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「当面は今の身の丈で事業を展開する」

「当面は今の身の丈で事業を展開する」

日野自動車・小木曽社長会見詳報(後編)

日野自動車は10月7日、トラック・バス用ディーゼルエンジンの排出ガスや燃費の性能に関する認証申請で長年不正行為を続けていた問題で、国土交通省からの是正命令を受けて策定した再発防止策と社内処分に関する記者会見を東京都内で開催した。同社の小木曽聡社長らの発言内容の詳報を前後編に分けて掲載する。


会見に臨む小木曽社長

取締役会の多様性を確保

――調査報告書でも指摘があった、いわゆる車種の展開などで身の丈に合っていないのではないかという声があったと思うが、今後事業の見直しについて、現段階でどのように考えているのか。
野村達也コーポレート本部 戦略・企画領域 副領域長
「事業については今、ステークホルダーの皆様に多大なご迷惑をお掛けしている状況であり、われわれ人と物の移動を支える企業として、責任の大きさを痛感しているところ。まずはステークホルダーの皆様のご迷惑の最小化、それから本日ご説明した3つの改革、こちらの推進に注力してまいりたいと考えている」


野村氏

――調査委の報告書にあった、身の丈に合っていないという認識自体はあるのか。
小木曽社長
「やはり今回の問題が発覚する前までは、やはり企業としての成長を目指す部分は大切だと思うが、少し、会社の実力に対して台数とか、車両の種類、バリエーションとかをとにかく増やして量を拡大するという部分の目標値が優先されていた。これは残念ながら事実だと思う。結果としては当然、身の丈を超えた事業計画になりやすい部分があるので、そういった部分を真摯に反省して、今日の3つの改革の中にもこういったことを踏まえてちゃんと正していくというのは、おそらく3カ所ぐらい出ていたかもしれないが、今までのことを真摯に反省して対応していこうと思っている。なので、今、野村が申し上げた、お客様への迷惑が解決するまでは踊り場といったような形で、今の身の丈のまま、しっかりお客様に向き合っていく。こういったことを丁寧にやっていこうと思っている」

――当面は今の身の丈のままやっていくということか?
小木曽社長
「はい。あとは1つ1つ、様々なプロジェクトがあったり、様々な計画は地域ごとに置くので、このあたりをいかにお客様に喜んでいただきながらプロジェクトをスリムにできるか、こういった部分についても新しい改革の組織でしっかり、機能間、部門間をオーバーして検討してまいりたい」

――処分について伺いたい。社内の幹部8人と社外取締役、それから過去の11人の元役員が対象ということだが、これ以上に対象を広げる可能性はあるのか。直接不正にかかわっていた部署の社員の処分は考えているのか。社内外から厳しい処分を求める声があったと思うが、今回の処分は納得感があるものになったかどうか。
小木曽社長
「まず、調査報告書に記載のある中の従業員への対処は今回、含まれていないので、今後より慎重に検討して対応を決めていくということ。それ以外の経営層について、今回の問題に関しては、全容に対して今回の対応を決めてきたという内容。これが厳しいか厳しくないかということについては、やはり客観性が大切だと思うので、われわれ会社としてもしっかり事実関係を確認した上で決めているが、これが客観的に妥当かどうかということについては第三者の意見も入れて決めてきている」

――社外取締役の中に長年勤めている人がいて、そういった人が残ることについて株主などの理解を得られるのか。多様性のある人員構成にしていきたいということで触れているが、具体的にはどんなことを考えているのか。
小木曽社長
「今、社外取締役3名と非常勤で、親会社のトヨタからの取締役1名がいただいている。この社外および親会社からの取締役については、様々な観点で、取締役会で監理監督をしていただいてると思っている。今回の不正の問題はやはり執行から問題が上がってこなかったこと、もしくは取締役会の中でそういった、先ほど申し上げた会社の基盤とか、風土に関する議論、検討が不十分だったことだと思うので、こういったところから1つ1つ、取締役会も、社外取締役のメンバーも含めて、向き合っていくということで、まずこの問題に対する強化を進めてまいりたい。将来に向けては、さらに取締役体制の強化等は引き続き検討してまいりたい」

「多様性というのは様々な多様性があるので、専門の多様性の場合もあるし、様々なバックグラウンド、出身ということもある。あとは女性の比率ということをよく問われる場合もあるが、当社の場合は役員関係だと、今取締役は女性はいなくて。監査役に2名いるということで、取締役、監査役合わせて取締役会に参加している、監査役を含めたメンバーで女性が2人ということだが、こういった観点を様々見ながら今後の検討をしていきたい」

