実現すれば世界初、脱炭素への貢献期待
三菱重工業グループの三菱造船と日本郵船は6月29日、アンモニア輸送と液化CO2(LCO2)輸送を兼用できる「アンモニア・液化CO2兼用輸送船」の基本設計承認(Approval in Principle、AiP)を一般財団法人日本海事協会(NK)から取得したと発表した。実現すれば世界初となる。
「アンモニア・液化CO2兼用輸送船」のイメージ図
NKから取得したAiP証書
LCO2輸送船は、低・脱炭素社会を実現する手段の1つとして注目されているCCUS(Carbon dioxide Capture Utilization and Storage、CO2の回収・利用・貯留)バリューチェーンで、回収し液化したCO2を貯留地もしくは有効利用地へ効率的に輸送する手段の1つとして重要な役割を担うと見込まれる。
アンモニアは燃焼時にCO2を排出しない次世代のクリーンエネルギーとして世界的に関心が高まっており、脱炭素化の流れの中でアンモニアを戦略的に活用する動きが活発になっている。
三菱造船と日本郵船はそれぞれ、アンモニアとLCO2の各専用輸送船の技術開発に取り組んでいる。両社は大型LCO2輸送船の技術開発で既に協力体制を構築しており、今回のAiP取得を通じて、両社が蓄積したアンモニアとLCO2に関する知見を生かし、同一船舶によるアンモニアとLCO2の安全かつ経済的な輸送を目指す。
同一船舶によるアンモニアとLCO2の輸送が可能になれば、往路でアンモニアを火力発電所に輸送し、復路で火力発電所から排出されたCO2を貯留地へ輸送するといった、専用船とは異なるオペレーションができるようになると想定している。
「アンモニア・液化CO2兼用輸送船」のオペレーション例
(藤原秀行)※いずれも三菱造船と日本郵船提供