消費者庁が考え方表明、通販事業者らの自主的な対応要請
消費者庁は12月19日、インターネット通販などで定着している「送料無料」表示の見直しに関する考え方を公表した。
この中で、「送料として商品価値以外の追加負担を求めない」旨を表示する場合には、その表示者は表示についての説明責任があると指摘。通販事業者らに対し、「送料無料」とする際の理由や仕組みなどを分かりやすく消費者に説明するよう求めた。
一方、法的な規制については言及せず、規制導入は見送った。
消費者庁は「事業者の自主的な取り組み状況を注視していく」と説明、表示の見直しに関して通販事業者らの自主的な対応を求めていく姿勢を表明した。
消費者庁の説明(同庁ホームページより引用)
送料無料表示については、物流事業者は「ただで荷物を運んでいる」と消費者の誤解を助長し、運賃適正化の妨げになっているなどと反発。半面、通販事業者の間では「消費者の間で広く定着している」などとして、存続を求める声が根強い。
政府は今年6月に取りまとめた「2024年問題」への対応策「物流革新に向けた政策パッケージ」の中で、「運賃・料金が消費者向けの送料に適正に転嫁・反映されるべき」との観点から「送料無料」表示の見直しに取り組む方針を打ち出していた。
消費者庁は政策パッケージ決定直後の今年6月から意見交換会を計9回開催。物流事業者や通販事業者、消費者団体ら関係者の意見を聴取してきた。全日本トラック協会は席上、「送料は運送の対価として収受するものであり『無料』ではない」「『輸送にはコストがかからない』という間違った考え⽅を植え付けることになる」などと主張。
一方、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が代表理事を務める新経済連盟は「別の表現への置き換えは様々な理由から困難」との見解を表明。インターネット関連企業などで構成するセーファーインターネット協会も「『送料無料』表示を見直すことにより、『運賃・料金が消費者向けの送料に適正に転嫁・ 反映される』ことになる根拠などを示していただきたい」などと疑問を表明、表示見直しに慎重な姿勢を明確にした。
関係者間で意見の隔たりが際立ち、歩み寄りには時間がかかるとみられるため、消費者庁は法的規制を見送った。
消費者庁の考え方では、送料負担の仕組みを消費者に分かりやすく表示することを提案。「送料当社負担」や「○○円(送料込み)」といった例を挙げている。
また、「送料無料」を表示する場合は、誰が負担しているのかを明示したり、商品をお勧めるるための販売促進の手法であると説明したりすることを提唱。配送業者に対し、契約に基づいて適正な運賃を支払っていると解説することにも言及した。
さらに、送料表示に併せて、「2024年問題」に関し「物流の持続可能性に対する認識や対応について説明を行うことが望ましい」と強調した。
(藤原秀行)