――問題が3月に発覚してから影響が長期化しているかと思う。サプライヤーや運送事業者らへの今の対応は。今後の業績の見通しについても伺いたい。
小木曽社長
「ご指摘いただいた通り、われわれの生産が停止している影響で、様々な方々にご迷惑をお掛けしている。9月9日以降に小型のトラックとレンジャーの出力の大きい方が出荷再開したから、生産再開は10月とか対応があるが、これで全部止まってるところに対して少し緩和はされているが、やはりまだ大型のトラックの国内分が止まっている。この影響でまだご迷惑をお掛けしている。長期化しているので、まず仕入れ先さんにはわれわれの調達のメンバーが1社1社ご訪問して、困りごとを聞く。困りごとに対してやはりご迷惑をお掛けしていることに対してはしっかり発注元として責任を果たすとか、あとはティア2のサプライアーさんについて、しっかりケアをするというようなことをやっている。具体的な数値、既にお話させていただいた内容だが、今年度の第1四半期で、仕入れ先さん対応だけで20億ほどの費用を使って対応させていただいている。こちらについてはやはりティア2も含めた仕入れ先をこまめに見るというのは、われわれの調達のメンバーが本当に足を運んでやっているが、行き届かないところがあるので、これは親会社のトヨタの調達にも連携をして、少しサポートしてもらったりしている」

「それから実際の運送業者のお客様、販売会社経由で様々なケアが必要なので、これをやっている。もちろん私達のトラックをお届けできないことによるご迷惑はかなりあるので、一緒に他の台車を探したり、中古を探したり、日野自動車のメーカーの営業を中心とした人間が、販売会社にも50名ほど常駐させていただいて、ご迷惑を少しでも減らせないかという努力をしているが、やはり長く、3月からラインが止まっているので、ご迷惑をお掛けしている状況。こういった対応をしている」

――例えばユーザーに対して代車や中古を提供している?
小木曽社長
「今回の認証不正問題で、車両供給できないことによって様々な困りごとがお客様に発生して、おそらくその話が入ってくるのが販売会社なので、メーカーの人間が50名ほど販売会社に常駐して様々な困りごとへの対応を販売会社とともにしていることになる。その事例の中でやはり新車が来ない時に中古で同じ架装のものがないのかとか、単なる一事例にすぎないが、そういったことをやりながらの対応の工夫をさせていただいている」

――過去の役員への報酬自主返納要請だが、応じなかった場合はどう対応するのか。金額は何を基準に責任の大小を計画に落とし込んでいこうと考えているのか。
小木曽社長
「こちらについては、やはり強制ではない、繰り返しになるが、過去の役員についても、直接的な関与があるわけでも、法的な責任が発生したわけではない。今回の問題があった時に、経営のポジションにいて、これを防ぐことができなかったという、経営にいる人の社会的な責任といったようなことなので、要請だ。丁寧にご説明をして返納をいただくように説明をするということで対応していくことになる。報酬の金額だが、現役の減額の内容とか、あとは正直、私達もこういったことをやるのは初めてなので、他社の事例等を第三者の方々等にも見ていただいて、レベルを決めている。今回の件は直接的な関与で返納を決めてるわけではないので、関与が深いとか浅いとかいうことではなく、全体的に内容で判断しているとご理解いただければ、と思う」

――返納に応じない人が出たら、明確にしたい経営責任はその人からはならない、との理解でいいのか。
小木曽社長
「やはりこれを明確にするのは返納要請するということをする、ということが明確化なので、法的なものではないので、結果によって変わるということではないというふうに認識している」

迷惑を最小限にできることであればトヨタに協力を要請

――今回を機に親会社のトヨタ自動車の関わり方が変わることはあるのか。
小木曽社長
「親会社のトヨタ自動車がどのようにしていくかというのはなかなか、われわれ日野自動車が申し上げることではないし、申し上げられないと思う。やはり、トヨタ自動車側で決めることだと思う。一方で、先ほども少し調達の事例があったが、やはりわれわれ、お客様とか様々なステークホルダー、あとは関係の方々にご迷惑をお掛けしているので、調達の関係とか、法規認証の関係とか、様々な面でやはり力を貸してもらうところは協力をしてもらって進めている」

――その協力の範囲が広がる可能性はあるのか。
小木曽社長
「1つ1つ、ご相談をして、了解いただければ力を借りていくということだと思う。やはり、親会社子会社の関係なので、お客様の迷惑を最小限にできるといったことであれば私自身、しっかり親会社にお願いをして、協力をいただくという形になっていくと思う」

