関東・北海道エリアで開始、3年間で約7.4億円コストの削減見込む
ビッグデータ解析などを手掛けるDATAFLUCT(東京都渋谷区道玄坂、データフラクト)は3月15日、「全日食チェーン」を展開している全日本食品(東京都足立区入谷)の物流業務に、機械学習による需要予測システムを導入すると発表した。
同システムはDATAFLUCTの機械学習サービス「Perswell」とデータプラットフォーム「AirLake」を組み合わせ、全日本食品の社内データから加盟店の商品需要を予測し、その結果を物流センターの配車計画と人員配置の最適化に活用する仕組み。同社の課題だった流動的な発注による担当者の負担・配送の無駄を削減し、業務を効率化する。
2023年5月から関東・北海道エリアで同システムを導入、23年度中の全国展開を予定し、3年間で約7.2億円のコスト削減を想定している。全日本食品の物流システムに機械学習を活用するのは初めてという。
全日食チェーンは全国約1600店舗が加盟する日本最大級の食品ボランタリー・チェーンで、その多くが地域に根ざした中小規模のスーパーマーケット。食品流通業界が課題として抱えている少子高齢化や人口減少による市場の縮小、大手企業の寡占やコンビニなどが食品部門に力を入れるなどの競争激化への対応策として、システム・物流・商品力を生かしてエリアを拡大してきた。
同社のビジネスモデルは、多くの加盟店と連携することで商品の仕入れ単価を下げられるという強みがある一方、「エリアや店舗が独自のシステムを利用していて、データ収集・活用が難しい」ことや、「エリアや店舗のオペレーションが属人的で、担当者の判断に左右される要素が多い」ことが課題となっていた。
加盟店に商品が届くまでに、各加盟店からの発注を基に在庫を管理する担当者の作業と、物流センターで配送ルートと配送に必要な人員配置を決める作業が存在している。発注内容を予測できない状況では、流動的な需要に全日本食品の担当者が対応するための工数や、配送トラックが1日の内に同じルートを複数回通るなどのロスが発生してしまう。
また、担当者の経験や土地勘が通用しない、新たなエリアや店舗をマネジメントする際には、こうした業務はさらに困難となる。
そこで加盟店からの発注内容を予測できれば、配送ルートや人員配置を事前に計画し、担当者個人の判断に頼る部分を減らすことにつながる。
同システムの導入で、ロス削減と、どの担当者でも最適な判断ができる体制構築を実現し、全日本食品の利益最大化と加盟店への支援の質の向上を目指す。
食品流通のニーズは、季節要因や値上げなどの外部要因、新規出店などで常に流動的という特徴がある。過去のデータに基づく予測を基本とする機械学習では、参考となるデータがない場合に対応できないため、変化の多い食品流通に機械学習を活用するには、データサイエンスとシステム両面での技術と専門知識に加えて、オーダーメイドに対応できる体制が必須となる。
今回の取り組みでは、分析に必要なデータを収集・加工するための仕組み作りからDATAFLUCTが支援し、新規店舗に類似の特徴を持つ店舗のデータを活用するなどの工夫で、データのない「新規店舗」や「特売商品」の需要・業務にも対応できるソリューションを実現した。
(藤原秀行)※いずれもDATAFLUCT提供