優先交渉権獲得の米KKR、非公開化を模索
日立製作所がグループの日立物流株式の売却を検討しているのに対し、複数の投資ファンドが取得に乗り出していることが分かった。
日立製作所は現在、日立物流の筆頭株主として同社株式の約4割を保有しており、今後は1割程度まで引き下げることを検討している。現在は米投資ファンド大手のKKRが優先交渉権を得て、日立物流買収に向けた取得価格などの協議を進めているもよう。
KKRはTOB(株式公開買い付け)などで日立以外の株主からも日立物流株式を取得、同社株の非公開化を模索しているもようで、4月中にも合意にこぎ着けたい考えのようだ。ただ、他の投資ファンドの中には日立物流株式の取得に引き続き意欲を見せている動きもあるとみられ、売却先決定には流動的な面も残っている。
日立は2009年3月期に連結当期損益が7873億円の巨額な赤字に転落したのを契機に、ITや環境などの成長分野に注力するためのグループ再編を展開。投資家などから批判が強い、親会社と子会社がともに上場する「親子上場」を解消する意味からも、これまでに日立工機、日立キャピタル、日立化成、日立ハイテクノロジーズといった有力な上場子会社の株式売却や完全子会社化を促進している。
その流れの一環で日立物流は既に日立の連結対象から外れており、今後さらに株式を売却していくことを視野に入れている。ただ、売却に際しても全ては手放さずに一定程度は継続して日立物流株式を保有し、物流業界向け情報システムの開発などで協力関係を維持することを想定しているようだ。
日立物流は2016年、SGホールディングス(HD)との経営統合を検討するため、業務・資本提携を締結。しかし、国際物流で連携効果が大きく見込めなくなったことなどから20年に統合見送りを決めていた。
(藤原秀行)