2022年物流カレンダー・「働き方改革」タイムリミットまで2年切る

2022年物流カレンダー・「働き方改革」タイムリミットまで2年切る

ドローンや配送ロボットの普及へ法的整備も

新型コロナウイルスの感染拡大に振り回され続けた激動の2021年が間もなく終わり、22年が幕を開けようとしている。物流関連で予定されていたり、見込まれていたりするイベントの概要を紹介する。持続可能で高付加価値の物流を構築できるか、重要な1年となりそうだ。

▼日本通運グループが「NIPPON EXPRESS」に移行
国内物流業界を代表する存在の日本通運は1月4日、持ち株会社体制に移行する。新たにグループを統括する「NIPPON EXPRESSホールディングス」が誕生、日本通運など主要事業会社が傘下に収まる。グループ企業の社名はNIPPON EXPRESSの短縮形ブランド「NX」で統一。国内外で結束を強化し、グローバル市場で存在感を発揮していくことを目指す。日本の物流ブランドが世界で注目される契機となることが期待される。


新ロゴマーク(日通提供)

▼東証が市場再編、上場物流企業も対応必須
東京証券取引所が市場区分を再編、4月4日に新体制がスタートする。これまでの1部、2部、マザーズ、ジャスダックから「プライム」「スタンダード」「グロース」に変更。最上位のプライムは上場基準をより厳格化し、優良企業に絞ることで国内外から投資を呼び込むのが狙い。上場物流企業も企業価値向上へ収益改善など対応が必須となる。

▼都市部でもドローン物流可能な「レベル4」解禁へ
人口が密集した都市部の上空でも、ドローンが操縦者らの目視外の距離まで自律飛行できる「レベル4」が2022年末にも解禁となる見通しだ。既に無人地帯の上空で同様に飛行する「レベル3」は認められ、人口が少ない離島や山間地などでドローン物流の実証実験が盛んに行われている。関係者の究極の目標「都市部での利用者宅への直接配送」の実現を目指し、環境整備が進む。ただ、機体の技術的な問題などで、「レベル4」実現は少なくともあと数年はかかりそうだ。

▼自動配送ロボット、道交法で走行ルール規定へ
自動で道路を移動し、荷物を届ける配送ロボットの走行ルールが整備される。政府は2022年1月召集の通常国会に道路交通法の改正案を提出する見通しだ。安全を確保するため、公道を通る際は人が早歩きする程度の最高時速6キロメートルとし、車体の大きさも制限を設けることなどが柱。ドローンと同じく、まずは人口が少ない過疎地で実用化に向けた動きが加速しそうだ。


日本郵便やZMPによる宅配ロボットの公道走行実験(2020年実施)

「有人隊列走行」のシステム商業化も目標に

▼運送業の「働き方改革」までタイムリミット2年切る
運送業への適用が猶予されてきた「2024年問題」とも称される働き方改革が、2024年4月実施のタイムリミットまで2年を切る。時間外労働の上限を年間960時間とし、違反すれば罰則もある規制がスタートする。長距離・長時間の輸送が一層困難となるため、物流業界は業務の効率化や物流体制の抜本的見直しを強いられる。ただ、荷主企業の間では広く取り組みが進んでいるとは言い難く、危機感の醸成がさらに求められそうだ。

▼「白ナンバー」の飲酒運転規制強化
警察庁は自社の従業員や荷物を運ぶ「白ナンバー」の車両を使っている事業者のうち、一定条件を満たす場合にアルコール検知器を用いたドライバーの飲酒検査を義務付ける改正道路交通法施行規則を10月1日に施行する。千葉県八街市で2021年6月、飲酒運転の大型トラックが下校途中の小学生の列に突っ込み、5人が死傷した事故で、ドライバーが運転していたトラックが白ナンバーで、ドライバーが所属する事業所が飲酒検査を実施していなかったとみられることから規制強化に踏み切る。既に厳格な規制が実施されている「緑ナンバー」でも飲酒運転がいまだ起こる中、実効性をどう高めるかが大きな課題となる。

▼トラックの「有人隊列走行」システム商業化へ
政府は自動運転実現のロードマップ(工程表)で、高速道路で複数のトラックが連なり、有事に備えて人間は運転席に乗るものの自動走行する「有人隊列走行」の最初の段階となる“導入型”システムを2021年度に商業化するとの目標を打ち出している。最終目標の「25年以降の完全自動運転」に向けた布石となる。

▼トラックの事故情報記録する「EDR」装備義務化へ
政府は乗用車や車両総重量が3.5トン以下のトラックに事故が起きた際のスピードやシートベルト着用の有無などのデータを記録する「イベントデータレコーダー(EDR)」を、2022年7月以降の新型車から搭載を義務化した。継続生産車は26年7月以降に対象となる。先進技術を取り入れ、事故原因究明の迅速化と再発防止を図るのが狙いだ。

▼中小企業もパワハラ防止が義務化へ
改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法)で「努力義務」として猶予されていた中小企業も、2022年4月1日にパワハラ対策を講じることが義務化される。企業は相談窓口の設置などが必須となり、行政からの勧告に従わなければ企業名が公表される。今後は違反時の罰則も検討される可能性が高い。パワハラは企業の社会的信用を大きく失墜させかねないだけに、中小企業が多い物流業界も常日頃から念頭に置いて経営に当たることが不可欠となる。

(藤原秀行)

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