ラストワンマイル分野などは「まだまだスタートアップ参入の余地あり」

ラストワンマイル分野などは「まだまだスタートアップ参入の余地あり」

ベンチャーキャピタルが物流業界リポートで指摘

 米ベンチャーキャピタル「500 Startups」の日本向けファンド「500 Startups Japan」はこのほど、「物流業界のトレンドと今後の可能性」と題するリポートをまとめた。

 物流市場には世界で既に750以上のスタートアップ企業が登場し、2013年から5年間で1兆円以上の投資が集まっているなどと指摘。「こうした数値からテクノロジーによってディスラプト(破壊による変革)されている物流業界の盛り上がりが分かる」と解説した。その上で、今後さらにスタートアップが新たな技術を携えて参入する余地はラストワンマイルの分野などでまだまだ残っていると強い期待を示した。

 リポートは、物流業界への投資件数が10年からの7年間で46%増え、12年以降に200超のスタートアップが株式公開などのイグジット(投資資金回収)を果たしていることに言及。「物流テック」が非常に注目されている実情を解説した。


物流業界への投資動向(500 Startups Japan提供)※クリックで拡大

 併せて、UPSやフェデックス、DHLなどの大企業は自身が行ってきた事業における新たなテクノロジーを持つスタートアップに対し、提携や投資、買収などを行っていると紹介。既存のプレーヤーもテクノロジーに注目しているとの考えを明らかにした。

 具体的なスタートアップの一例として、

①海路・空路運送

・Flexport(フレックスポート)

国際輸送事業者の比較・手配や貨物の現在地追跡が可能1なクラウドサービスを提供

・Shippio(シッピオ)

ウェブサイトで国際物流の各種手続きをサポート

②倉庫・フルフィルメント

・FLEXE(フレクセ)

倉庫の空きスペースとテナント企業をマッチング

・6 River Systems(6リバーシステムズ)

人間の庫内スタッフと協調する倉庫ロボット「Chuck(チャック)」を開発

③陸路運送

・Convoy(コンボイ)

トレーラートラックを求める荷主企業と小規模運送事業者をマッチング。トラック版ウーバー(Uber)を展開

・KeepTruckin(キープトラッキン)

車両位置をGPSで追跡し、走行距離などの報告を自動作成

④ラストワンマイル

・Zipline(ジップライン)

遠隔地の医療機関にワクチンや薬、血液などを運ぶドローン(小型無人機)を開発・提供

・MetaPack(メタパック)

オンライン小売事業者に物流事業者を比較できる情報を提供して料金のディスカウント実現を後押し

・Postmates(ポストメイツ)

買い物・宅配代行サービスを展開

―などのスタートアップを列挙した。

 さらに、ブロックチェーンを物流の管理などに役立てようとするスタートアップも出現していることに触れた。

「スタートアップが生き残るには困難な業界」

 一方、物流業界は各種免許など規制が多く、参入障壁が非常に高くなっているため、「スタートアップが生き残っていくには困難な業界」とも分析。特に物流の上流部分はプレーヤーが少なく、海路・空路運送分野に関しては最初に参入した企業が先行者利益を得られている「first come, first served(先んずれば人を制す、早い者勝ち)」が如実に表れているとの見方を示した。

 半面、ラストワンマイルの部分はプレーヤーが多いことから激しい競争にさらされると強調。一例として、ラストワンマイルの配送や返品受け付けに関するソフトウエア、アプリを提供していたスタートアップのドアマンは価格競争が負担となり、17年にサービスを終了したことを挙げている。

 「日本は諸外国より物流テックに関係するスタートアップは少ない」と総括。特にハードウエア分野は倉庫・フルフィルメント、ラストワンマイルのいずれも既存のプレーヤーがR&D(研究開発)した製品が多いのが現状と分析した。

 最後に「ラストワンマイル分野もクラウドソーシング・P2Pの配送サービスを提供するスタートアップは数社で、参入余地はまだあると思われる。さらに、既存の配送業者向けの管理SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)やAI(人工知能)を用いた最適化などもまだ遅れており、この分野に挑戦するスタートアップの参入が期待される」と締めくくった。

(藤原秀行)

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