海運業の伸び目立つ、運賃高騰や円安が寄与
3月を決算期に設定している上場物流企業66社の通期(2023年3月期)連結業績予想は、トータルで売上高と本業のもうけを示す営業利益がともに前期より1割増加する見通しとなっていることが、ロジビズ・オンラインの集計で明らかになった。
新型コロナウイルス禍による国際物流の混乱で生じた海上・航空運賃の高騰が今期中はまだ続いたことや、急速な円安でドル建て運賃が膨らんだことなどが寄与し、海運業や国際物流を手掛けている倉庫・運輸関連業を中心に収益を押し上げるとみている。
24年3月期については、海上・航空運賃の正常化が進むとみられることなどに加え、ロシアのウクライナ侵攻などを契機としたインフレで世界的に景気減速の懸念が強まっていることもあり、物流業界全体で増収増益の傾向が続くかどうかは予断を許さない。
従来予想から売上高4500億円上積み
対象は東京、名古屋、札幌の各証券取引所に上場し、証券取引所が物流業に分類している69社のうち、通期予想を開示していないか、まだ開示していなかった3社を除いた66社。内訳は運輸業28社、海運業10社、倉庫・運輸関連業28社。
なお、66社のうち1社が営業赤字を見込んでおり、集計の際は同社の赤字予想額を利益の総額からマイナスして計算した。
66社全体を集計すると、売上高は前期比9.9%増の15兆5167億円、営業利益は11.8%増の1兆1189億円に上った。前期より増収を見込むのは9割の59社、増益を見込むのは6割の43社となっている。
9月中間決算までの従来の連結業績予想は売上高が6.6%増の15兆624億円、営業利益が5.6%増の1兆573億円だった。業績予想の上方修正が相次ぎ、売上高で約4500億円、営業利益で約600億円上積みされた格好だ。
業種別では、陸運業28社全体で売上高は4.0%増の7兆4606億円、営業利益が0.9%増の4496億円。前期より増収、増益を見込むのがともに9割の26社。ただ、陸運業の中で大きな位置を占めるヤマトホールディングスが利益予想を160億円下方修正したのが全体を押し下げており、同社を除くと実質的な増益は4%程度となっている。
海運業10社全体は売上高が20.9%増の5兆7498億円、営業利益が27.4%増の5040億円で、全社が増収、9社が増益の予想を示している。
倉庫・運輸関連業28社全体は売上高が4.9%増の2兆3062億円、営業利益が3.7%増の1653億円。増収の予想は8割の23社、増益は5割の14社となっている。全体的に海運業の伸びが目立っており、大手3社の業績予想上方修正が特に寄与している。
(藤原秀行)