【独自】東京で稼働開始の自動化拠点生かし「物流をもう一段アップデートしたい」

【独自】東京で稼働開始の自動化拠点生かし「物流をもう一段アップデートしたい」

アスクル・伊藤執行役員が決意、「検品レス」など実現図る

アスクルの伊藤珠美執行役員ロジスティクス本部長と内園由隆東日本物流第一事業本部東京物流センター長はこのほど、同社が2022年に東京都江戸川区臨海町で開設した、自動化に注力した最新の基幹物流拠点「ASKUL東京DC(ディストリビューションセンター)」をメディアに公開したのに併せて、ロジビズ・オンラインの取材に応じた。

伊藤氏は、現行の中期経営計画で打ち出している「強みの高速物流を進化させロングテールも『明日来る』へ」の実現に向け、東京DCはロングテールのニーズまでカバーできる多品種を在庫し、繁忙期でも迅速に安定して入出荷をこなせる機能を確立すると説明。顧客にとってもメリットが大きいとの認識を示した。

その上で「東京DCで得た知見を生かし、物流をもう一段アップデートしていかないといけない」と決意を表明。自動化設備の安定稼働を引き続き図る姿勢を強調した。同時に、「気持ち良く働けるセンターでありたいと思っており、最大限配慮していきたい」と述べ、就労環境の改善にも目配りしていく意向を表明した。

内園氏は、東京DCはコンベヤの配置を工夫するなど各フロアの上部空間を有効活用することに努めており、一般的なセンターと比べると6割程度、空間使用効率を高められているとの見方を示し、他の物流センターの参考になるようにしていきたいと意気込みを語った。


伊藤氏(右)と内園氏

「後方支援センター」でオペレーション効率化

伊藤氏は、東京DCの稼働開始について「このセンターを立ち上げたことで全体の物流効率化が進み、コスト低減にもつながる」と指摘。さらに、中計の中でうたっている「ロングテールも『明日来る』へ」の実現に向け、「このセンターはロングテール商材をしっかり在庫していく。お客様の価値を最大化していくことで物流全体のレベルアップに寄与していく。中計の目標を実現する上で大事なセンター」との見方を示した。

東京DCがアスクルのECユーザーに与えるプラスの効果については「複数のセンターからばらばらと商品が届くのではなく、東京DCで1つにまとめて注文の翌日にお客様へ商品が届くということが最大の利点だと思う」と説明。当日や翌日の配達体制がより確実になるとアピールした。

中計に盛り込んでいる物流変革のための戦略に関連し、商品を各地のDCへ送る前にいったん前さばき倉庫や補充倉庫へ収め、商品入荷が集中しないよう調整することでDC内のスペースの有効活用を後押しする「後方支援センターの活用」について「機能としては非常に有効。センターの間口の拡大・確保というところでオペレーションを効率化できているのが大きい。大ロットで入荷があると、出荷に回らないのに在庫が積み上がって間口が取れないことがあるが、そうした構造の改革は進んでいると思う」と評価。

併せて、取り扱うSKU(商品の最小管理単位)の拡大に関しても、関西の物流拠点と東京DCで集中して進めており、「着々と伸ばせている」と語った。東京DCは本格的な稼働から数カ月経過したのに伴い、順次SKUを増やしているという。


東京DCの外観(アスクル提供)

今後の対応としては、サプライヤーと協力して、商品データを共有することにより物流拠点で入荷時の検品レスを図っていることに言及。「出荷の部分は効率を改善できているが、入荷はなかなか改革の手を入れきれていない部分があることが課題だと思う。ぜひとも改善を図っていきたい」と述べた。

トラックドライバーの長時間労働規制が強化される「2024年問題」への対応については「かなり力を入れてやっている領域。例えば、われわれが使っている配送システムをオープン化して委託業者の方々にも提供し、システムが持つ配送ルートの最適化やナレッジ(知見)の蓄積といった機能もお使いいただいている。アスクル以外の荷物についても使っていただいている」と説明。荷主として物流量の平準化や小口の配送低減などを図り、協力運送事業者との関係維持・強化を目指していることに言及した。

内園氏は、物流現場の人手不足に関し「採用自体はやはり昔に比べると難しくなってきている。センターを新規に開設した当初は応募があるが、年を経ると応募自体が減り、採用しづらくなってくる。そうしたところへの対策は必要だと思っている」と語り、物流拠点の業務負荷軽減や効率化が今後も継続的な課題になり続けると展望、働きやすい環境整備の重要性を強調した。

(藤原秀行)

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