日本郵船など、東京大学に「海事デジタルエンジニアリング」社会連携講座を開設

日本郵船など、東京大学に「海事デジタルエンジニアリング」社会連携講座を開設

サステナブルな海上物流を実現するシミュレーション共通基盤の構築目指す

日本郵船は8月8日、グループのMTIと、ジャパン マリンユナイテッド、三菱造船、古野電気、日本無線、BEMAC、一般財団法人日本海事協会と子会社のNAPAの7者が、東京大学と10月1日付で「海事デジタルエンジニアリング」(英語名:Maritime and Ocean Digital Engineering、略称MODE)に関する社会連携講座を設置すると発表した。

同講座はサステナブルな海上物流を実現するシミュレーション共通基盤を構築し、デジタルエンジニアリングを活用した海事分野の技術開発と人材育成を推進していくのが狙い。

日本の海事産業は「世界の脱炭素化の潮流の中での新たな技術開発とその社会実装」「海運サービス維持のための安全性向上と働き方改革のための自動運航船の導入」「高度化する船舶の設計・製造プロセスにおける圧倒的な生産性確保」といった課題を抱えている。

その解決に向けた有効な手段として期待されているのが、自動車産業で導入が進むモデルベース開発(MBD)とモデルベース・システムズエンジニアリング(MBSE)。MBDでは製品や構成する要素の機能をコンピューター上のモデルとして表現し、シミュレーションによって動作を確認する手法。MBDにより、船舶に新しい要素技術を採用する効果について、実運航を想定したシミュレーションの中で繰り返し検証できるのがメリット。

MBSEは社会の変化やステークホルダーのニーズを的確に把握し、製品を取り巻くシステム全体を俯瞰して表現することで、最適な設計・開発を実現する手法。MBDとMBSEを利用することで、複雑な船の設計でも迅速に最適化が図られるだけでなく、荷主・運航者をはじめとする幅広いステークホルダーが参加する協調的な開発プロセス「海事デジタルエンジニアリング」を創り出せるという。

「海事デジタルエンジニアリング」社会連携講座は東京大大学院の新領域創成科学研究科に設置され、次世代のサステナブルな海上物流を構築するためのシミュレーション共通基盤の開発に取り組む。海事分野のためのMBDとMBSEについて研究教育する拠点を、東京大大学院工学系研究科をはじめ、先進的なエンジニアリングの取り組みを進める国内外の他大学や研究機関、自動車や宇宙・航空といった他産業の専門家とも幅広くネットワークを形成して、新技術の開発と社会実装、デジタルエンジニアリングを海事分野に適用する高度人材の育成を目指す。

併せて、洋上風力発電や海底資源開発など、海洋の産業利用を促進する分野への展開も見込む。

社会連携講座は2022年10月1日から27年9月30日までの5年間を予定している。代表教員は東京大大学院新領域創成科学研究科の村山英晶海洋技術環境学専攻教授が務める。

(藤原秀行)

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