奈良の五條メディカル、コロナワクチン取り扱い
医薬品物流を手掛ける五條メディカル(奈良県大和郡山市)は、同市内で運営している医薬品などの専用倉庫で、工場や物流施設などの建物が不審者の侵入などを防ぐのに必要なセキュリティ対策を施しているかどうかを客観的な基準で評価、証明する「SGS施設セキュリティ認証」を取得した。
同認証はスイスのジュネーブに本拠を置く世界最大級の認証機関SGSグループの日本法人SGSジャパン(横浜市)が担っており、国内で医薬・医療機器倉庫が同認証を獲得するのは初めて。2021年11月に五條メディカルへ同認証の登録証を発行した。
工場や物流施設は従業員に加えて日常的に様々な人間が出入りするため、同認証は監視カメラや出入管理システム、機械警備システムなどが有効に機能しているかどうかをチェック。商品の盗難や紛失といったリスクの回避へハード面で高水準のセキュリティを確保できるよう企業を後押しし、サプライチェーン全体の安全性を盤石にするのが狙いだ。
物流企業にとっては、自社のサービス品質の高さを顧客へアピールする材料になり、荷主企業としても自社の事業のリスク低減を図ることが可能だ。今回の同認証取得で、医薬・医療機器の物流領域で関係者のセキュリティ意識が高まることが期待される。
再生医療領域でも取得検討
五條メディカルは奈良に本拠を置く地場物流企業、五條運輸の子会社で、医薬品物流専門として20年11月に発足。五條運輸が蓄積してきた安定輸送の経験、ノウハウを生かすことを目指しており、医薬品・医療領域の3PL業務を本格的に展開する計画を進めている。
五條運輸は地域住民にとって不可欠な存在になるとの理念を据えており、五條メディカルの創設もその一環。五條メディカルは「大切な誰かを守るための物流」を展開することを信念に掲げ、社内に薬剤師を複数抱えるなど独自の取り組みを展開している。
超低温の輸送・保管体制の構築を図っており、将来は再生医療に絡む輸送や保管などの領域に進出することも視野に入れている。21年のモバイルコンピューティング推進コンソーシアム(MCPC) の「MCPC award」で、ユーザー部門「医療貢献特別賞」を受賞するなど、活動が評価されている。
五條メディカルは複数の奈良県内自治体から新型コロナウイルスの円滑なワクチン接種推進へワクチン保管業務を受託。医薬品の適正な流通に関する国際基準GDPの日本版ガイドラインに則って、ワクチンなどを保管することが可能な設備を備えた専用倉庫を昨春、大和郡山市の五條運輸本社が入る建物の事務所スペースを改装して開設した。
医薬品などの専用倉庫
五條運輸本社
認証の登録証(左側)
同社は高度なセキュリティや精緻な温度管理が求められるため、専用倉庫へのセキュリティ機器導入などを、警備最大手のセコムに相談。その過程で、SGS施設セキュリティ認証の存在を知り、専用倉庫で取得を目指すことを決めた。
セコムは18年6月、同認証の取得に向けたセキュリティ対策構築を支援するサービス「セコム・サプライチェーンセキュリティ・セレクト」を開始、安全・安心確保を追求する企業の側面支援に務めている。
五條メディカルは昨年9月、SGSの審査に合格した。同認証の取得で、倉庫というハードの安全性が可視化された格好だ。五條メディカルは22年度、奈良市で超低温の保管が可能な再生医療専用の物流センターを新たに設置する計画。そこでもSGS施設セキュリティ認証の取得を検討しているという。
同社の原田杏子社長は「認証は事前に想像していた以上に、いろんな見えない危険を想定した強固なセキュリティ体制の構築につながった。到底私たちでは考えつかないところまで配慮していただいた」と感想を語る。
併せて、「認証の有効性を非常に感じた。監視カメラを付ける位置1つを取っても、われわれではユーザー目線になるが、異なる角度からのより実効性ある目線で設置すべき位置のアドバイスをいただくことができた。認証取得は経費が掛かるが、顧客からの信頼獲得に加え、われわれ自身が保管を進める上で安心できることにもつながり、経費を掛けるだけの意味はあると感じている。必要経費だと認識している。セキュリティシステムの導入自体は高いことは高いが、費用に見合うだけの安心を得られる。自分たちが自信を持って、世界基準のセキュリティを確保した施設ですとお客様にもご説明できる」とコメント。入退場の管理も全て記録するなど、盤石の体制を整えることができたと手応えを感じており、倉庫の安全性を積極的にアピールしていく構えを見せている。
取材に応じる原田社長(写真はいずれもセコム提供)
(藤原秀行)