今年の物流環境大賞、日本初LNG燃料フェリー就航のフェリーさんふらわあを選出

今年の物流環境大賞、日本初LNG燃料フェリー就航のフェリーさんふらわあを選出

温室効果ガス排出に貢献、6月27日表彰式

日本物流団体連合会(物流連)は6月6日、物流部門の環境保全活動などで優れた功績を残した企業や団体に贈る「第24回物流環境大賞」の受賞者を発表した。

今年の大賞は「日本初のLNG(液化天然ガス)燃料フェリー『さんふらわあ くれない』大阪別府航路へ就航」のフェリーさんふらわあが受賞した。

日本で初めて、LNGを燃料に用いることが可能なフェリーの運航を、大阪~別府間の航路で1月に開始。LNG燃料を使用することで硫黄酸化物(SOx)排出量はほぼ 100%、窒素酸化物(NOx)排出量は約85%、CO2排出量は約26%削減できると見込まれていることなどから、温室効果ガス排出へ大きく貢献することを評価した。

各賞の受賞者は以下の通り。表彰式は6月27日の午後2時半から東京都港区新橋の「第一ホテル東京」で開催する。

▼低炭素物流推進賞(1件)
北海道ロジサービス
「持続可能な『北海道のライフライン』物流ネットワークの構築」
生活協同組合コープさっぽろ、サッポロドラッグストアーの北海道全域の店舗輸配送で集約配送・他企業との共同配送、配車統合と拠点の共同化を順次行い、車両台数・CO2排出量・ドライバー労務時間を削減した。

▼サステナブル活動賞(2件)
AGCロジスティクス、諸星運輸、名鉄運輸
「RFIDを活用したパレット回収物流システムの構築」
専用パレットにRFIDを貼付し、このタグを活用して回収するスキームを確立した。回収率を平均80%に上げ、パレットの廃棄の削減や新規パレット生産における CO2排出量の抑制に貢献した。

SBS東芝ロジスティクス、東芝ホクト電子
「工業用マグネトロン DFL アプローチによるサステナブル包装の取り組み」
DFL(Design for Logistics)の考え方に基づき、製品仕様を企画・設計段階までさかのぼって見直しを図ることで、包装箱のオール段ボール化・コンパクト化・軽量化を実現した。

▼先進技術賞(2件)
クリンペット・ジャパン
「圧縮梱包による物流の効率化を図る」
食品用真空パックを応用し、空気を抜く圧縮梱包(特許取得済)により、ペーパータオル製品の質感を損なわず約50%の圧縮を実現、輸送容積を小さくすることで CO2排出量を40%削減した。

三井倉庫ホールディングス
「グローバルサプライチェーンにおけるCO2排出量可視化サービスの開発」
物流CO2排出量算定システムとして「MS CO2 Navigator」(簡易算定)、「MS CO2 Analyzer」(一括算定)の2つを開発。物流データ入力によりCO2排出量の可視化、削減のための施策立案をできるサービスの提供を開始した。

▼日本物流記者会賞(1件)
霧島酒造、ニチレイ・ロジスティクス九州
「焼酎製造副産物のリサイクル活動における共同スキームの構築を通じたカーボンニュートラルへの貢献」
ニチレイ・ロジスティクス九州の鹿児島曽於物流センターが霧島酒造より受託している、焼酎原料の流通加工業務において、発生する焼酎製造副産物(芋くず)を行政の認可の下、越境させ、霧島酒造が保有するリサイクルプラントでバイオガスを生成。生成されたバイオガスは、焼酎製造工程のボイラー燃料となるほか、電力へと変換(サツマイモ発電)し、工場や地域の電力への活用を実現した。

▼特別賞(23件)
キーテクノロジー、日本梱包運輸倉庫
「新規輸送における鉄道を利用した長距離ラウンド輸送」
群馬県から福岡県への建設機械用部品の新規輸送について、福岡県内の倉庫で帰り荷とマッチングさせることで、鉄道往復輸送(新座貨物ターミナル駅~福岡貨物ターミナル駅)を開始し、安定供給かつ環境負荷低減に貢献した。

