東京建物、郊外の物流施設で生み出した再エネ電力余剰分を都心のオフィスビルに「自己託送」へ

東京建物、郊外の物流施設で生み出した再エネ電力余剰分を都心のオフィスビルに「自己託送」へ

カーボンニュートラル促進目指す、日本不動産学会「国土交通大臣賞」を受賞

東京建物は6月6日、「物流不動産」と自家用発電設備で生み出した電気を一般送配電事業者が維持・運用する送配電ネットワークを介して、別の場所にある
施設などに送電する「自己託送制度」を組み合わせ、カーボンニュートラルを推進する取り組みが日本不動産学会業績賞「国土交通大臣賞」を受賞したと発表した。

「国土交通大臣賞」は、学際的な学術研究分野の不動産学の観点から見て優れたもので、かつ特に不動産政策の発展に寄与する優れた業績を表彰している。

東京建物は不動産領域で脱炭素の推進に注力。その一環として、自社で開発する「T-LOGI」ブランドの物流施設の屋根に太陽光パネルを設置し、太陽光(再生可能エネルギー)で電力を生み出している。

物流施設の消費量を上回る再エネ電力を余剰電力として意識的に創り出し、2022年1月からその余剰電力を他の自社保有施設に自己託送する取り組みを展開している。現在は、群馬県伊勢崎市所在の商業施設「スマーク伊勢崎」に融通している。

2023年度内には余剰電力を「八重洲・日本橋・京橋エリア」(YNKエリア)の都心ビル群へ融通することを予定している。燃料調達などを外部に頼らないエネルギーの確保とエネルギーコストの安定、都心部のカーボンニュートラル化につなげていくのが狙いだ。

都心部は様々な施設が高度に集積しており、エネルギー需要が大きい半面、日影の相互干渉を生じやすく、再エネ電力を創出する空間は限られている。また、現在、再エネ電力を都心部に融通する仕組みは非化石証書により「実質的に再エネとみなされる電気」を使用することが主流となっている。

東京建物は複数の物流施設で創出した余剰電力に関し、他の保有施設に直接融通する自己託送事業モデルを不動産業界に先駆けて導入。再エネ電力を創出するための追加的な開発を伴わず、既定の事業資源を最大限に活用しているのが特徴。同社は引き続き、都心部のカーボンニュートラル実現に貢献していくことを目指す。

取り組みの概要
①物流不動産「T-LOGI」の特性を最大限に活用し、『ZEB』基準以上の「T-LOGI」を開発
物流不動産の特性(屋根面積が広い、採光条件が良い、相対的にエネルギー消費が少ない、など)を活かし、屋根に太陽光パネルを設置。当該物流不動産での消費量を上回る再エネ電力を余剰電力として創出するなど、一次エネルギー平均削減率が138%(2023年3月時点の竣工済み8施設の平均値)となる『ZEB』基準以上の物流不動産を開発。竣工から1年経過の3施設(久喜、習志野、横浜青葉)では、合計で年間約2400MWhを発電。

②自己託送制度を活用して、余剰電力を当社保有の他物件へ直接融通
物流不動産で創出した余剰電力につき、「自己託送制度」を活用して自社保有の他物件へ直接融通する仕組みを構築。竣工済物流8施設における総発電量約3820MWh/年の約58%に当たる余剰電力2,210MWhを、当社保有の他物件へ直接融通。なお、この仕組みは不動産会社における国内初の取り組み。

③独自の「バランシング・グループ」を組成、遠隔立地・異用途の複数施設を群管理
余剰電力の直接融通に当たっては、東京建物独自の「バランシング・グループ」を組成し、遠隔立地・異用途の複数施設を群管理。2023年度内には「八重洲・日本橋・京橋エリア」(YNKエリア)の都心ビル群への融通を予定。計画中を含めた18の物流不動産「T-LOGI」全体で約1万6500MWh/年の再エネ電力を創出。うち、約9500MWh/年の余剰電力を自己託送により当社保有の他物件へ直接融通する予定。

(藤原秀行)※いずれも東京建物提供

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