【独自取材、動画】焼け焦げた壁面、「煙すごく爆発事故かと思った」の声も

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東京・城南島の倉庫火災現場リポート

 2月12日にマルハニチロ物流の「城南島物流センター」(東京・大田区)で起きた火災は死傷者4人を出す惨事となり、物流業界にも驚きが広がっている。直後の13日午後にロジビズ・オンラインが訪れた現場一帯は無残な姿をさらし、消し止めるまでに約9時間を要した火の勢いの凄さを物語っていた。

ぐにゃりと曲がった非常口の扉

 同センターが位置する城南島の臨海エリアに立ち入った記者の目に真っ先に飛び込んできたのが、最上階の窓周辺が黒く焼け焦げた異様な壁面だった。周辺に立ち並ぶ倉庫や工場、コンテナの山などの中でも遠くからすぐに現場が見分けられるほどの際立つ光景だ。


火災があった「城南島物流センター」

 出火直後にたまたま付近を走行していた60代の男性タクシー運転手は「東京湾沿いでかなり大きな煙が上がるのが見えた。あまりに煙の勢いがすごいので最初は湾岸部の工場で爆発事故でも起きたのかと思った。その後ラジオのニュースで城南島の倉庫だと知った」と振り返る。その言葉を裏付けるかのごとく、建物最上階にある非常口の扉はぐにゃりと曲がっており、高熱の影響を受けた可能性がある。扉の内側と内部も焼けているのが見えた。

 センターの外見からはとりわけ建物に向かって右側部分が激しく燃えたことが見て取れる。警察、消防による現場検証でも20人以上の関係者が建物の右側上部を集中して捜査する様子がうかがえた。

 周辺を良く知る会社員の男性は「火災があった城南島には平成に入ってから完成・稼働した施設が多く、東京湾岸一帯の冷凍・冷蔵倉庫の中では比較的新しい部類」と指摘。その上で「倉庫火災と聞いて真っ先に古い施設だと思った。それだけに現場が城南島だったのはちょっと意外」と目を見張る。前出のタクシー運転手も「言い方は悪いが城南島の倉庫はあれでもこの界隈では新しいくらいだ」との見方を示す。


黒く焦げている最上階の窓周辺


現場リポート(前編)※音が大きいので再生の際はボリュームにご注意ください


現場リポート(後編)※音が大きいので再生の際はボリュームにご注意ください

溶接作業から引火の可能性?

 物流業界関係者が注目する出火原因について、マルハニチロ物流の親会社であるマルハニチロは13日に「事実関係と原因究明に向けて現在調査中」とのコメントを発表。物的被害についてもまだ明らかになっていない。ただ、警察や消防、マルハニチロの発表などによれば、出火当時は火元とみられる5階付近で冷凍機の入れ替え作業に伴い取引先業者が配管の溶接工事を行っていたことが明らかになっている。

 建設業界に詳しい関係者は現場を見ていないのであくまで仮定の話と念を押した上で、「内壁に用いられている断熱材に溶接の火が燃え移り、そこから一気に広がった可能性は否定できない」と話す。別の建設業界関係者は映像・写真から施設の損傷度を「設備類は厳しいだろうが躯体は大丈夫だと思う」と分析し、全面建て替えには至らない可能性も示唆した。

 工場や倉庫などの大規模火災に数多く出動した経験がある消防関係者は「倉庫火災の犠牲者は煙に巻かれて逃げ遅れた場合がほとんど。断定はできないが今事案も火勢より煙の回りが早かったのではないか」と倉庫独特の閉鎖性・気密性をリスクに挙げる。

 直近では17年2月、オフィス用品通販大手アスクルが埼玉県三芳町で当時運営していた倉庫で大規模な火災が発生。大型倉庫の防火対策や消防活動の在り方が問われる事態となった。

 冷凍・冷蔵倉庫は初期投資が大きく機能や運営に専門・特殊なノウハウが必須とされ、こうした要素から建て替えが後手に回り施設の老朽化が進行している側面もある。今回の火災に老朽化が影響しているのかどうかは現時点で不明だが、3人の尊い命が失われる痛恨の事態となっただけに、原因究明の結果によっては防火対策の規制強化などを検討する必要があろう。

(鳥羽俊一)

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