【新連載!】二代目物流社長の“アタマ”のなか(第1回)

【新連載!】二代目物流社長の“アタマ”のなか(第1回)

事業承継の難しさ(前編):日東物流・菅原拓也代表取締役

ロジビズ・オンライン独自連載が新たにスタート!今回は、千葉県四街道市の物流企業「日東物流」の菅原拓也代表取締役に登場いただきます。

同社は従業員約120人、トラックは80台余りを所有し、冷凍・チルド食品の輸送を軸に据えています。「健康経営推進」と「コンプライアンス順守」を経営の2本柱に据え、同県の物流会社としては初めて、経済産業省と日本健康会議が毎年選定している「健康経営優良法人」の中で、特に取り組みが優れている中小企業の上位500社に相当する“ブライト500”に選ばれるなど、成果も挙げています。

物流業界につきまとうブラックなイメージを変えたいと願う菅原氏。創業者の父親の跡を継いだ2代目社長として日々経営の変革に取り組む中で感じたこと、気付いたことを自由に語っていただきます。乞うご期待!


菅原代表取締役(日東物流提供)

ダース・ベイダーとルークのごとく、父と意見が分かれる

初めまして、千葉県四街道市の物流会社「株式会社 日東物流」で代表取締役をしております菅原拓也(40)と申します。今回縁がありましてロジビズ・オンラインさんにて連載をさせて頂く運びとなりました。
ふつつか者ですが、どうぞ宜しくお願いします。

早速ですが皆さん、“事業承継”で悩まれること、多いですよね(唐突)!
記念すべき連載1回目は、タイトル通り「二代目(後継者)」の僕と、「先代(創業者)」の父の間の軋轢や葛藤なんかについて、お話をしてみたいと思います。

さて、大学を卒業して大手物流会社で経験を積み、27歳で父の創業したこの会社に入社した“ミレニアル世代”の僕は、これまで会社を成長させてきたことに絶対的自信を持つ “団塊世代”の父のモーレツ経営スタイルに、いろんな違和感を覚えていました。

僕)「なんで過積載なのに、荷主さんに言わないの?」
父)「どこの会社もやってるのに、ウチだけ言える訳ないだろー」

僕)「なんで長時間労働を改善しないの?」
父)「乗務員さんの給与が減るだろー」

僕)「なんで休み(4週4休)が取れないの?」
父)「現場が回らないだろー」

僕)「なんで社会保険に入っていない人がいるの?」
父)「手取りが減るし、今さら社保に加入しても年金もらえんだろー」

業界や仕事の状況も分からず、法で定められた事をそのままアホ丸出しで発言する僕に、「経営なんてそんなに甘くない、何をエラそうにこの若造が!」と言わんばかりの切れ味鋭い父のご回答・・・ああ無情、レ・ミゼラブル。

それまでの物流業界って、そもそもコンプライアンス(法令遵守)を重視していては成り立たないビジネスモデルだったのかな?と思います。規制緩和があり企業間競争が激化していく中で利益率も低いとなれば、コンプライアンスを無視してでも業務を優先することは、ある意味やむを得ないことだったのだろうと推察します。

それでも当時のウブな僕は、コンプライアンスの徹底を目指すべきだと考えていました。それが会社の未来にとって、絶対に必要だと思っていたからです(コンプライアンスへの考え方はまた別の機会に書きますね)。

そんなことから、一時は父をはじめ当時の経営幹部と私の意見は真っ向から対立していましたし、社内で“面倒くさい奴”と思われている感じがして、精神的に一番キツかった時期でした。

ダース・ベイダーとルークのごとく、父と僕の意見が割れる―――父の言うことも分かるけど、こちらも信念もあるから曲げられない。でもフォースの力は圧倒的に父が上。どうにもならない葛藤の中、会社を辞めようと思ったこともありましたし、涙を流した幾千の夜もありました。

それでも踏ん張れたのは、少ないながらも励ましてくれた友人や取引先の方がいてくれたこと、そして何よりも、“父の跡を継いで、この会社を良くしていくのは自分しかいない”という、使命感にも似た、厨二病的思考が僕を突き動かしてくれたからと言えます。

とまぁ、ここでは言えない事も色々ありましたが、承継直前に、父から従業員の働き方について言われた一言です。

「時代が変わっていることを頭では分かっているけど、これまでの経験が邪魔をして生ぬるく感じてしまう。」

―――あぁ、これが父の本音だったんだな、と。

一時はマリアナ海溝より深く亀裂の入った父との関係も、数年かけて埋め立てが完了、そして2017年9月、事業承継直前に行った温泉でヤケドを負い入院した父が不在のうちに、まるで失脚させたかのような形で、僕が2代目社長に就任することとなるのでした―――(次回に続く)。

日東物流twitter:@nittobutsuryu

菅原拓也氏(すがわら・たくや)
大学卒業後、大手運送会社などを経て2008年、日東物流に入社。17年9月、創業者の父親の跡を継いで代表取締役に就任。18年に物流会社として千葉県で初めて「健康経営優良法人(中小規模法人部門)」の認定を取得。4年連続で認定を受けるなど、経営改革を進めている。

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