの受付・待機スペースも設けている。


45フィートコンテナセミトレーラーが接車できるエリア。奥側より長くなっている


中央車路


ドライバーの受付・待機スペース。シャワーを備えている


「猪名川1」1階のカフェテリア


見晴らしの良い休憩室


最寄り駅と結ぶバス。プロロジスのオリジナルロゴが側面に印刷されている


建物入り口にデジタルサイネージ(電子看板)を設置し、猪名川町の情報などを表示している

(藤原秀行)

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