【独自】住友商事が倉庫業務のDX促進に注力★訂正

【独自】住友商事が倉庫業務のDX促進に注力★訂正

多岐にわたる作業の進捗を一括可視化、量子コンピュータ活用した人員の最適配置支援も

※本文中、「住友倉庫」となっていた箇所は「住友商事」の誤りです。また、「MagiQa(マジカ)」の名称は「magiQanneal(マジカニ―ル)」に訂正いたします。以上、深くおわび申し上げます。

住友商事が、先端技術を活用した倉庫業務のDX促進に注力している。このほど、顧客のWMS(倉庫管理システム)と連携し、庫内の多岐にわたる作業の進捗を一括して可視化・管理できるクラウドベースのシステムの提供を開始した。

表計算ソフトやホワイトボードを使い、人力で管理していた従来のオペレーションより管理業務を大幅に効率化。実績のデータを蓄積し、作業の改善に生かすこともできるのが特徴だ。同社が試験的に物流現場で採用した結果、計画作成・進捗管理担当者の残業時間が2割減るなどの効果を確認した。既に3PL事業者らが採用を決めているという。

同システムはオプションとして、AIと高速の計算などが可能な量子コンピュータを生かし、現場の人員の最適配置を支援するサービスも組み合わせることが可能。物流のほか、メーカーの製造現場での活用に関心を寄せる企業も出ているという。実験の段階では配置計画の作成に要する時間を3割程度短縮できたという。自動化しづらい領域までDXを実現することで、システムの付加価値を高めたい考えだ。

従業員の手待ち時間が3.5%減

住友商事は9月、物流センターで従業員ごとの作業進捗を可視化し、実績データを収集・蓄積・分析するシステム「Smile Board Connect(スマイルボードコネクト)」の販売を開始した。各従業員のスキルデータを基に作業計画を作成する機能や、各従業員と各工程の作業進捗をリアルタイムで可視化するダッシュボード機能などを装備している。

物流センター内の多岐にわたる作業に関し、誰が、どこで、どのような作業をどれだけ行ったのかを一元管理し、現場の管理者がリアルタイムで各工程の状況を把握・管理できるようにするのがメリット。それぞれの工程が終わると作業者が専用のバーコードをスキャナーで読み取り、自らが手掛ける工程の終了をシステムに登録する。

物流センターが取り扱う商品の種類や売れ行きは日々変わり、出荷量が事前の想定から大きく跳ね上がることも起きるだけに、作業量の変化を素早く把握し、人員の再配置などの対策を速やかに取ることが求められる。しかし、多くの人数が勤務する物流センターでは個々の従業員レベルで作業の進捗を確認するのはハードルが高く、どんなメンバーの組み合わせにすれば作業の効率が良くなるかも可視化が困難だった。

住友商事は当初、カタログ通販大手の千趣会が岐阜県内に構えている物流センター向けに、作業進捗可視化システムの開発を進めていた。物流センターの運営は住友商事傘下の物流企業、住商グローバル・ロジスティクスと千趣会が共同出資している「ベルメゾンロジスコ」が担当。実際にセンターでシステムを導入、効果を測定した。

作業の計画や現場の指示、実際の作業進捗結果をシステムで保活的にデータ管理、確認できるため、担当者はセンター運営で費やしているコストの内訳や根拠を明確に把握、エビデンスを持って説明できるようになる。過去のデータも蓄積することで、生産性の推移などもつかめる。

併せて、入荷・検品、ピッキング、流通加工、梱包といった工程ごとに、当初の想定に対する作業の進捗率をグラフで明示。リアルタイムで変化する進捗状況をつかめるため、作業が進んでいない工程へ従業員を手厚く配置するといった修正が速やかに行える。ベルメゾンロジスコのセンターでは、現場の管理担当者がタブレット端末で従業員の再配置を指示できるため、取り扱う商品の波動にもすぐに対応することが可能になったという。

導入したセンターでは全体の工数の中で発生していた従業員の手待ちの時間が3.5%減るなど、業務負荷軽減の効果が出始めた。そこで住友商事は、ベルメゾンロジスコ運営のセンター以外でもシステムを活用してもらえる余地は大きいと判断。様々なデータを表示するダッシュボードを見やすくするなど、より汎用性のある機能へブラアッシュアップした。

ベルメゾンロジスコが運営を手掛ける千趣会のセンター2カ所でスマイルボードコネクトを活用、現場からホワイトボードを撤去した工程も出るなど、アナログだった作業現場の光景が一変しようとしている。外販に関しても、大和物流など複数の企業が既に採用を決めているという。


システムを使った作業のイメージ。タブレットで進捗状況をリアルタイムで把握、指示を出すことが可能(住友商事提供)

従業員同士の“相性”も考慮

さらに、AIと量子コンピュータを使い、現場の最適配置を提案する「magiQanneal(マジカニ―ル)」にも注目が集まる。顧客のWMSのデータとも連動し、個々の従業員の工程別生産性を細かく把握した上で、複数の人員を配置する場合に誰を組み合わせればいいかを考察、最適なパターンを自動で提示する。

当日出勤する人数などの要素に加え、過去の組み合わせの作業データから、従業員同士の相性の良さも考慮に入れることができるという。住友商事は最適配置の実現で従業員の仕事に対する満足感をアップできると指摘。「従業員の間で不公平感を生まないよう、人間が細心の注意を払って要員の配置を考えても、どうしても不平等感を訴えられる。そんな時に、AIと量子コンピュータを使っていれば、公平に判断したと説明できる」と効果を説明する。

量子コンピュータは大量に存在する選択肢の中から最善の組み合わせを突き止めることを得意としており、同社は物流現場でまさに有効活用できると期待している。引き続き研究を進め、最適配置の精度を一段と高めていくことを目指している。

(藤原秀行)

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