岸田首相「投資を後押し」と表明
政府は11月2日、「デフレ完全脱却のための総合経済対策」を閣議決定した。
物流関連では、10月に関係閣僚会議で取りまとめた、トラックドライバーの長時間労働規制強化に伴う物流現場の混乱が懸念されている「2024年問題」への対応を集めた「物流革新緊急パッケージ」を着実に実施するとともに、可能なものは前倒しして取り組む方針を明記。
併せて、物流の効率化へモーダルシフトや農産品の流通網強化などを支援していく姿勢を強調。深刻な人手不足を考慮して物流領域のDXに注力し、トラックの自動運転やドローンなどの先進技術活用を早急に目指す意向も重ねて明確にした。
岸田文雄首相は同日夜、首相官邸で記者会見し「『デジタル情報配信道』などを整備し、自動運転トラックを活用した物流の実証を行う。2024年問題に直面する物流(業界への)投資を後押ししていく」と説明した。
会見する岸田首相(首相官邸ホームページより引用)
総合経済対策は、物流DXの推進、モーダルシフト促進の支援に加え、高速道路料金の大口・多頻度割引の拡充措置を1年間延長するとともに、既に警察庁が有識者会議で議論を始めている高速道路のトラックの速度規制引き上げについて、早急に結論を得ることを示した。
物流の高度化へ、企業や業界を横断したサプライチェーン全体でデータを共有、活用できるデータ連携基盤を構築する方針を表明。「様々なヒト・モノの移動ニーズと車両・貨物・エネルギー源の最適なマッチングを含むフロンティア領域のサービス創出を通じて、効率的かつ便利で環境にやさしいヒト・モノの移動を実現する」と記した。
また、国土交通相が告示している、運送事業者が荷主との運賃交渉に活用するための「標準的な運賃」を引き上げることをあらためて明示したほか、適正な運賃の収受や賃上げを後押しする新法を24年の通常国会に提出、早期の成立を図ることに言及した。運送事業者が自家用自動車を配送に使える規制緩和を23年度中にさらに拡充する方針も盛り込んだ。
人口減少が進む地方でドローンを物資輸送に使いやすくするため、飛行の申請手続きを簡素化するなど安全規制を緩和することを打ち出した。
また、高速道路のETC通勤時間帯割引について、テレワークの拡大など出勤時間帯が変化していることを受け、時間帯や曜日を問わず実施する。2024年4月に全国で試行を開始、26年度中に本格展開することを目指す。時間変動料金も渋滞緩和や観光需要平準化に向けて拡大する方向。
(藤原秀行)