廃食用油再利用と航空分野の温室効果ガス削減に貢献見込む
NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は6月7日、「新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業」で環境エネルギー、北九州市立大学、HiBD研究所と組み、国産特許技術「HiJET技術」を活用し、環境負荷の低い持続可能な航空燃料SAF(Sustainable Aviation Fuel)に関する国際規格「ASTM D7566」の「Annex2」に適合したバイオジェット燃料の製造に成功したと発表した。
NEDOによると、国内の企業や大学などが「Annex2」準拠のバイオジェット燃料を製造するのは日本で初めてという。
本技術は、化石燃料から製造するジェット燃料と同様の化合物で構成されたバイオジェット燃料を廃食用油など動植物性油脂から製造する技術で、「Annex2」に該当。バイオジェット燃料の製造に適した新しい触媒やプロセスを開発することで、既存技術より低圧力・低温度で製造できるようにした。
今後は、パイロットプラントの製造と安定した連続運転の実現に向け、実証実験を継続。SAFの生産をスケールアップする中で得られるデータを活用し、バイオディーゼル、バイオナフサも商用化を目指すことでCO2など温室効果ガスの排出量削減への貢献を目指す。
開発に成功したバイオジェット燃料
ジェット燃料の分野では、CO2など温室効果ガスの排出削減が求められる航空業界の要求に応えるため、SAFの開発が活発化している。しかし、SAFを実際に使用するには国際規格「ASTM D7566」の中で析出点(ジェット燃料の凍結しにくさの尺度で、燃料が結晶化する温度を指す)-40℃以下、かつ芳香族炭化水素濃度0.5%以下などの厳しい品質を満たす必要がある。
NEDOは2018年度から本事業で、3者と共同でバイオジェット燃料製造プロセスの開発を実施、研究開発を続け、国際規格の基準を満たすバイオジェット燃料の製造に成功した。環境エネルギーはHiBD研究所とともに本技術の特許を2019年に取得済み。
本技術は、化石燃料から製造するジェット燃料と同様の化合物で構成されたバイオジェット燃料を廃食用油など動植物性油脂から製造する技術で、原料の廃食用油を基に、水素化を含めたいくつかの工程を経てバイオジェット燃料を製造する。ここで課題となっていたのが、水素化処理の際、油脂の中の酸素原子を除去しながら、炭化水素の芳香族化を防止した上で、航空機が飛ぶ氷点下の環境でも凍らないように異性化させて流動性を上げることだった。
今回改良した触媒とプロセスによって、従来と比較して芳香族の生成を80%以上抑制するとともに、析出点が-65℃以下、かつ芳香族炭化水素濃度0.05%未満の燃料製造に成功し、バイオジェット燃料の国際規格を満たせるようになった。
バイオジェット燃料製造工程概要
「ASTM D7566」は、国際的な標準化・規格設定機関ASTM Internationalが定める「代替ジェット燃料等合成燃料」を含む航空用ジェット燃料に関する国際規格。この中で「Annex2」は特に廃食用油や植物油などの脂肪酸エステルの水素化により燃料を製造する技術を対象としている。
本事業で開発したラボレベルのHiJET技術水素化装置
(藤原秀行)※いずれもプレスリリースより引用