【独自取材】ニチレイロジ、RPAで効率化し18万時間削減視野

【独自取材】ニチレイロジ、RPAで効率化し18万時間削減視野

業務革新運動を拡充、人手不足の10年後も低温物流持続目指す

ニチレイロジグループ本社は重要な社会インフラの一翼を担っている低温物流ネットワークを深刻な人手不足下でも維持・発展させていくため、グループを挙げた抜本的な業務革新運動を展開している。「労働力不足が続いているであろう10年後も低温物流業務を確実に展開する」ことを念頭に置き、現有のスタッフで業務を乗り切ることができるよう、輸配送や庫内など多岐にわたる施策を同時並行的に推し進めているのが特徴だ。

これまでにも冷蔵倉庫内の入荷検品ペーパーレス化による現場負荷軽減などで着実に成果を挙げてきた。2019年度は自動化ソフトを駆使して仕事を効率化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)をさらに活用。累計で年間18万時間の業務短縮を図ることを視野に入れている。運動全体でもさらに取り組みを拡充させていく方向だ。

目指すは「庫内業務のフルデジタル化」

業務革新運動は現在、2016年4月設立の業務革新推進部などの部署が旗振り役を担い、本社や全国の拠点などと緊密に連携を取りながら推し進めている。

主な取り組みの分野として
①ペーパーレス化
②「誰でもできる化」
③無人・省人化
④トラックの待機問題
⑤事務効率化
⑥新技術活用
――が挙げられる。

同部の北川倫太郎部長は「われわれの現場も人手不足が深刻で作業スタッフを集めるのも相当難しくなっている。そうした状況に経営層が強い危機感を覚えたことが積極的な運動につながっている」と指摘。部署立ち上げからの歩みを回顧し、「当初はグループの従業員もなかなか運動のイメージがわかず、どこかよその部署がやっていること、という目で見ていたが、だいぶ自分自身が進めていくべき取り組みとの実感を持って日々業務に当たってもらえるようになった」と手ごたえを感じている。

勝亦充部長代理は「最初の1年は相当手探りで、自分たちが今何をやるべきかも明確に見えていなかった中で個々の事例を確認し、どういった技術を適用できるかを検証しながら運動を進めた。17年にだいたいの方向性が固まり、現在の立て付けになっていった」と説明する。

例えばペーパーレス化は冷蔵倉庫内の作業にタブレット端末を積極的に取り入れている。従来はピッキングリストなどで大量の紙を使っていたが、「必要な書類を探すのに大きな労力を要していた。チェックすべき項目の数も膨大だった。紙代がかさむ以上に、従業員の業務に無駄が生じていることが大きかった。まさに人間が紙に仕事をさせられている状態だった」(北川部長)という。

そうした悪循環を打破するため、まずはタブレット端末で迅速に入荷検品を済ませることが可能なシステムを全国のセンターに順次導入。直近では30のセンターで展開しており、現場の検品作業時間を3割程度減らすなど目覚ましい成果を挙げている。既に次の段階としてピッキングリストのペーパーレス化に移行しており、北川部長は「目標は庫内業務のフルデジタル化」と話す。

また、問題が顕在化しているトラックの待機問題解消に向け、トラック予約システムを選択。1台当たりの待機時間を30分以内に抑えることを目指し、ユニシスと連携してクラウドベースのシステムを国内の物流センターに展開。他にも省人化・無人化の一環として庫内で無人フォークリフトの実証実験を推進したり、AI(人工知能)を駆使したトラックの自動配車に挑んだりと、多面的な取り組みを進めている。


北川部長(左)と勝亦部長代理

業務削減で空いた時間をより有効活用

物流業界から同社の業務革新運動の中で特に大きな関心が高まっているのが18年3月から各拠点で取り入れているRPAだ。例えば、顧客からファクスで届いたオーダーを従来はスタッフがパソコンに手入力していたが、文字認識のOCR(光学式文字読み取り装置)を活用しながら手書き文字を自動的に読み取りデジタルデータ化できるよう変更。こうした工夫を重ねて累計の業務短縮時間が1万時間まで積み上がってきた。

各地の拠点の中には1カ月当たりの残業時間が前年の半分まで減ったところも出てきた。勝亦氏は「成果がはっきりと目に見えて表れていることで、現場の意識も急速に変わってきた。やれば効果は出るんだと実感してもらえた」と笑顔を見せる。

同社内ではRPAの基本的な業務に精通しているスタッフ「RPAアソシエイツ」の育成も推進。スタッフが各地で業務を行うことで自動化の作業を同時並行的に行えるようにした。現状は約50人のRPAアソシエイツが活躍している。

19年度は各センターが共通で業務に取り組むことにより削減を累計で18万時間まで伸ばすことを目標に掲げている。北川部長は「RPAで仕事量自体を減らしているので、従業員が休みを取りやすくなるなど働き方改革ともうまく連動できるようになっている。効率化で空いた時間をもっとお客さまとのコミュニケーション強化といったところに充てられるのも大きな意味がある」と効果を解説。勝亦氏も「この削減目標が達成できれば、現場業務の姿は今より相当変わっているだろう」と予想する。


RPAによる業務時間短縮の実例(ニチレイロジグループの2018年資料より引用)

「ここまで詳細明かして大丈夫?」の声も

業務革新に関しては昨年11月に開いた「ロジスティクス・ソリューションセミナー」で北川部長が運動の目指す姿や各分野の進捗状況などを丁寧に解説。来場した取引先企業の担当者ら約250人にはおおむね好評だった。参加者からは「成果も含めて、ここまで詳細に明らかにして大丈夫なのか」との声も聞かれるほどだった。北川部長は「当社はここまで真剣に革新を図っているということをご理解いただきたかった。革新運動の個々の事柄についてもう少し細かくお話をうかがいたいという申し出もいただけた」と笑顔を見せる。そこには成果が出てきていることへの自信も感じられる。

業務革新運動を展開するに当たり、業務革新推進部では低温物流の存続が危ぶまれかねない厳しい現状を従業員に正しく理解してもらい、運動の目指すところをきっちりと説明することで機運を高めようと努めてきた。全国で開いた業務革新運動に関するセミナーでは梅澤一彦社長のビデオメッセージを流し、人を減らすのが運動の真意ではなく、創出した時間を付加価値の高い仕事へ回していくことが重要とトップ自ら語り掛けた。

「これからも低温物流に人を集めるのは難しいだろう」と先行きをみる北川部長。「明治維新の時の日本のように、変わらないと生き残っていけないくらいの危機感が必要だろう」と力を込める勝亦氏。こうした問題意識を共有した同社の業務革新は、モデルケースとして低温物流業界に広く浸透していきそうな予感を秘めている。

(藤原秀行)

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