野村総研が試算、新設や建て替えを訴え
野村総合研究所は8月5日、「10年後の冷蔵倉庫市場の展望」と題するリポートを公表した。
日本の食を支える冷蔵倉庫の需給が逼迫し、新規で貨物を受け入れる余裕が限定的になっていると指摘。その背景として、老朽化した既存倉庫の建て替えや新設が進んでいないことを挙げた。
10年後の冷蔵倉庫市場に関し、中小の倉庫事業者の3割が廃業すると仮定した場合、36の都道府県で倉庫不足が懸念され、特に東京と神奈川は10万t以上の不足になる可能性があるとの見方を示し、早急な対応を求めた。
「廃業8割なら足りるのは群馬のみ」
リポートは冷蔵倉庫市場の現状に関し、今年4月時点で6大都市の庫腹占有率が平均97%に上り、ほぼ満床になっていることに言及。
「事業者の約9割を中小企業が占め、新規倉庫への投資余力がなく、減価償却済みの古い倉庫を利用している場合が多い。築年数が40年程度から倉庫の建て替えが必要と考えられるが、全国で約34%が築年数40年を超えており、倉庫の更新に至っていない」と分析。
その一方、冷蔵・冷凍食品市場は成長しており、今後も倉庫の需給は逼迫することが予想されるとの見方を示した。
10年後の冷蔵倉庫事業の需給を推計したところ、中小の倉庫事業者の廃業が80%に達した場合、群馬以外の全都道府県で倉庫不足に陥ると試算。北海道や東京、神奈川、千葉、静岡、愛知、大阪、兵庫、福岡の都市部で10万t以上の不足になるとみており、「倉庫の新設や建て替えが必要不可欠」と訴えた。
併せて、青果物の選果など、倉庫事業者による保管スペース提供以外の付加サービスも求められているとして、対応を呼び掛けた。
(藤原秀行)