納期に先送りの懸念“果たして間に合うのか”
人手不足からマテハンやロボットなどによる自動化・省人化の促進が課題とされている物流業界。最近では荷主企業が物流面の自動化に関する情報収集を本格化させているほか、一部の大手物流企業などでも設備導入・運用を進めている。これから物流業界では中小企業も含めて自動化投資が相次ぐと目される中、マテハンメーカーなど機器サプライヤーの受注残高が急増していることを注視する向きもある。
先ごろロジビズ・オンラインの取材に応じた大手物流企業関係者は「製造業・小売業・卸売業によるプロジェクトの大型化、システム機能の高度化によりマテハンメーカーの受注残が高水準で推移している。仮に今すぐ投資決定を行っても納期は1~2年先。これから物流業界全体で自動化投資が本格化すること考えると、同業他社に先んじてより早い段階で発注先を確保しておきたいのが本音」と語る。
しかし、テスト導入において自動化設備の成果が出ていないこと、システム刷新やオペレーションの見直し、多額の資金負担や投資回収期間に対する懸念から「中長期的な貨物輸送の動向も踏まえて投資対効果をしっかり精査する必要がある。ただマテハンメーカーのキャパシティーと深刻化する人手不足を前にそうそう悠長なことは言っていられない。いろいろな要素が絡み合って今とても悩んでいる」(別の大手物流企業関係者)と投資計画の立案に苦慮している声も聞かれた。
一方でマテハンメーカーに対する業務遂行能力とシステム提案力を懸念する見方もある。金融業界関係者は「小売業を中心に物流設備投資はコスト・機能・納期ともに大型化が著しい。1プロジェクトで投資規模が数十億~100億円クラスも珍しくない。マテハンメーカーのビジネスもかつてのような機器単品売りから様変わりしている」と分析。
その上で「多様・広範な機能のエンジニアリング、インテグレーション、プロジェクトマネジメントなど、物流機器も今や製造プラントに近いアイテムになりつつある。長らく機器売り・短納期のビジネスを展開してきたマテハンメーカーにとって、このようなオーダーやニーズの変化にどれだけ対応することができるか。彼らにとっても試金石」と指摘。物流企業、マテハンメーカーともに市場環境が変革期を迎えていることを示唆した。
(鳥羽俊一)