世界初、実船に搭載予定のエンジン実機用いたアンモニア混焼試験開始

世界初、実船に搭載予定のエンジン実機用いたアンモニア混焼試験開始

NEDOが―船舶産業分野で、温室効果ガス排出削減目指す

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は5月16日、グリーンイノベーション基金事業「次世代船舶の開発」で取り組んでいる舶用アンモニア燃料エンジンの開発について、世界初となる実船搭載予定の舶用4ストロークエンジン実機を用いたアンモニア燃料混焼率80%の混焼試験を開始したと発表した。

開発業務はIHIグループのIHI原動機が担当している。

今後は、エンジン実機と周辺設備の運転試験を進め、混焼率の向上や温室効果ガスの削減、実船搭載時の品質・安全性の確認を進める。

試験完了後、エンジン実機はアンモニア燃料タグボート(A-Tug、Ammonia-fueled Tugboat)の推進用主機としての搭載を予定している。A-Tugは2024年の竣工、商業運航開始を目指している。

NEDOは海運領域で2050年カーボンニュートラルへの道筋を示し、船舶産業における温室効果ガスの排出量削減を後押ししたい考え。約1年間にわたって様々な条件下でアンモニア混焼試験を実施する。


混焼試験を開始したアンモニア燃料舶用4ストロークエンジン実機

国際海運全体からのCO2排出量は世界全体の約2.1%(2018年時点)を占め、世界経済の成長を背景とした海上輸送需要の増加により、さらに増えることが見込まれている。政府は2021年10月、「国際海運2050年カーボンニュートラル」を目指すことを発表し、国際海運における脱炭素を促進している。

海上輸送のカーボンニュートラル実現には、既存燃料の重油から、水素・アンモニアといった燃料への転換が必須で、新たな燃料を用いたエンジンをはじめ舶用製品の開発が強く求められている。

IHI原動機は「アンモニア燃料国産エンジン搭載船舶の開発」で、中・小型船の推進用主機や大型船の発電用補機に用いられる舶用4ストロークエンジンの開発を推進している。

アンモニアは、燃焼時にCO2を排出しないというメリットを持つ一方、難燃性や腐食性、毒性といった課題も抱えている。特にエンジンの燃料として使用するためには、燃焼の安定性が問題だった。そこでIHI原動機は、木質チップを原料とした発熱量が小さいガス(低カロリーガス)を燃料とするガスエンジンなどの開発ノウハウを生かし、舶用4ストロークエンジンでアンモニアを安定的に燃焼させる技術を確立した。

現時点までの実証で、燃焼時に発生する排ガスの後処理装置など、周辺設備を組み合わせて運転することで、CO2の約300倍の温室効果がある一酸化二窒素(N2O)および未燃アンモニアの排出をほぼゼロとすることができたという。燃料アンモニアの利用を通じた温室効果ガスの排出量削減を確認した。


A-Tugの完成予想図(CG)

NEDOの事業ではこのほか、舶用水素・アンモニア燃料エンジンの開発、LNG(液化天然ガス)燃料船のメタンスリップ対策のための技術開発などを進めており、国内造船業・舶用工業の国際競争力を強化するとともに、海運業も一体となって社会実装を図る。

(藤原秀行)※いずれもプレスリリースより引用

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