全国に162人配置、問題ある疑いの荷主・元請けへ「働きかけ」「要請」強化
国土交通省は7月21日、不適切な取引を運送事業者に強いている疑いのある荷主企業や元請事業者の監視を強化するため、同日付で専任組織「トラック荷主特別対策室」(通称・トラックGメン室)を設置した。
併せて、本省と関東運輸局、東京運輸支局など全国に実際の監視業務を担う「トラックGメン」162人を配置した。
物流センターでの長時間の荷待ちなど、トラックドライバーの厳しい労働環境が完全には改善されていないのを踏まえ、同省はGメンとして80人を新規で増員するなど対策を拡充。問題の所在をより細かく把握できるようにし、改正貨物自動車運送事業法に基づき、問題のある行為をしている荷主企業・元請事業者へ是正を求める「働きかけ」や「要請」といった対策の実効力を高め、ドライバーの長時間労働是正や賃金改善につなげていきたい考えだ。
同省は同日、東京・霞ヶ関の同省内でGメンへの辞令交付式を開催した。同省の鶴田浩久自動車局長は「依然として荷主などに起因する長時間の荷待ちや、運賃・料金などの不当な据え置きといった行為が十分に解消されたとは言えない状況となっている。関係省庁や産業界とも緊密に連携しつつ、一層強力に取り組んでまいりたい。Gメン各位の奮闘を期待する」と訓示。
対策室の小熊弘明室長(自動車局貨物課長兼務)は「使命の重さに、あらためて身の引き締まる思い。特に、ドライバーの働き方改革の観点から、来年度より時間外労働の上限規制の適用を目前に控えており、その円滑な施行のためにも、われわれトラックGメンはスピード感をもって取り組む必要がある」と強調。
「荷主側の事情による長時間の荷待ちの削減や、ドライバーの賃金の原資となる運賃水準の適正化などを実現し、トラック運送業をより働きやすく、働きがいのある環境とすべく、全力で取り組む」と決意を示した。
全日本トラック協会(全ト協)の坂本克己会長は辞令交付式の後、メディアの取材に応じ、「地域の経済の発展とドライバーさんの幸せのために(長時間労働改善などの)義務ができた。われわれ業者もその意味を背負ってしっかりとやっていく。今日は歴史的な日だと思う」とGメン設置に期待をにじませた。
辞令を交付する鶴田局長
辞令交付式の後に握手する国交省・鶴田局長(左)と全ト協・坂本会長
(安藤照乃、藤原秀行)