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【独自】デジタルフォワーダーのShippio・佐藤CEO単独インタビュー(前編)

【独自】デジタルフォワーダーのShippio・佐藤CEO単独インタビュー(前編)

「汎用性が高い国際物流プラットフォームを構築する」

貿易関連業務を包括的に効率化するクラウドベースのシステム「Shippio(シッピオ)」を展開しているShippioの佐藤孝徳代表取締役CEO(最高経営責任者)はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

佐藤CEOは、9月に公表した16.5億円と合わせて、2016年の創業以来、これまでにベンチャーキャピタルや大手損害保険会社などから累計で約30億円の資金調達に成功してきたことに触れ、フォワーディングと貿易関連業務を効率化するクラウドサービスを手掛ける「デジタルフォワーダー」の存在意義への理解が広く進んできたと指摘。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う国際物流の混乱や越境ECの取り扱い増加などで、フォワーディングや貿易業務効率化のニーズは今後ますます伸びることが期待できるとの見方を表明。デジタルフォワーダーとして担う業務領域を広げ、国際物流に関する汎用性の高いプラットフォームを構築、DXを浸透させていくことに強い意欲をのぞかせた。インタビューの主なやり取りを2回に分けて紹介する。


東京・浜松町の新オフィスで取材に応じる佐藤CEO

名実ともに「国内初のデジタルフォワーダー」に

――2016年の創業から6年が経過しました。デジタルフォワーダーとして事業の現況はいかがですか。
「おかげ様で順調に成長しています。われわれは創業以来、第一種貨物利用運送事業者など各種免許の取得を進め、2019年から本格的にフォワーディングと貿易関連業務を効率化するクラウドサービスをワンストップで提供し、50年以上イノベーションが起きていなかった国際物流領域のアップデートを図る日本初のデジタルフォワーダーとして活動してきました。これまでに当社のサービスをお使いいただいたお客様は100社を超え、今年7月末時点で受注高は前年同月比で約4倍の伸びになっています。世の中が少しずつ変わってきた印象ですね」

「今、様々な物流ベンチャーが登場、活躍していますが、大半は基本的にラストワンマイルの文脈で事業展開されています。われわれとしては島国日本に不可欠な貿易、国際物流の領域の生産性を上げていきたいということでずっと取り組んできました。このたび、特許庁から『デジタルフォワーダー』の商標登録を認められました。これで名実ともに日本初の存在になったと思っています」

――クラウドサービスは具体的に、どの範囲までをワンストップで提供しているのですか。
「見積もりのシミュレーションと発注はウェブ上で完結させられますし、シップメント(各輸送案件)の進捗度合いや本船動静(船ごとの航海の状況)を可視化、把握することが可能です。貿易書類も一括管理できます。当社はSaaS(Software as a Services)のソフトウエアを持っているだけではなく、オペレーションも手掛けていますから、多岐にわたるステークホルダーがチャットで情報を素早く共有し、納期などをスムーズに調整できる機能も搭載しています。今後は改正電子帳簿保存法にもきっちりと対応していく予定です」

――業務効率化の具体的な効果は?
「クラウドサービスを使うことで、お客様は本船動静確認などの作業を大幅に簡略化できます。社内外で多岐にわたる関係者とコミュニケーションを取るための労力も減らせますし、貿易関係の書類についても印刷から保管などの管理工数を削減することにもなります。導入いただいたお客様の多くで貿易業務量を50%以上減らせています。これは大手や中堅企業はもちろん、特に中小企業やスタートアップにとっては貿易関連業務の管理工数を削減することで、経営企画などの中核業務によりリソースを割けるようになります」


クラウドサービスの画面イメージ(Shippio提供)

「一例を挙げると、医薬品や医薬部外品などの製造を手掛けておられるサイキョウ・ファーマさんはコロナ感染拡大でマスクの需要が大きく伸びし、輸入量が従来の2倍近くに拡大したため、貿易業務を担当されていた方の業務量が、新商品の登録や単価の確認、倉庫や営業担当のやり取りなどで従来の4倍近くまで膨れ上がっていました。そこで当社のクラウドサービスをお使いになった結果、輸入する案件が多くてもそれぞれの進捗状況を容易に把握できるようになり、業務時間が半減したんです」

「他にも、明治グループで甘味料などを扱っておられる明治フードマテリアさんは、輸入時の本船遅延が増え、担当者がスケジュールを確認する頻度も増加したことで負荷が掛かっていました。メールで貿易書類や請求書をやり取りしていたことから、各書類を管理するのが煩雑になるなどの課題を抱えていました。当社のクラウドサービスをお使いになり、スケジュール確認の工数が8割以上減らせるなど、大きな効果を挙げることができました」

