日本財団が三菱造船、新日本海フェリーと連携
日本財団は1月17日、三菱造船、新日本海フェリーと共同で、大型フェリーによる無人運航の実証実験を北九州市新門司から伊予灘の海域で行い、航行に成功したと発表した。
実証実験は、日本財団が推進する無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」の一環。全長222メートルの大型フェリー「それいゆ」を使い、回頭や後進を伴う高度な自動入出港、高速運転(最速26ノット)で無人運航船技術を実証したのは世界初という。
同プロジェクトで大型フェリーを対象に開発された、赤外線カメラによる他船検出を行うセンサーを含む高度な自動運航システム、機関室の遠隔監視や高度なサイバーセキュリティーシステムは、今後の船舶の自動化、無人運航化の進展に寄与し、より安全で効率的な海上輸送の実現に向けた大きな一歩となることが期待されている。
無人運航実証を行った「それいゆ」
離着岸自動操船システムモニター(左)と操船状況モニター(右)
海の事故の減少、海運の人手不足の解消など、さまざまな課題の解決につながると見込まれる無人運航船は、ICTやAI、画像解析技術をはじめ、日本が世界に対し高い技術をアピールできる「未来の産業」として期待され、研究・開発が進められている。
日本財団のMEGURI2040は20年2月より5つのコンソーシアム(複数の民間共同体)と共同で、無人運航船の開発に注力。これまで開発を進めてきたさまざまな船種の無人運航船は、今年1~3月にかけ、5つ全てのコンソーシアムで実証実験を行っている。
※以下、プレスリリースより引用(一部、編集部で修正)
無人運航船(スマートフェリーの開発)プロジェクト
今回、無人運航船の実証実験に成功したのは、スマートフェリーの開発プロジェクト。新造船の大型フェリー「それいゆ」は2021年7月1日に運航を開始し、無人運航実証のためのデータの蓄積を行ってきた。本技術の開発は、船舶の自動化、省力化を実現する航海支援システムの開発に実績を有する三菱造船がシステム全体の統括を担い、実船のシステム要件設定と実証実験による運航を新日本海フェリーが担当。開発された技術は、内航海運における課題の安全性向上、乗員負荷低減、オペレーションコスト低減に貢献する。
実証実験、開発のポイント
同船は全長222mの大型フェリーで、新門司から伊予灘間の約240km、約7時間の航路を最速26ノット(時速約50km)という高速運転で、自動操船による無人運航実証を行った。
赤外線カメラにより夜間でも他船検出が可能な物標画像解析システムや、自動避航機能を含む自動操船システム「SUPER BRIDGE-X」、自動化が困難な回頭や後進を伴う高度な自動離着岸操船システムなどを開発、搭載している。
また、無人運航で大きな課題となる故障予測の技術として、電動機状態監視など機関部の監視強化技術も開発、効果検証を進めている。さらに、運航情報を陸上から監視、支援するための高度なデータセキュリティ機能を備えたプラットフォームなど、同プロジェクトでは無人運航船の普及に必須となるさまざまな技術開発を行っている。
障害物や他船を監視する赤外線カメラ
実験に際し、海野光行日本財団常務理事は「解決すべき課題はまだたくさんあるかと思いますが、今回の成果も踏まえて、国際ルール作りを主導していきたいと考えています。また、無人運航船の普及を通じて日本に物流革命を起こし、海事産業全体の活性化につなげていきたい所存です」とコメント。
三菱造船の上田直樹常務執行役員は「島国日本の海上輸送を支える重要な役割を担う旅客フェリーによる、安全で利便性の高い運航サービスの実現に向け、得られた貴重な知見を生かし技術開発を続けていきます」と抱負を語った。
新日本海フェリーの佐々木正美代表取締役常務は「今まで乗組員の能力に頼ってきた航行技術や労務負担軽減の解決策の一つとして、無人運航システムが実用化され広く普及することを旅客フェリー会社として大いに期待しています」と語った。
(左から) 三菱造船・上田氏、日本財団・海野氏、新日本海フェリー・佐々木氏
(画像は日本財団提供)
(ロジビズ・オンライン編集部)