【独自・新企画】「2024」総力戦を勝ち抜く①LegalOn Technologies

【独自・新企画】「2024」総力戦を勝ち抜く①LegalOn Technologies

「リーガルテック」で就業規則など適正な会社運営支援

スタートが直前に迫っている「2024年問題」は、荷主企業と運送事業者ら物流に携わる全ての関係者が総力を挙げて輸送効率化やドライバーの待遇改善などを実現、克服していくことが不可欠だ。既に様々なアプローチで物流業界の苦境を打開しようとする動きが広がっている。

ロジビズ・オンラインの新連載は、そうした新たな展開を随時紹介する。第1回は、AIを活用した契約書の審査・管理システムなどを展開しているスタートアップのLegalOn Technologies(リーガルオンテクノロジーズ)に焦点を当てる。

同社は法律関連の業務や手続きを新技術で効率化する「リーガルテック」だ。物流事業者に対し、法改正に準じた適正な内容の契約書作成を手助けしたり、2024年問題をクリアできる就業規則のひな型を提供したりと、法律への対応に十分なリソースを充てられない中小事業者らのサポートに注力している。事業を展開する上で必要不可欠な、正しい会社の運営を後押しする「縁の下の力持ち」の活動がさらに存在感を発揮しそうだ。

4000社がサービス利用

リーガルテックは法務省が昨年8月、AIを活用して企業の契約書が妥当な内容かどうか審査するサービスについて、一定の条件を満たせば現行の弁護士法に違反しないとの見解を盛り込んだ指針を公表したのをきっかけに、企業の法務部の間で利用が広がっている。

LegalOn Technologiesは2017年、弁護士資格を持つCEO(最高経営責任者)の角田望氏と取締役の小笠原匡隆氏が共同で立ち上げた。弁護士事務所に勤めていた角田氏は、その際の経験から「弁護士や企業の法務部が手掛けている業務のうち、単純作業をAIなどの技術で支援できるのではないかと思い付いた」と創業の思いを振り返る。

同社は企業法務部や法律事務所出身者を含めて10人以上の弁護士が在籍、サービス開発などに当たっている。その経歴もヤフーや阪急阪神ホールディングス、リクルート、特許庁など多彩な領域で実務経験を持つ点が、法務対応する上で強みになっているようだ。

民間企業出身で衆議院議員の政策担当秘書を務めたこともある法務開発グループゼネラルマネージャーの今野悠樹弁護士は「単に業務を効率化するのにとどまらず、企業の法務という仕事の質を高めることにもつながる」と自社のサービスの意義を強調する。

同社の主力サービスは、AIを活用して契約締結前に書面が適正かどうかを審査する「LegalForce(リーガルフォース)」と、締結した契約を管理する「LegalForceキャビネ」だ。前者は契約書の文案をシステムでレビューすれば、トラブルにつながりそうな箇所をチェック、アラートを出して指摘した上で修正案を提示する。契約で知らないうちに過大な義務を負わされるなどのリスクを回避できるようサポートする。

後者は契約書をクラウドにアップロードすれば自動的にデータベースを作成し、必要な契約書をすぐに検索で見つけられる上、更改の期限が近くなった案件はメールで担当者にリマインドするなど、適正な管理を支援している。

角田CEOは「機械学習を活用して、あらゆる契約類型の学習データを積み重ねることで精度を高めている。リスク回避へ契約書案に対し、実務に沿ったアラートを出せる点も強みになっている」と語る。


LegalForceの契約書文面チェックのイメージ(LegalOn Technologies提供)

企業の法務担当者らの負荷を大幅に減らせる点が評価され、利用企業数がLegalForceは2019年の正式版リリースから約4年半で3500社を、LegalForceキャビネは21年の正式版提供開始から約3年で1000社をそれぞれ突破した。物流業界でも鴻池運輸やキユーソー流通システム、ウイングアーク1st、辰巳商会などが採用。実際、法務担当者が海外企業との契約書をチェックするスピードが格段に速くなったり、過去の類似の契約書の文言を簡単に検索、参照できるようになったりといった効果が上がっているという。

昨年9月には、より小規模の企業向けにLegalForceの機能を絞り込んで価格を抑えた「LFチェッカー」もスタート。幅広い業種・業態の企業に寄り添えるよう注力している。


角田CEO

「白ナンバー」アルコールチェック義務化も考慮

LegalOn Technologiesは2024年問題に直面する物流業や建設業などのサポート強化に乗り出している。その一環として昨年12月、LegalForceで提供している汎用的な契約書のひな形集「LegalForceひな形」で、特定の業界に絞り込んだ「就業規則」の取り扱いをスタートすると発表した。その第一弾が運送業特化型の就業規則だ。

法律知識や業界独特のルールに精通した弁護士が監修し、今年4月1日から時間外労働時間の上限規制が強化されることに対応。さらに、昨年12月から義務化された「白ナンバー」車両をめぐるアルコール検知器によるチェックについても考慮している。

例えば、採用選考時に運転免許証や運転記録証明書を示すよう要求することや、休日の設定、正常な運転ができるよう体調を整えたり顧客の荷物に万全の注意を払ったりするよう服務規程を定めること、社用自動車を使う際の心得などをあらかじめ、ひな形には盛り込んでいる。


運送業向けの就業規則ひな型(LegalOn Technologies提供)

就業規則は法律で常時10人以上を使用する事業場がある企業に作成を義務付けている。中小の運送業にとっては2024年問題など法律やルールの改正の動向を正しく把握し、適法な内容の就業規則をそろえるのは決して容易ではない。汎用的なひな形を準備することで、自社の実態に合うよう最小限修正、すぐに登録できるようになると見込まれる。LegalOn Technologiesは運送業に加え、就業規則の作成やチェックを求められる法律の専門家にとっても利便性が高まると期待している。既に複数の問い合わせが運送業から寄せられているという。

中央省庁を経験した企業法務グループゼネラルマネージャーの谷口香織弁護士は多様な就業規則のひな形作成に携わっており、「幅広い業界をカバーできるのが非常に面白くやりがいがある。中小企業の方々をサポートできるよう、常に法改正などの動きを的確に感知できるようアンテナを張っている」と語る。

他にも、昨年10月にオンラインで法務に関するさまざまなテーマを学習できるようサポートする「Legal Learning(リーガルラーニング)」を開始。企業の法務担当者の知識定着や平準化などを後押ししている。企業法務の実務に関わる法改正の情報をニュース番組形式で弁護士が解説する動画も定期的に配信している。今年1月時点で利用は100社を超え、物流関連の企業も7社が使っている。

角田CEOは「2024年問題への対応は非常に重要。今後は医療や建設の業界向けの就業規則ひな型も提供していきたい。物流業界も継続してサポートしたい」と意気込んでいる。Legal Learningを通じた法改正の動向紹介などコンテンツを拡充していく方針だ。

(藤原秀行)

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