JLL調査、サステナビリティ領域は6位と健闘
米不動産サービス大手ジョーンズ ラング ラサール(JLL)とラサール インベストメント マネジメントは9月10日、世界の主要国・地域で商業用不動産市場がどの程度情報開示に積極的で投資判断しやすいかを比較した「2022年版グローバル不動産透明度調査」の結果を公表した。
調査は1999年に開始。2年ごとに行っており、今回が第12版となる。
日本の透明度は世界94カ国・地域の中で12位となり、前回の2020年調査時の16位から4つ順位を上げた。調査開始以来、初めて透明度が「高」の市場グループ入りを果たした。
建物からの温室効果ガス排出削減など事業や社会のサステナビリティ(持続可能性)への貢献に関する取り組みの情報開示に積極的な点が透明度向上に寄与した。調査の中でサステナビリティの項目では日本は6位にランクインした。
新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な感染拡大)が起き、経済が混乱する中でも、脱炭素化を重視した優良な不動産に投資する動きが続いていることが、透明度向上を後押ししたとみられる。
JLLは一方、先進技術を活用して不動産関連業務の効率化を図る「不動産テック」が欧米ほどには導入が進んでいないことや、共益費といった日本独自の慣習の根拠が不透明なことなどを課題として指摘した。
ランキングと評価項目の概要(いずれもJLL提供)
JLLが東京都内で同日開催した調査結果に関するメディア向け説明会で、JLL日本の赤城威志リサーチ事業部長は投資対象として注目度が高い物流施設で環境対策などの情報開示を引き続き進めたことが、日本の順位押し上げの要因の1つになったとの見方を披露。
「地方の物流施設のデータ入手も可能になってきている。物流施設は日本が世界に誇るべき不動産セクターだと思っている。日本の不動産市場の透明度向上に貢献している」と評価し、今後も市場透明化のけん引役を果たすことに期待をのぞかせた。
また、不動産テックの採用についても「日本は決して進んでいないわけではないが、欧米に比べれば出遅れているのは否めない」と明言。物流施設も含めた不動産領域全体でデジタル化をさらに加速させていく必要性を訴えた。
赤城氏
環境認証が47種類も乱立、統合必要と指摘
調査は各市場の不動産取引や物件、上場企業の財務などに関する情報開示の度合い、法規制の現状といった254要素を「パフォーマンス測定」「規制と法制度」「市場ファンダメンタルズ(基礎的条件)」「取引プロセス」「上場法人のガバナンス」「サステナビリティ」の6項目に分けて独自に分析、数値化している。
グローバル全体では20年に続いて英国が1位、米国が2位をそれぞれ堅持。3位以降はフランス、オーストラリア、カナダ、オランダ、アイルランドなどと続いた。20年にアジアで最も上位だったシンガポールは14位で変わらなかった。
香港は16位、韓国は28位、台湾は29位、中国(上海・北京)は30位などとなった。
メディア説明会に参加したJLLグローバルリサーチ部門のマシュー・マコーリー・リサーチディレクターは「コロナ感染拡大の中、透明度が下がるのではないかと思った時もあったが、結果としてコロナ禍でサステナビリティにさらに投資家の関心が集まっている」と説明。建物全体のエネルギー使用量把握や利用抑制、温室効果ガス排出量の把握などが引き続き求められるとの見方を示した。
マコーリー氏
アジアパシフィックのロディー・アラン・チーフリサーチオフィサーは、サステナビリティを重視する動きを歓迎した上で、欧米や日本などで建物の環境負荷低減や省エネ、脱炭素化に向けた取り組みを評価する認証が47種類も乱立していると解説。「一貫性が欠如しており十分調和していない。パフォーマンスのベンチマーキングがしづらいという課題がある。多くの認証の中には(評価ポイントで)共通項がある」と語り、認証の統合が必要との認識を示した。
アラン氏
(藤原秀行)