CBREテナント企業意識調査(後編)
シービーアールイー(CBRE)は6月16日、物流施設のテナント企業を対象とした意識調査結果を公表した。前後編の2回に分けて、概要を紹介する。
先進技術の導入はオペレーション可視化システムや商品ピッキングシステム、AGV(無人搬送機)などを今後導入することを検討している動きが目立ち、物流企業と荷主企業の双方で人手不足への対応を強化しようとしていることをうかがわせた。
一方、トラックドライバーの長時間労働規制が強化される「2024年問題」への対策としては、他の運送会社との提携が物流企業、荷主企業ともにトップとなったほか、共同配送や積載率向上、自社でドライバーの増員などを選んだところが多く、同問題への危機感が高まっていることを示唆した。
調査は自社・賃貸を問わず、国内で物流施設を利用している企業を対象に実施、286社(物流企業193、荷主企業93)から回答を得た。
(以下、いずれもCBRE資料より引用)
調査は、物流拠点拡張に際して検討している立地・エリアを聞いたところ(複数選択可)、「物流集積地」が62%、「都市圏内の郊外」が49%と多く、新規供給が盛んなエリアを重視している傾向が見られた。
一方、「地方都市、中継拠点」も26%と一定数見られ、2024年問題への対応も含めて大都市圏以外のニーズが高まっていることを示唆した。
物流施設の仕様に関する要件・要望の方向性を尋ねたところ、「空調付き施設」は大きくなる・増えると答えた割合が69%でトップ。「非常用電源」(63%)、「環境性能・グリーンエネルギー」(62%)、「免震構造」(54%)、「感染症対策(健康管理、非接触システム等)」(50%)などと続いた。CBREは「先進的物流施設の仕様におけるキーワードが『快適性』『BCP』『ESG』であることに変わりはない」と指摘した。
今後3年間の運営費用の見通しについては、今よりも上がると予想した割合が「人件費」は90%で、21年調査の87%から上昇。輸送・配送費は90%(21年78%)、建物(不動産)コストは68%(21年60%)で、いずれも21年調査時より上昇を見込む向きが増加。コストアップへの懸念が強まっていることがうかがえた。
調査は3月のため、ロシアのウクライナ侵攻で世界的にエネルギー・資源価格が高騰している実態は十分反映しておらず、その後各企業の先行きへの見方がさらに厳しくなっている可能性がありそうだ。
先進技術の導入については、「オペレーション可視化システム」は現状で導入しているのは23%にとどまっているが、今後3年間で導入する見通しを示したのは39%。「商品ピッキングシステム」も現在が33%、今後3年間が25%、「AGV(無人搬送機)」が現在27%、今後3年間27%など、様々な技術を今後導入することを検討している動きが目立った。
2024年問題への対策としては、「他の運送会社との提携」が物流企業67%、荷主企業44%でともにトップ。「共同配送や積載率を上げる(輸送回数を減らす)」は49%と38%、「自社でドライバーの増員」は38%と20%、「中継拠点の新設、増設」が26%と13%などとなった。
CBREは「全体として、荷主企業よりも物流企業がより積極的に対策を講じていることが確認された」との見方を示すとともに、物流企業が自社ドライバーの増員や中継拠点の新設・増設を一定数選んでいることを踏まえ「大都市圏以外の立地での物流施設ニーズが今後さらに高まる可能性を示唆している」と解説した。
(藤原秀行)