山九、THK、東京九州フェリー、マリネックス、サンキュウ・トランスポート・九州
「お客様との共同改善による精密機器部品輸送のモーダルシフト化(省力化・CO2削減)」
福岡県・山口県から千葉県への精密機械部品輸送について、トラック輸送から海上輸送(新門司港~横須賀港)にモーダルシフトした。転換に当たっては商品を新門司港に集約し、トレーラーに載せてフェリー輸送することで、CO2排出量とドライバーの運転時間削減を実現した。

山九、三井・ダウ ポリケミカル
「岩国・大竹→市原間の海上モーダルシフト」
広島県から千葉県への化学製品の輸送について、トラック輸送から海上輸送(岩国港→千葉港)へ転換し、CO2排出量削減ならびにドライバー負担軽減を実現した。

昭和産業、鈴与、鈴与カーゴネット
「トレーラーを活用したフェリー輸送によるモーダルシフト及び中継輸送の導入による Co2 排出量の削減と法令を遵守した持続可能な運行の実現」
茨城県から兵庫県への食用油の輸送について、一部を大型車陸送輸送からトレーラーを活用したRORO船による海上輸送(千葉港~堺泉北港)にモーダルシフトし、CO2排出量を削減した。陸送は中継輸送(静岡県・愛知県)を併用することによりドライバーの拘束時間も低減した。

住友倉庫
「使用済みストレッチフィルムをリサイクル材へ再資源化する取組み」
産業廃棄物として大阪市内の各倉庫が個別に処理を委託していた使用済みストレッチフィルム等の包装資材を分別・回収し、協力会社のリサイクル工場で再生プラスチック原料に再資源化した。

センコー、旭化成ホームズ、フジテック
「ドリー式ダブル連結トラック導入による長距離輸送の脱炭素化と省人化の推進」
旭化成ホームズ、フジテックの 関西 ⇔ 関東間の配送を集約し共同配送を行った。幹線輸送にダブル連結トラックを活用し、CO2、車両数、ドライバー数を削減しただけでなく、中継地点で車両を乗り替え発地へ帰るため、日帰りの運行を可能にした。

東京九州フェリー、佐川急便、日本郵便
「佐川急便・日本郵便によるフェリーを活用した関東発九州向け幹線共同輸送」
佐川急便の宅配便荷物と日本郵便の郵便物等を積み合わせし、トレーラー1車に集約。東京港から博多港まで海上輸送を行い、CO2削減に貢献した。

東京納品代行
「EVトラック導入による排出ガスの削減」
ディーゼルトラックからEVトラック「eキャンター」へ5車両を変更し、CO2排出量を削減した。

浪速運送、エコビズ、アーバンリサーチ
「エコビズボックス(物流用通い箱)を活用した脱ダンボール配送の実現」
全国190店舗のアパレル納品について繰り返し使用できる「通い箱」を活用して廃棄ダンボール量の削減と、段ボール製造過程で発生するCO2排出量の削減に貢献した。

日本製紙、DOWAエコシステム、日本貨物鉄道
「日本製紙、DOWA、JR貨物 秋田県-首都圏エリア間のラウンド輸送によるモーダルシフト化」
日本製紙は秋田県から首都圏向けの背高の段ボール原紙の輸送について、DOWA所有のウィング型20ftコンテナを使い、一部をトラック輸送から鉄道輸送(秋田貨物駅~越谷貨物ターミナル駅)へモーダルシフト化を進めた。

日本通運
「低炭素な輸送モードへの転換に活用できる輸送商品の開発」
鉄道・船を組み合わせた輸送サービス「Sea&Rail」に2つのサービスを追加した。また、鉄道と内航船両方の緊締が可能な12ftコンテナを開発し、荷物を積み替えることなく鉄道と海上間をシフトできるようになった。

日本通運
「お客様のパレットにそのまま装着、『プロテクトBOXライト』の開発によるパレット一貫輸送」
輸送器材「プロテクトBOX」にパレット分離型の「プロテクトBOXライト」を新バージョンとして追加。パレット出荷貨物を積み替えすることなく器材を装着することが可能になり、梱包資材削減と軽量化による輸送CO2削減に貢献した。

日本通運、三和酒類
「ダブルモーダルシフトによるCO2排出量および運転時間削減の実現
大分県から関西方面までの酒類製品のトラック輸送において、一部区間をトラック輸送・内航船・鉄道での輸送に変更し、CO2排出量ならびにドライバーの運転時間削減を実現した。

