NEXT Logistics Japan・梅村社長、将来は荷主に最適な生産・出荷計画提案目指す

NEXT Logistics Japan・梅村社長、将来は荷主に最適な生産・出荷計画提案目指す

マルチモーダルで効率的な輸送提案も、ドライバーの年収アップに貢献図る

日野自動車傘下でダブル連結トラックを使った効率的な幹線輸送サービスを手掛けるNEXT Logistics Japan(NLJ)の梅村幸生社長CEO(最高経営責任者)は7月21日、神奈川県相模原市の物流拠点内で、NLJの事業内容などに関する記者会見を開催した。

梅村社長は、2019年12月のNLJ事業開始以来、3年余りで運んだ荷物が10万tを超え、輸送時のトラック積載率も業界平均を上回るなど、着実に成果を挙げていると強調。AIなどの先進技術を駆使し、トラックドライバーの長時間労働規制強化に伴い物流現場の混乱が懸念されている「2024年問題」を克服していくことに強い自信を見せた。

また、膨大な輸送データを生かし、荷主へ最適な生産・出荷計画を提案するなど、サプライチェーン全体をにらんだ物の流れの最適化支援に事業領域を広げていく構想を披露した。

「物流の無駄を見える化し、生産性を徹底的に上げていく。輸送効率を最大限高める」と力説し、トラックドライバー1人でより多くの荷物を運ぶことができる姿を実現、賃金アップや待遇改善につなげていきたいと強調。ドライバーの年収を業界の2倍程度の600万~800万円にしていきたいと語った。


会見する梅村社長

最適な積み付けの計算、2時間→AIで40秒に

NLJは日野自動車のほか、アサヒグループジャパンや日清食品ホールディングス、日本製紙物流、ブリヂストン、江崎グリコ、住友ゴム工業、トランコム、鈴与、ニチレイロジグループ本社、鴻池運輸、キユーソー流通システム、日本梱包運輸倉庫、澁澤倉庫、三菱UFJ銀行、三菱HCキャピタルなど幅広い業種が出資。現在は40社以上と連携し、日々幹線輸送を展開しており、飲料や紙製品、加工食品といった多岐にわたる荷物を混載することで、輸送効率の向上と作業の省人化を図っている。

梅村社長は事業開始以降、今年3月末時点までの累積で運んだ荷物は10万2560t、輸送時の省人化効果は5118人、CO2排出削減量は1075tに達したなどと説明。積載率は60%で、業界平均の39%を上回っており、物流業界の課題となっているトラック輸送の非効率さを改善できているとの見解を示すとともに、70%を目指す考えを明らかにした。

梅村社長は「食品と飲料、食品と日雑、飲料と自動車部品、紙と食品といったように、全体的に生産性を上げている」と混載の意義を語った。

現在はダブル連結トラックを9編成、毎日運行しており、相模原市と兵庫県西宮市の2拠点で荷物を積み替え、中継地点として愛知県豊田市の営業所を活用。1人のドライバーが長距離を走らずに済むようにしていることを解説した。


運行しているダブル連結トラックに整然と積まれた混載の荷物

新たな取り組みとして、22年にソフトウェア開発のエー・スター・クォンタムと連携し、量子力学の考え方に基づき膨大な組み合わせ計算を従来型コンピューターより高速に実行できる「量子コンピューティング技術」を用いて自動配車と積み付けを実現するシステム「NeLOSS(NEXT Logistics Optimal Solution System、ネロス)」を導入したことに言及。

ダブル連結トラックに荷物を積み込む際の最適な組み合わせを計算、実際のオペレーションに反映させており、従来は約2時間要する作業を40秒と劇的に短縮できていることをアピール。積載率向上の大きな要因になっていると語った。さらに、ネロスはNLJで独占せず、いずれは他社にも公開していく考えを表明した。

ネロスの機能強化として、今後は鉄道貨物や内航海運なども合わせた、マルチモーダルで最適な輸送を提案できるようにすることを目指す考えをPRした。

さらに、過去の輸送データやネロスの技術を活用し、荷主へ最適な生産・出荷計画を提案することも構想していると強調。荷姿の標準化なども提案していきたいと説明し、「日本中の物の流れをリデザインしていくことを目指していきたい」と意欲をのぞかせた。

また、政府がダブル連結トラックの走行可能な高速道路のルートを広げていることを念頭に置き、東北や九州の幹線輸送にも対応するため、全国の主要エリアに拠点を広げる可能性にも触れた。

(藤原秀行)

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