――国際貿易業務の効率化やデジタル化という意味で言えば、御社と似たような事業を手掛けるスタートアップが増えてきたように思いますが、そうした動きをどのように感じていますか。
「それ自体はすごくいいことだなと思います。もちろん、われわれがこのマーケットを先駆けて作ってきたという自負があります。事業を始めた当初は他に国際物流の領域を挙げるスタートアップはほぼいませんでした。そのころと比べれば、この領域が盛り上がってきたなと感じますね。サービスを手掛けるのが1社だけでなく、何社も出てくるようになればその業界は魅力的ですから」


みずほ銀行が成長期待のイノベーション企業を表彰する「Mizuho Innovation Award 2022 3Q」を受賞した佐藤CEO。右はみずほ銀行の大櫃直人常務執行役員(Shippio提供)

単なるペーパーレスではなく、業務工数削減という大きな価値生み出す

――デジタルフォワーダーといえば、米国のFlexport(フレックスポート)やドイツのForto(フォート)が先行している印象です。そもそもグローバルのフォワーディング市場は今後も成長が見込めるのでしょうか。
「グローバルフォワーディング市場は約20兆円、日本国内に限っても3兆~4兆円と非常に大きなマーケットですし、昨今は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う物流の混乱もあり、貨物の輸出入に関する様々な変更や調整、交渉が増えていることから、国際物流を担うフォワーダーにますます注目が集まっています。そうした中、今もまだ多く残っている国際物流の非効率を解消していくDXのニーズは年々高まっています。フレックスポートは今年2月に9億3500万ドル(約1300億円)の資金調達を果たし、評価額は80億ドル(約1兆1200億円)に上ります。フォートも累計で3億6000万ドル(約500億円)を調達するなど、両社ともにその将来性に対して非常に大きな期待が寄せられています」

――御社も9月、シリーズBラウンド(経営安定期)で16.5億円を調達したことを発表しました。累計の調達額は約30億円に上ります。今、スタートアップの資金調達環境はかなり厳しくなっていると聞きますが、そんな状況下でも大きな額の調達ができたことは、御社の成長性への期待が高まっていることを表しているのでは?
「確かにスタートアップの資金調達環境は非常に悪くなっています。個人的には昨年の秋ごろから様相が変わり始め、今年に入ってから悪化が加速しているようなイメージです。これはいわゆる調整局面を迎えているのだと思いますが、そんな中でも順調に資金調達できているのは、これまで地道に取り組んできたことを投資家の方々に評価いただけたのかなと感じています。単なるペーパーレス化というわけではなく、貿易に関する業務工数を減らせるという大きな価値を提供できているからこそ、それだけの資金を集めることができたのではないでしょうか」

――今回の資金調達の使途はどこに定めていますか。
「グローバルを含めた人材採用や新たなプロダクトの開発、事業領域拡大のためのM&Aなどに充てる予定です。今回の資金調達では既に出資いただいているアンカー・シップ・パートナーズやデライト・ベンチャーズ、環境エネルギー投資、ソニーベンチャーズの皆さんに加えて、新たに東京海上日動火災保険さんやみずほキャピタルさん、DNX Venturesさん、Spiral Innovation Partnersさん、あおぞら企業投資さんが投資してくださったんですが、東京海上日動さんは海上保険という部分で当社のサービスと非常に相性が良い点を認めてくださった。みずほキャピタルさんなどに入っていただくことで、貿易金融の部分でも何らかのサービスを展開していきたいと考えています」

――かなり業容を広げていくのでしょうか。
「当社の成長戦略として、当社のサービスを発展させ、荷主企業と物流事業者の双方が抱えている課題の解決に貢献できる汎用性の高い国際物流プラットフォームを構築していくことを目指しています。その一環として、9月には荷主向けの新サービスとして『AnyCargo』のベータ版提供を始めました。これまでは、当社がフォワーディングで取り扱う貨物はクラウドサービスを通じてトラッキングや案件管理が利用できましたが、他のフォワーディング事業者が扱う案件については、個別の案件管理が必要で煩雑になっていました。そこで、新サービスを使うことにより、他のフォワーディング事業者が扱う案件を含め、お客様の貨物全体の輸送状況をクラウド上で一元管理できる体制に移行しました。既に10社程度にお使いいただいており、2022年中に本格展開を始める予定です」

――新サービスはかなり荷主に受け入れられそうですね。
「そのように期待しています。これからも利便性の高いプロダクトを開発していきます」


「AnyCargo」のイメージ(Shippio提供)

(後編に続く)

(藤原秀行)

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