【現地取材・動画】羽田空港の課題解決図る技術研究開発拠点がオープン、自動搬送ロボットなど展開

【現地取材・動画】羽田空港の課題解決図る技術研究開発拠点がオープン、自動搬送ロボットなど展開

保安検査場や手荷物預かり場などのモックアップ設置、より実際に近い環境再現

羽田空港ビルの管理を手掛ける日本空港ビルデングは2月28日、同空港に近接している大規模複合施設「HANEDA INNOVATION CITY(羽田イノベーションシティ)」内で、同空港が抱えるさまざまな課題の解決を図る技術の研究開発拠点「terminal.0 HANEDA(ターミナル・ゼロ・ハネダ)」を開業、メディアに公開した。

同拠点の広さは2780㎡で、契約している企業が有料で利用可能。個室や会議室、カフェスペース、イベントホールなどのほか、保安検査場や手荷物預かり場など空港の施設を再現したモックアップを設置。より実際の空港に近い環境でさまざまな実証実験を行えるよう工夫している。

併せて、同拠点の活動に加わっている企業が自由に利用、互いに交流できるコワーキングスペースも備えている。同拠点には同日現在、32社と1団体、1大学が参画している。

日本空港ビルデングは同拠点を企業や団体などが知見を持ち寄るオープンイノベーションの場として提供し、保安検査の効率化や旅行客らのストレス低減などに資する技術を創出、羽田空港の価値をさらに高めていくことを目指す。将来は海外への技術輸出を実現することも視野に入れている。

同拠点内で記者会見した日本空港ビルデングの池田篤事業開発課副課長は「空港に近いという地の利を生かし、より専門的で確度の高い研究開発が可能になる」と強調。2024年度中に羽田空港で実際に技術を実装できるよう期待を示した。参画している企業などからは3年間で技術の事業化を達成したいとの声が出ているという。


実際の機内の座席を再現している

保安検査のストレス低減狙い

研究開発は特に「保安検査改善」「空間デザイン・アート活用」「未来航空関連」「DX」「働き方」の5分野に注力して進めることを想定している。

同拠点の入り口には昔の空港でおなじみだった、各航空便の到着・出発状況を示すソラリ―(反転フラップ式案内表示機)を模したデジタルサイネージ(電子看板)を設置し、空港の雰囲気を醸し出している。表示している情報は実際の出発便のデータを活用しているという。


入り口に設けている昔のソラリーを模したデジタルサイネージ

手荷物預かりのエリアにはトーヨーカネツが取り扱っているドイツのMaterna(マテルナ)製セルフサービス自動手荷物預けシステム、SJOYが開発した特殊な機械を使って洋服を手のひらに乗るサイズまで圧縮できる技術「PocketTips(ポケットティップス)」を展示。旅行する人が洋服をかばんに詰めたり、スーツケースなどを手荷物として預けたりする際の負荷を大きく減らすことを目指している。

また、空港のスペースにアート作品を展示して旅行者らがリラックスできるようにする取り組みも紹介している。


セルフサービス自動手荷物預けシステム


展示しているアート作品

保安検査場のエリアでは、検査を待つ人向けに、生成AIがその時々の環境を基に、快適に過ごせる画像や音楽、文章を自動的に判断してディスプレイに表示する大阪大学などの研究技術を披露している。

実際の保安検査に使っている設備も取り入れており、金属探知で引っかかった時の警告音はどのようなものがよりストレスを感じさせないかといったことを検討している。


保安検査場を再現したエリア。アート作品やディスプレイを設置している


実際に使っているものと同じ金属探知のゲートも設置

他にも、オカムラとダイキン工業が連携して開発している、「ゆらぎのある風」を作り出せるウィンドユニットを設置。空気を循環させ、空港で保安検査などを待つ人たちがより気持ち良く過ごせる環境を研究している。

丹青社はAGCの透明スクリーンフィルムを使ったデジタルサイネージの実証実験を3月から6月まで行う予定。空港を訪れている人のニーズに応じたサイネージを時間帯別に表示し、購買行動に影響が出るかどうかを調べるという。

スーパーカートが子供を乗せても転倒などを起こさず、空港内を安全に動けるようカートの改良に取り組む。


ゆらぎのある風邪を生み出すウィンドユニット


空港の待合スペースにある座席も実際のものを設置、耐久性などを研究する


カートも改良のためにそろえている

先端技術の活用では、空港内で手荷物を自動で運ぶドーナッツロボティクスのロボット、注文した食べ物や飲み物などを自動で旅行者らの元まで届けるSolidSurfaceの専用ロボットが登場。空港内の設備を仮想のキャラクターが案内するデジタルサイネージなども披露している。

IHIグループのIHI運搬機械による「空飛ぶクルマ」離着陸場のイメージなども登場している。


手荷物を運ぶロボット


食べ物や飲み物などを運搬するロボット


仮想のキャラクターが案内してくれるデジタルサイネージ


仕事や交流ができるラウンジスペース


サウナや仮眠室も設置

(藤原秀行)

テクノロジー/製品カテゴリの最新記事