【好評連載!】二代目物流社長の“アタマ”のなか(第2回)

【好評連載!】二代目物流社長の“アタマ”のなか(第2回)

事業承継の難しさ(後編):日東物流・菅原拓也代表取締役

千葉県四街道市の物流企業「日東物流」の菅原拓也代表取締役によるロジビズ・オンライン独自連載。第2回は前回に引き続き、創業者の父親の跡を継いだ2代目社長として体験した、事業承継の難しさについて振り返っていただきます。

いざ代替わりしようとする時、創業者の父親はどのように対応したのか?そして、後継者となった後、苦境に立った時にいつも救われた言葉があったという著者。その心境に至るまでに感じた、大事なこととは一体何か?ぜひ参考にしてみてください。


菅原代表取締役(日東物流提供)

ラスボスの父は意図的に表舞台から退いた

さて、前回からの続きです。

無事、父の入院中に承継できたのですが、戻ってきた父は「自分が会社にいない間に、息子に会社から追い出された!」と、あちこちで触れ回っていましたww

もちろんそれはネタで、僕は正当に承継し社長に就任しましたが、実務面での大きな変化はありませんでした。というのも3年程前から父は意図的に経営会議にも出なくなり、決裁権も僕に与えてくれていたので、やることはほとんど変わらなかったのです。

承継のタイミングで父は役員からも降りたので、名実ともに僕がトップ・・・あれ?やることは変わってないのに、何だ、このプレッシャーは!そう、父がラスボスのようにいてくれたことで精神的に凄く助けられていたのだと、この時に気づかされました。

この、“承継”でよく聞くのは、後継者が鼻息荒く新たな挑戦を始めようとすると、ねるとんよろしく「ちょっと待ったぁぁ!」と会長になった先代が出てくるパターン。事前に検討したり、社内調整を進めていたりした事が、一瞬でパーッとひっくり返される、まさに「大どんでん返し!」というのは、良くある話。

承継後は給与の問題や銀行等との関係もあるので、先代が役員として残ることがほとんどだと思いますし、それ自体に問題はありません。ただ、会社の方向性や議決事案についての最終決定者は、新社長であるべきです。そうしないと幹部や社員たちは新社長を軽視し、先代の顔色ばかり窺うことになり、ひいては組織の硬直化につながります。“承継”とは、時代に則した組織に変わることであるべきです。

そういった意味では、スパッと身を引いてくれた父に、心から感謝しています(言いたいことは山ほどあったようですが、グッと堪えてくれていたようですww)。

さて、それからの僕は「二代目」経営者として、先代と比較されたり力不足を感じたりしながら、会社の舵を取ることの本当の重みを知る事になっていくのですが、苦境に立たされた時、いつも思い出される言葉がありました。

「この道より我を生かす道なし、この道を歩く ――― 武者小路実篤」

小さなことは気にせず自分で決めた道、信念を胸にただ真っすぐ歩けば良いんだ!と考えれば、悩みなんてどっかへ吹き飛んでいく気がしませんか?

立場が人を育てるなんて言葉もありますが、今はまだ頼りなくても、小さな失敗を繰り返し、悩みながら少しずつ経営者としてブレずに歩いていく。それが実践面での一番の学びであり、一番成長スピードが速いことなんだって、そして会社にとっても一番良いことなんだって、承継する側もされる側も思えたら良いですね。(第3回に続く)

日東物流twitter:@nittobutsuryu

菅原拓也氏(すがわら・たくや)
大学卒業後、大手運送会社などを経て2008年、日東物流に入社。17年9月、創業者の父親の跡を継いで代表取締役に就任。18年に物流会社として千葉県で初めて「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」の認定を取得。4年連続で認定を受けるなど、経営改革を進めている。

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