――米国や欧州などで認証の問題で調査が進んでいると言っているが、今後の見通しを教えてほしい。
脇村誠・副チーフコンプライアンスオフィサー
「北米についてはご存知のように、今回の日本の事案が判明する以前から、北米では当局の捜査が既に進んでいた。現時点で引き続き当局の捜査中というステータスであって、弊社から詳細を申し上げることは現時点ではできないという状況。欧州についても、現時点では欧州の弁護士を通して現地当局とのコンタクトを取っているところ。その中で欧州の認証についても不正があるのかないのかという調査を今、弊社の中で進めていて、その状況について当局と共有しながら今後の対応を進めていくという状況」

――中南米とかアジアは通常通り動いているのか。
脇村氏
「はい、中南米とアジアについては、それぞれの国で固有の法規があり、車両導入の方法が国個別で異なっている。それはもうそれそれぞれの国のケースでどういう認証の手続きでもって車両を導入しているのかということで、個々の対応で今処理を進めている」


脇村氏

――いわゆる3カ月をめどにと、従来説明していたものが、今回経営責任の明確化とセットで全て出てきたという理解でいいのか。一方でこのリリースを見ると、新たな組織における人選を進めており、年内に公表するというくだりがあるが、これと何か連動をして、まだちょっと次にという積み残しのものがあるのか。何かしらこの、風土改革とか再建に向かって、今後考えていることのアナウンスがあるのか。
小木曽社長
「8月2日のリリースは、確認していただければすぐ分かると思うが、全社横断の品質マネジメント、組織風土といった企業体質の改善、管理監督機能を含めてガバナンスの確立と、あとは経営責任ということを申し上げていたが、併せて、リリースには推進に向けた執行体制も含めて、と書いている。本日の内容でほぼほぼ網羅しているが、1点だけ、マトリックスの組織構造、実際にこの新しい体制に組織そのものを変えるのは少し、人事上の手続きがかかるので、実際、今回3つの改革と書いてあるものは既に始めているものもあるし、明日以降加速していくものもたくさんあるが、この右側の組織に大きく変えて、さらに加速化する部分については、今、仮として年内にご案内をできるぐらいの日程軸。この部分が8月のものに対する積み残しと言うこともできるし、ほぼほぼ今日の時点で全てご説明をしているという言い方もできると思う。この大きな体制変更は当初思っていたことよりもさらに抜本的にやるべきではないかと、まだこれ完成度はそう高くないので、実際の組織で、今日ご説明したことはきっちりやれるようにというのを年内かけてやっていくつもりだ」

――またあらためてこういう形で会見するようなものではないということか。
小木曽社長
「こういう会見をさせていただくかというのはまたその都度都度、ご相談させていただきたいと思う。組織の形を変えるだけで(会見を)やるかどうかというのは、またその時の内容を含めてご相談だと思う」

財務上の問題に今直面しているということではない

――いわゆるリコールや集団訴訟が起き、当然生産もなかなか再開できない中で、事業体として今の日野の現在地をどのように認識しているのか。
小木曽社長
「今の時点は第1四半期の内容をご説明したのにとどまっている。ほどなく第2四半期、上期の内容をご説明することになるので、やはりその辺りでしっかりご説明ができるかなと思っている。通期については、またその大型の再開の時期が、先ほどのように見えないので、この部分については、例えば上期の時に生産が再開した場合、しない場合、どちらかというと、われわれいつ再開するか(予想)できない、申し上げられないと言っているので、再開できなかった場合のワーストケースでどのぐらいの立ち位置にあるのか、また様々な補償の金額はどのぐらいになるべきか、こういったあたりを、また上期でご説明をさせていただく形になるのではないかと思う」

「財務上の問題が今直面しているということではない。ずっと直近で3つの方向性とやってきたように、われわれは新車を売るだけではなくて、トータルサポートといった保有のビジネスにどんどん仕事を切り替えてきているので、今は海外と保有ビジネスに支えていただいている状態で、何とか財務的にしのいでいるというような状況。また数値が確定次第、ご説明をさせていただくことになると思し、一方でわれわれが保有と海外で何とかしのげていても、先ほどのご説明のように仕入れ先さんだったり、国内で日野の大型トラックを待っているお客様ということと、そういう方から見ると全く何の解決にもならないわけだから、われわれは全社員でこのご迷惑を解決できるように、今日の内容にも取り組んでまいりたいと思っている」


