原油タンカー21隻に搭載して世界最高水準の安全運航を実現
商船三井は4月22日、グループで運航する大型原油タンカー(VLCC)21隻に拡張現実(AR)技術を活用した航海情報表示システムの搭載を決定したと発表した。リアルタイム映像と航海情報を重ねて示すことで乗組員の見張りや操船などを視覚的にサポーする。
今後は液化天然ガス(LNG)船を含む他のエネルギー輸送船隊やドライバルク船隊にも順次搭載していく予定で、世界最高水準の安全運航と将来目標である自律航行船の実現にも寄与する技術の一つとして期待を寄せる。
同システムは古野電気、商船三井テクノトレードと共同開発したもの。古野電気の最新鋭電子海図表示装置(ECDIS)FMD3300シリーズと連携することによって、ブリッジカメラから得られるリアルタイム映像に自動船舶識別装置(AIS)およびレーダーの情報を統合。計画航路と自船周囲で航行する他船や浅瀬などの情報をタブレット端末やディスプレー上に表示する。
AR航海情報表示システム画面例(商船三井ニュースリリースより)
とりわけVLCCは深喫水の制限から船舶交通量の多いマラッカ・シンガポール海峡などでは、他船との衝突などを防止・回避するため極めて慎重な操船を必要とする。AR技術を活用した同システムを導入することでカメラからの映像と各航海計器の情報を統合化・ビジュアル化。乗組員は注意を払う船舶や浅瀬の位置を一目で確認することができる。これにより目視と比べて高精度かつ迅速な見張り・操船が可能になり、安全運航に加えて乗組員の船上業務を軽減することも見込まれる。
VLCC “SUZUKASAN”(商船三井ニュースリリースより)
3社は2018年より実船を用いてAR表示画面の改良と効果検証を実施。このたび古野電気が製品化するに当たって、最も安全運航が求められる船舶の一つであるVLCC船隊に搭載してさらなる高度安全運航を達成・推進する。また引き続きシステムの技術改良と効果検証を進めていく考え。
(鳥羽俊一)