【現地取材】衛星の位置情報で輸送時の温室効果ガス排出量をより正確に計算

【現地取材】衛星の位置情報で輸送時の温室効果ガス排出量をより正確に計算

NEXT Logistics Japanと東京大学発ベンチャーLocationMindが実証実験

日野自動車傘下のNEXT Logistics Japan(NLJ)とGPSを活用した位置情報解析などを手掛ける東京大学発のベンチャーLocationMind(ロケーションマインド)は1月29日、準天頂衛星システム「みちびき」の高精度位置情報などを生かし、輸送時の温室効果ガス排出量をより正確に計算できる技術の実証実験を始めると発表した。

両社は同日、NLJの「相模原センター」(神奈川県相模原市)で実証実験の詳細に関する記者発表会を開催した。

実証実験は内閣府が主催している「2023年度 みちびきを利用した実証事業」の一環として行う。

両社は測位衛星の電波を受信して現在地をつかむ衛星測位システム(GNSS)関連製品の開発・販売を手掛けているビズステーション(長野県松本市)の協力を得て、NLJが運行しているトラックに専用機器を搭載、実際に走った経路のデータを取得し旧来の手法よりも温室効果ガス排出量を精緻に割り出せるかどうかを確認する。実験は2月まで続ける予定。新たなソリューションとして早期に提供できるようにすることを目指す。

記者発表会でロケーションマインドの藤田智明Division Head of Space(宇宙部門長)は「実績を蓄えて新しいビジネスにつなげることで物流分野(の脱炭素促進)に貢献していきたいと考えている」と技術開発の狙いを強調した。


説明する藤田氏


実験のイメージ(両社提供)


信号認証対応サブメータ級 センチメータ級測位補強サービス対応受信機RWS.DC(ビズステーション提供)

NLJは一度により大量の荷物を運ぶことが可能なダブル連結トラックを毎日、関東~関西間で走らせている。実証実験はダブル連結トラック6編成の車内にGNSS受信機を取り付け、片道200km以上を走行、実際の経路のデータを取得する。

実証実験は誤差数cmで測位することが可能なみちびきの「CLAS(センチメータ級測位補強サービス)」を利用。さらに、GNSS受信機に偽の信号を受信させて誤った位置情報を割り出させる「スプーフィング」を防ぐため、受信した信号が本当に測位衛星から発せられたものかどうか確認できる「信号認証サービス」も活用する。


NLJのダブル連結トラック(両社提供)


現地で公開したGNSS受信機(上)と受信アンテナ


GNSS受信機が納められた白いボックス


トラックに取り付けた受信アンテナ

現状では温室効果ガス排出量を把握する場合、トラックの積載率や使っている燃料の種類などを基に算定する「トンキロ法」、燃料を使った量から計算する「燃費法」などがある。

NLJとロケーションマインドはリアルな走行情報を自動的に取得する仕組みを実用化することで、より明確なエビデンスに基づいて排出量を算定し、物流事業者が効率的に温室効果ガス排出削減の目標値や行動計画を策定できるよう後押ししたい考え。

(安藤照乃、藤原秀行)

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