質問に答える小木曽社長(中央)ら

――新しい構造改革について、もう少し詳しく教えてほしい。チーフエンジニアリングも新しい能力が問われてくるようだが。チーフエンジニアが現地に2人いるようにも思えるが。
脇村氏
「これまでの日野のチーフエンジニアの役割の模式図。チーフエンジニアとの日野のみならず、多くの自動車製造・開発の会社で使われている仕組みではあるが、従前の日野の中でのチーフエンジニアという存在は主にこの絵にあるような、開発のエリアで開発の進捗を図るという立場だった。この役割というのが、やはり車全体を企画から市場導入まで含めた時にリーダーシップとしては非常に限定された部分で動いている形であって、こういう仕事の仕方が、特別調査委員会の指摘でもあったが、みんなで車を作っていないというところにつながっていたのかなということで、私ども反省をしているところだ。今回新しく下半分のこれからというところで、先ほどチーフエンジニアは2人いるように見えるというところ、これは申し訳ないが絵があまりうまくなくて、チーフエンジニアは1人。1人のチーフエンジニアがリーダーシップを持って、企画の上流のところから市場導入あるいはトータルサポートと呼んでいるが、アフターサポートのところまで。しっかり車全体を1つの事業、あるいは1つの会社運営のように全体を経営すると。採算も見るし企画も見るし販売も見るし、もちろん開発も見るといういう形に今回変えていこうとしている。チーフエンジニアの下でこの絵にあるように、それぞれの機能部門、開発とか営業とか、それぞれの機能のセクションからメンバーがプロジェクトに集まってきて、それぞれの機能としての働きでクルマづくり全体を進めていくという体制を、これから作っていこうという、そういうコンセプトだ」

――そうするとチーフエンジニアの仕事がより大変になったり過重になったり、判断が偏ってきたりとか、時間がかかったりとか、そういうような弊害というようなものは想定していないのか。
脇村氏
「今のご指摘は非常に重要なところで、従前のチーフエンジニアより、やはり広い視野が求められる新たな職責になるので、もちろん今いる日野の中のチーフエンジニアあるいは今までチーフエンジニアをやっていなかったんだけれども、経営視点として全体的に車を見られる新しい人を発掘していくということもこれからやっていく。そういう意味で言うと、チーフエンジニアの仕事はこれまでよりも大変な仕事になるのかも分からない。だけれども、やりがいとしては、本当に車1台、全部自分の車だと言い切りながら車全体の経営をできるという、非常にエキサイティングな仕事になるのではないかと考えている」

「判断が遅くなるかということに関しては、これは、私はむしろ逆だろうと。今までは、機能部門それぞれの中で言ってみれば機能部門のコンフリクトがあったり、縦割りで自分の仕事が終わったらはい次みたいなところがあったので、どうしても壁が多かったということがある。これからの仕組みというのはプロジェクトという1つの大きな大部屋的な感じで、そこに各機能のメンバーが集まってきて、1つの丸テーブルを囲んで、そこでクルマ全体の議論を全員でしていくと。もうそこでチーフエンジニアを中心に即断即決をしていくということを考えているので、意思決定のスピードはこれまで以上に早くなるのではないかと考えている」

――先ほど中間決算の時点で、下限となるような業績の目安というような話もあったかと思う。また年末には、という話もあって、これからの向こう3カ月、6カ月ぐらい、会社としてどんなマイルストーンで、順次発表なり、アップデートしていくのか。
小木曽社長
「今確定しているのは上期の決算発表ぐらいだと思う。あとは今日ご説明をさせていただいた内容は、やはりまず日野自動車の中で、1日1日、1人でも多くの社員、経営層もマネジメントも含めてだが、巻き込んで、この改革を徹底していくことに少し集中していくことになるような気がする。内容に応じて、明確になったことがあれば、またこういった場を開くかもしれないが、あと一方で、われわれ今まで外部へのメッセージということをあまり得意とせず、定期的にそれほどやってこなかったものだから、信頼回復プロジェクトという形でプロジェクトを立ち上げている。これは外へ向かってだけではない、信頼回復なのでやはりご迷惑をお掛けしているお客様に向き合ってというのが第一義だが、やはりリリースを含めてメッセージを出すことで、今日いらっしゃっていただいている方々、IRの方も含めて1つ1つの進捗を見ていただく。また時として、社内にもしっかり協議をするということでこの信頼回復プロジェクト等ではもう少しコンパクトに細かいスパンで情報を出させていただくと思う。あとは、今は上期の決算ぐらいを予定している。それ以外についてはまた、都度都度計画が決まったらご案内をさせていただきたい」

(本文・藤原秀行、写真・中島祐)

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