【動画】日本郵便が福島・南相馬市と浪江町で配送ロボット実証実験

【動画】日本郵便が福島・南相馬市と浪江町で配送ロボット実証実験

公道走行・個配を組み合わせた状況で成果に手応え

 日本郵便は1月31日、福島県南相馬市ならびに浪江町で自律走行型配送ロボットを用いた実証実験を行いメディアに現地公開した。

 前者は集合住宅、後者は自動車教習場と実際の配送環境や道路環境に近い条件設定で実施。日本郵便の畑勝則郵便・物流事業企画部長は「南相馬市は個宅配送、浪江町では公道走行を想定。今回はこの2つをドッキングさせた郵便局からの個宅配送という意味で完璧に成功したと考えている」と手応えをのぞかせた。


南相馬市で使用されたDrone Future Aviationの自律走行型配送ロボット「YAPE」

シルバー世代の女性も「簡単で便利」

 

 当日はまず浪江町で東日本大震災により休校し再開を目指している「ふたば自動車学校」で、ZMPの「Carriro Deli」(サイズ:96×65×96センチメートル、本体重量:約120キログラム、積載重量:50キログラム)を用いてさまざまなシチュエーションによる走行をテスト。教習コースを一般公道に見立てて配送・集荷中に▽歩行者の回避(停止)▽歩行者の飛び出し回避(停止)▽歩行者との並走▽自転車とのすれ違い▽自動車の一時停止確認後に横断歩道を渡る▽S字走行――を行った。

 その後、南相馬市原町区栄町の災害公営住宅にてDrone Future Aviation(DFA)の「YAPE」(60×70×80センチメートル、約15キログラム、70キログラム)による個宅配送を実験した。敷地内の集会所を郵便局と想定して局員が荷物を積み込み、ロボットがスロープを下って屋外へ移動。外周を通って配送先の部屋がある建物に入り、通路を伝って目的の部屋前に到着すると受取人のスマートフォンに通知する。

 受取人はスマホで個人認証を行ってロボットのふたを開扉して荷物を受け取り、ロボットは転回して同じルートで集会所に戻る。この日の実験では走行距離200メートル、時速2キロメートル、時間換算で10分だった。


敷地内を走行中の配送ロボット「YAPE」


受け取りの様子

 受け取り役を務めたシルバー世代の地元女性は実験を終えた感想として「高齢者はとにかく買い物などで荷物を運ぶのが大変。このようなロボットに運んでもらえたら助かる」とコメント。スマホによる解錠については「個人差はあると思うが私は簡単で便利だと感じた」とデジタル操作にも抵抗はなかったようだ。

 両実験は福島県の「地域復興実用化開発等促進事業費補助金」を活用して日本郵便が主催。南相馬市と浪江町が実験場所の提供および地域との調整、東北日立が実証実験の取りまとめと社会実装に向けた検討、DFAとZMPが配送ロボットの提供と自律走行の実施、ふたば自動車学校が実験場所の提供でそれぞれ協力した。

自治体サイドもロボット開発を積極的に支援

 実験終了後に報道陣の取材に応じた南相馬市の松浦隆太副市長は「今日の実証実験から配送ロボットの実用化に向けた取り組みが確実に進んでいると実感した。市としても引き続きロボット開発を支援していきたい」と今後も自治体として積極的にサポートする考えを表明。

 一方、畑郵便・物流事業企画部長は「個宅配送に限れば段差への対応や走行距離、積載重量など課題はいろいろある。これらを一つ一つクリアしながら実用化に向けて頑張っていきたい。今後は公道走行を前提に検証を進めながら関係方面に要請していく」とした上で、実用化の時期や見通しについては「ビルやマンションなど閉鎖空間ではある程度早い時期に実装できるのではないか。公道走行では配送ロボットをそもそも車種としてどう扱うかが先決」と展望した。

 また、ロジビズ・オンラインの関係省庁との協議に関する質問に対しては「最大の焦点はやはり安全性。これを担保するためにも実証実験を通じて多くのエビデンスを積み上げていくことが肝要だろう。ロボット配送を推進・実現させるために今後も率先して実証実験などに取り組んでいきたい」と語り、“旗振り役”としての存在・展開に強い意欲を示した。


取材に応じる南相馬市の松浦隆太副市長


報道陣の質問に答える日本郵便の畑勝則郵便・物流事業企画部長

(鳥羽俊一)

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