日本GLP
「既存物流施設における環境負荷低減に資する『再生』への取り組みについて」
2カ所の既存物流施設について太陽光パネル設置、LED化工事、空調更新工事等を行い、環境負荷低減に貢献した。

三井倉庫、花王、いすゞロジスティクス
「インランドコンテナデポ活用によるCO2・ドライバー負担の削減」
三井倉庫が提案する脱炭素物流支援サービスでCO2排出量を見える化し、花王、いすゞロジスティクス両社と共に、CO2排出量が多いコンテナ動線の改善を行った。

ミネベア アクセスソリューションズ、久留米運送、川崎近海汽船
「フルトレーラーの海上輸送でCO2削減(宮崎↔埼玉 自動車部品/返送パレット幹線輸送)」
宮崎県から埼玉県までの自動車部品輸送ならびに折返しの返送パレット輸送について、フルトレーラーを使った陸送から川崎近海汽船運航のRORO船(大分-清水航路)を利用した海上輸送へモーダルシフトした。

メディセオ、日本石油輸送、日本貨物鉄道、日本フレートライナー
「医薬品物流における定温輸送モーダルシフトの拡大」
関東~関西間の医薬品輸送について、トラック輸送から鉄道輸送(東京貨物ターミナル駅~吹田貨物ターミナル駅)へ転換した。関東~東北間は既に鉄道輸送にシフトしており、温度管理等の医薬品の適正流通(GDP)を遵守するため、専用のコンテナを新造、専属運用とすることで品質保持に努めている。

ユニリーバ・ジャパン、ライオン、PALTAC、鈴与、鈴与カーゴネット
「発荷主・着荷主・物流事業者の三者協力による、低床型のトレーラーを利用した中継輸送の実現」
ユニリーバ、ライオン、PALTAC は関東⇔関西間の配送を集約し共同輸送を実施した。3社は低床トレーラーを導入して積載率を向上させ、車両使用台数と輸送 CO2 排出量削減を行い、中継輸送(静岡県)を行うことでドライバーの負荷低減を実現した。

ロジスティード、ロジスティードソリューションズ
「EcoLogiPortal(サプライチェーン輸送領域におけるCO2排出量可視化サービス)」
サプライチェーンのCO2排出量の可視化、分析に特化した企業向けSaaS型クラウドサービス「EcoLogiPortal」の提供を開始した。発着地情報から国際輸送を含むCO2排出量の概要を把握することが可能。

ロジスティクス・ネットワーク
「CO2排出量削減による環境負荷逓減を目的としたEVトラックの導入」
三菱ふそうトラック・バス株式会社のEVトラック「eキャンター」を関東の物流センターに3台導入。低温物流で使用する車両は冷凍機稼働にも電気を使用するため、通常の100kmよりさらに航続距離が短い。それぞれ運用を変えて運行することにより、EVトラックのノウハウ、知見を積み上げている。

AGCロジスティクス、大王海運、大川運輸
「特殊シャーシの会社間融通によるRORO船利用率の向上」
茨城県から香川県への建築用ガラスの新規輸送について、ガラス専用シャーシの余剰分2台をRORO船(千葉港~宇野港)で使用し、同社の500km以上の輸送に対する海上モーダルシフトを推進した。

SBS東芝ロジスティクス、東芝、積水化成品工業
「リチウムイオン電池100%リサイクル緩衝材採用と収納効率最大化取り組み
輸出向けリチウムイオン電池の包装について、従来のバージンプラスチック発泡緩衝材から、欧米の包装廃棄物規制(特定有害物質の不含有)にも適合を証明できる100%リサイクル材(発泡スチロール)へ転換した。同時に収納効率も上げることで20ft海上コンテナの積載数を25%増、輸送CO2を20%削減した。

SBS東芝ロジスティクス プラットフォーム事業部
「複数拠点からの遠距離輸送プロセスの改善による輸送CO2の削減」
東海地区から北海道への海上輸送と、京浜地区から北海道への鉄道輸送を海上輸送(品川埠頭~苫小牧港)へ一本化し、積載効率を上げ、鉄道輸送に関わる CO2削減ならびにドライバー負担軽減を実現した。

(藤原秀行)

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