物流施設訪れるトラックドライバー、8割が休憩所や喫煙所使う余裕なし

物流施設訪れるトラックドライバー、8割が休憩所や喫煙所使う余裕なし

三井不動産が2024年問題受け初調査、「時間に追われる実態」と分析

三井不動産は12月5日、開発・管理運営を手掛ける物流施設「三井不動産ロジスティクスパーク(MFLP)」「三井不動産インダストリアルパーク(MFIP)」に勤める従業員や入出荷で訪れているトラックドライバーを対象に実施した顧客満足度調査結果を公表した。

トラックドライバーの長時間労働規制強化に伴う物流現場の混乱が懸念される「2024年問題」を踏まえ、入出荷作業の実態をつかむのが狙いで、同社としては初めての調査。従業員約5700人、トラックドライバー約1300人の計約7000人が協力した。

このうち、トラックドライバーに関しては、約8割が施設にある休憩所や喫煙所をほとんど使用しておらず、使っていると回答した場合も約6割が「バース入庫までの時間がある場合」に限っていることが分かった。

三井不動産は個別ヒアリングの内容も含め、「物流施設内において、常にバースへの入庫タイミングを気にしながら、時間に追われ、慌ただしく食事やトイレなどを済ませている実態が判明した」と分析。施設のハードおよびソフトにおいて、よりトラックドライバーの利便性・効率性を考慮していく方針を強調している。

個別ヒアリングでは、「荷主からの入庫許可の連絡に遅れたくないので、待機場でもトラックは離れません」(MFLP市川塩浜Ⅱ)、「行き先がすぐに分かるよう、物流施設に入った瞬間に受付や入居企業が分かる看板表示があるとよい」(MFLP茨木、MFLP日野)といった声が聞かれたという。

三井不動産はドライバーの荷待ち時間削減に寄与するため、Hacobuのバース予約システムを今年10月から全施設標準採用としており、同システムを入退場時の車番認証と連携することを一部施設で導入するなど、一層の効率化を検討していく構え。

併せて、今後の物流施設の設計では、トラックドライバーが利用しやすい場所にトイレ、休憩所、コンビニなどを配置したり、施設内の動線や案内標識、サインをより効率性を重視した仕様に改善したりすることも検討。既存物流施設の管理運営では、トラックを離れなくてもドライバーが受けられるサービスの提供を目指す。


MFLP海老名I 喫煙所一体型の大規模トラック待機場


MFLP茨木 トラック待機場に近接するコンビニ・ラウンジ

一方、従業員を対象とした調査では、「防災センターの対応」「警備担当者の対応」「清掃状況」「ラウンジ」の施設のハードおよびソフト面の満足度について、「満足/大変満足」が8割以上を占めたという。

三井不動産は2018、21年にそれぞれ実施した過去の調査に続いて高評価を維持できているとの見方を示しており、今後も施設のハード充実と運営を中心としたソフトの改善を継続していく方針。

調査のフリーアンサーでは、施設の満足度について高い評価の声がある一方、従業員の管理者からは労働力確保と雇用の維持の両面で、施設側の設計・運営上の細やかな対応が重要というニーズが確認できたとみている。

<従業員の声>
・職場が家から近い。施設が綺麗で休憩室にコンビニやテレビもあるので、寛げるから長く働きたい。(MFLP日野)
・一緒に働いている人達が、優しくて働きやすい。設備が整っており、車通勤が出来る。ラウンジが綺麗。トイレ等衛生面が清潔なので、働き続けたい(MFLP海老名I)。

<管理者の声>
・「立地場所、定期設備点検の対応力、防災センター・警備員の的確な対応等が安心できる」(MFLP広島I)
・「十分な座席スペース、清潔で十分な数のトイレ、空調環境が従業員の雇用には重要」(MFLP船橋I)

調査概要
・実施時期:2023年8月21日(月)~9月7日(木)
・対象物件:23物件(関東・中部・関西・中国エリア)
・対象テナント数:約110社
・対 象 者:施設の従業員・トラックドライバー 約2万名(従業員/約 1.4万名、トラックドライバー/約5,000名)
・回 答 数:従業員/5,718回答(回答率 43%)、トラックドライバー/1,345 回答(回答率 27%)
・設 問 数:従業員/23 問、トラックドライバー/17問
・調査方法:ウェブアンケート

(藤原秀行)※いずれも三井不動産提供

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