企業の7割が物流の「2024年問題」でマイナス影響見込む、運賃値上げやスケジュール見直しなどで対応

企業の7割が物流の「2024年問題」でマイナス影響見込む、運賃値上げやスケジュール見直しなどで対応

帝国データ調査、コスト増予想がトップ

帝国データバンクは1月26日、建設業やトラック・バス・タクシードライバー、医師などの「働き方改革」を進めるため時間外労働の上限規制が2024年4月より適用される各業界の「204年問題」に対する企業の意識調査結果を公表した。

「2024年問題」全般に対して「マイナスの影響がある」と回答した企業は59.9%に達した。特に物流の2024年問題に関しては68.6%と高率になった。また、具体的な影響を尋ねたところ(複数回答)、「物流コストの増加」が66.4%で最も高かった。

調査は昨年12月18日から今年1月5日の間に実施。対象は全国2万7143社で、有効回答企業数は1万1407社(回答率42.0%)だった。

建設業や運送業、医師などでこれまで猶予されていた、時間外労働の上限規制が適用されることによって生じる人手不足や、輸送能力の低下などが懸念される「2024年問題」全般について尋ねたところ、「マイナスの影響がある」企業は59.9%で、「影響はない」(22.3%)、「プラスの影響がある」(1.6%)を大きく引き離した。

物流の2024年問題に絞ると、「マイナスの影響がある」企業は68.6%に達した。特に「卸売」(79.6%)、「農・林・水産」(78.9%)など6業界で7割超の企業がマイナスの影響を懸念。企業からは「物流コストが増加すれば、製品単価の上昇につながり、景気は後退する」(繊維・繊維製品・服飾品卸売、大阪府)、「現状も部材不足の納期遅延が多い。物流問題が生産計画に波及し、さらに悪化するかもしれない」(電気機械製造、群馬県)といった声が聞かれた。

一方、「プラスの影響がある」と答えた企業からは「長い目で見れば自由な時間が増えるため、若い人も入りやすくなり、運送業界にとっても良いはず」(鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売、東京都)といった前向きな声が寄せられた。

「2024年問題」全般に対して具体的な影響を尋ねたところ、「物流コストの増加」が66.4%と最も高かった(複数回答、以下同)。次いで、「人件費の増加」(41.0%)、「人手不足の悪化」(40.0%)、「配送スケジュールの見直し」(32.4%)と続いた。

業界別に見ると、「物流コストの増加」は「製造」(80.4%)や「卸売」(79.2%)、「農・林・水産」(75.2%)で割合が高くなった。「配送スケジュールの見直し」は「製造」(45.7%)や「卸売」(45.6%)、「小売」(36.4%)といった主に荷主側となる業界で目立った。

「2024年問題」のうち、特に物流の2024年問題に対して、対応(予定含む)を行っているか尋ねたところ、「対応あり」は62.7%、「特に対応しない」は26.4%になった。

さらに、「対応あり」とした企業に対して、具体的な対応策を尋ねたところ、「運送費の値上げ(受け入れ)」が43.3%で首位を占めた(複数回答、以下同)。

上位にはこのほか、「スケジュールの見直し」(36.3%)、「運送事業者の確保」(24.9%)、「発着荷主と運送事業者双方での連携強化」(24.2%)、DXなど「業務のシステム化や効率化の推進」(20.0%)が並んだ。

業界別では、「運送費の値上げ(受け入れ)」は「運輸・倉庫」(51.5%)、「卸売」(50.2%)、「農・林・水産」(50.0%)で5割に到達した。企業からは「物流コストアップは交渉により抑制したいが、一定程度は受け入れる」(広告関連、東京都)との声があった。

そのほか、DXなど「業務のシステム化や効率化の推進」は、「金融」(44.4%)や「不動産」(28.3%)、「サービス」(27.5%)で高く、「ドライバーの確保・育成」は「運輸・倉庫」が53.6%で突出していた。

また、「荷待ち・荷役時間の把握・削減」は「運輸・倉庫」が32.4%でトップ。「製造」(12.2%)や「農・林・水産」(9.1%)が続くが、総じて荷主側企業からの対策意識が低い様子がうかがえたという。

企業からも「時間指定の縛りや、荷役作業に対する荷主側の意識改革がなされない限り、根本的な解決にならない」(紙類・文具・書籍卸売、東京都)といった厳しい声が聞かれた。

物流の2024年問題へ「特に対応しない」企業に対してその理由を尋ねたところ、「これまで通りで問題が生じず、対応する必要がない」が34.6%でトップとなり、「2024年4月以降、問題が生じた際に対応を検討する」(33.6%)が続いた(複数回答、以下同)。

以下、「自社だけでは対応策が検討できない」(27.5%)、「どのように対応すればよいか分からない」(15.8%)が続き、4月が直前に迫っている中でも具体的な対策が見つからず、対応を決めかねている様子が見えてくる。

「2024年問題」全般に対して求める支援策や政策などについて聞いた結果、補助金や助成金など「金銭的支援」(34.0%)、「人材育成・確保支援」(32.3%)が上位にランクイン(複数回答、以下同)。以下、「高速道路料金などの見直し」(29.3%)、「時間外労働の上限規制の猶予期間の延長」(26.6%)、「ルールなどの周知徹底」(21.5%)が続いた。

一方、自動運転やロボット技術など「新技術開発支援」は低位にとどまるが、「高速道路での自動運転の新技術開発など、単に補助金を出すことなどではなく、先を見据えた対策を支援する体制を国に設けてほしい」(メンテナンス・警備・検査、静岡県)といった前向きな意見があった。

企業からの主な声
・自社では既にに対応済みで、そこにビジネスチャンスがあると捉えている(建材・家具、窯業・土石製品製造)
・2024年問題で、労働環境の改善に社会的な関心が高まることは良い(専門サービス)
・従業員(ドライバー)側の意識改革(効率化の推進・取り組み)も必要と考えている(運輸・倉庫)
・運送会社の人材および機材確保以外に発注元(荷主)が運賃の値上げに応じれば良い、安い運賃が全ての元凶である。運賃を上げ運転手および運送会社の待遇改善に充てるべきである。原材料費の値上げ対応はするが、運賃等に関しては削減することしか考えていない(建材・家具、窯業・土石製品卸売)
・物流の2024年問題について、都市部よりも地方の方がより深刻な影響を受けるように思う。長距離貨物の値段が上がる、届くまでの日数がかかるなどの影響が大きくなれば、地方は今より不便になる(電気機械製造)
・建設業は、発注者の意向に合わせ工期が決まることが多い。特に下請けがそのしわ寄せを被る構造的な問題がある。また、工場の場合はラインが停止する年末年始・夏の盆時期の仕事も多々あり、「働き方改革」への対応は悩ましい(建設)
・2024年問題に関する政府の支援策規模が小さ過ぎて意味がない(運輸・倉庫)

(藤原秀行)※いずれも帝国データバンク提供

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