4億円投じ設備投資、海運・造船分野の脱炭素化に貢献
日立造船は9月19日、今治造船との合弁会社「日立造船マリンエンジン」(熊本県長洲町、出資比率日立造船65%・今治造船35%、HZME)がメタノールを燃料とした舶用エンジンの生産に向け、本社兼工場にメタノール供給装置などを設置すると発表した。
船舶の主機関の舶用エンジンは海運・造船分野の温室効果ガス削減のため、従来の重油焚きからLNG(液化天然ガス)、メタノール、アンモニア、水素などの新燃料への転換が急務となっている。中でもメタノールは、アンモニアや水素と比べて取り扱いが容易なため、LNGに次いでメタノール対応の舶用エンジンの開発が、舶用エンジンに関する世界最大のライセンサー、ドイツのMAN Energy Solutions(マン・エナジー・ソリューションズ)などを中心に進められている。
日立造船はMANからメタノールに対応した二元燃料テストエンジン(4S90ME-C10.5-LGIM)を受注しており、HZMEが本社兼工場で製造や陸上試験による技術検証を行う。今回の設備投資は同テストエンジンの陸上試験に加え、メタノール対応二元燃料エンジンの生産体制を整えることも目的としている。
メタノール対応の二元燃料エンジンは、一部のエンジン型によっては既に実装されているほか、就航船に搭載されたエンジンのメタノール焚きへの改造や、新造船向けの発注も数多く計画されており、メタノール対応二元燃料エンジンの需要は世界的に拡大している。
また、回収したCO2などから作り出す「グリーンメタノール」を燃料とした場合、重油に比べ「Well to Wake(燃料の製造から船上での使用までの全過程と、そこで発生する全ての排出物の総和)」ベースでCO2排出量を90%以上削減できるため、海上輸送のカーボンニュートラルや環境負荷低減に大きく貢献できると見込む。
国際海事機関(IMO)は今年7月、国際海運分野からの温室効果ガス排出量を2050年ごろに実質ゼロにする新たな目標を採択。海運・造船分野のCO2排出抑制がさらに強く求められているため、積極的に設備投資する構え。
今回導入する設備はメタノール供給装置1台、メタノール貯蔵タンク(容量約300kL)、 サービスタンク1基などを計画しており、投資額は約4億円を見込む。
(藤原秀行)