ゴム人工筋肉使った「柔らかなロボット」技術など活用へ
ブリヂストンと知能ロボットシステムの開発を手掛けるアセントロボティクスは2月1日、製造業や物流業など向けの新たなピースピッキングロボットの開発・実用化に向け、資本・業務提携契約を締結したと発表した。
昨年12月、アセントロボティクスがブリヂストンを引き受け先として第三者割当増資を実施しており、出資額は5億円。ブリヂストンがモビリティ以外の分野で資本・業務提携を結ぶのは初めてとみられる。
ブリヂストンがタイヤなどゴム製品で蓄積してきた技術やノウハウを基に生み出したゴム人工筋肉を活用し、人間の手のようにやわらかく動くロボットハンドが様々な形態の物を柔軟に、かつしっかりとつかむ「ソフトロボティクス」の技術と、アセントロボティクスが展開しているAIを使って対象物の大きさや形状を正確に把握するソフトウェアなどを組み合わせ、高機能なピースピッキングロボットを早期に実現していきたい考え。ブリヂストンがロボットの「手」を、アセントロボティクスが「目」と「頭脳」を担う形だ。
ゴム人工筋肉を使ったハンド。手の指のように柔軟に動かせる
卵のケースも適度な力で持ち運べる
ピースピッキングロボットは最大で約2kgまでの物を持ちあげることが可能。ブリヂストンとアセントロボティクスはソフトロボティクスを活用することで、これまで自動化が難しかった、形状や重量、温度、可塑性、荷姿などが大きく異なる生鮮食品、冷蔵・冷凍品といったアイテムのピースピッキングにも対応できるようになると見込んでいる。
どのぐらいの力で持つのが適当かを判断したり、柔らかい果物や卵の上に重い商品を乗せないようにしたりすることも可能という。まず人手不足に悩む物流倉庫や店舗などへの提供を想定しており、実際の物流現場で実証実験を重ねていく予定。
24~26年の事業化目指す方針をあらためて表明
ブリヂストンはソフトロボティクスの実用化を加速させるため、今年1月に事業を担う社内ベンチャー「ブリヂストン ソフトロボティクス ベンチャーズ」を立ち上げている。アセントロボティクスは製造現場のロボット向けソフトウェア開発などを担っており、ソニーグループで高性能ゲーム機「PlayStation」を開発したことで知られる久夛良木健氏がCEO(最高経営責任者)を務めている。今後はブリヂストン ソフトロボティクス ベンチャーズとアセントロボティクスが連携し、ピースピッキングロボットの性能向上を図る。
東京都小平市のブリヂストン施設内で同日記者会見したブリヂストン ソフトロボティクス ベンチャーズの音山哲一CEOは「物流業界にいろいろなソリューションを提供していけるよう実証実験を進めていきたい」と強調。2024~26年に小規模な事業化を果たせるよう取り組むとの従来目標をあらためてアピールした。
同席したアセントロボティクスの久夛良木CEOは「非常にチームのメンバーが良く、決断も早い。ソフトロボティクスの実現に協力したい。(連携の)和を広げていきたい」と語り、出身のソニーグループなどと技術開発で連携する可能性に言及した。
会見でゴム人工筋肉を使ったハンドを持ちながら、撮影に応じるアセントロボティクス・久夛良木氏(左)とブリヂストン ソフトロボティクス ベンチャーズ・音山氏
(藤原秀行)