【独自】入出荷予約受付など多様なサービス連携させ「24年問題」解決に貢献

【独自】入出荷予約受付など多様なサービス連携させ「24年問題」解決に貢献

日本パレットレンタル・二村社長インタビュー(前編)

昨年9月に就任した日本パレットレンタル(JPR)の二村篤志社長はこのほど、ロジビズ・オンラインのインタビューに応じた。同社長は2010年6月から13年余りにわたってトップを務めてきた前社長の加納尚美現会長について「パレットの価値、当社の企業価値を高めることに非常に大きく貢献した」と高く評価。顧客企業の問題解決を重視する基本姿勢を継承する意向を強調した。

また、「2024年問題」のスタートを控え、パレットの利用促進に加えて物流施設のバース予約が可能な入出荷予約受付システムなど多様なサービスを組み合わせ、入出荷の効率化を支援していくことに強い意欲を表明。「当社の取り組みはこの問題の解決のためにやってきたようなもの。今後も粛々と続け(ソリューションを)ご提案していきたい」との決意を語った。

併せて、同問題解決には企業内の物流の地位向上を図ることが重要との見解を示し、荷主側の理解が広まることに期待をのぞかせた。発言内容を前後編の2回に分けて紹介する。


取材に応じる二村社長

「パレットは誰もが使うものになる」と予感

――前社長の加納尚美現会長は2010年6月から13年余りにわたってトップを務め、パレット業界、ひいては物流業界の代表的な存在の1人として活躍されてきました。加納氏から社長を引き継ぐことについてどう感じていますか。
「どうしても日本パレットレンタルという社名だけ聞くと、パレットのレンタルだけしかやっていないと思われがちですが、実際には加納がそこに付加価値としてサービスのデジタル化やIT化を推進し、当社の企業価値、パレットの価値を高めてきてくれました。貢献はすごく大きいと思います。非常に感謝しています」

――そんな御社に入社された経緯は?
「30年以上前の大学時代、ちょうどバブル経済真っ只中でしたが、宅配会社でアルバイトをしていました。当時は機械荷役がなく手積みでやっていて、けがをすることも多かったですし、とにかくしんどかった。ぎっくり腰にもなりました。そのころに当社の広告をたまたま見て、パレットを使って荷物をフォークリフトで運べば仕事が非常に楽になると思いました。これから先、パレットは誰もが使うものになるだろうと感じたんです。そうすると、誰に営業してもパレットは確実に使ってもらえるだろう、JPRはまさに食いっぱぐれがないだろうと思い(笑)、就職したいと考えるようになりました」

――もともと物流業界に関心があったのでしょうか。
「いえ、そのアルバイトをしたのは給料が良いからであって、物流には全く興味も関心もなかったんです。宅配の会社にもパレットはありませんでした。ただ、ずっと働く中でけがしたり、周りの人もけがをしたりしていましたし、あるいはトラックに1時間半も2時間もかけて人力で積み込んだら、次のトラックが待っていて息継ぐ暇もない。そんな過酷な環境の中で自分の体の中に何となく、物流に対する関心が徐々にできてきたのかもしれません。今にして思えば、何か作業が楽になるものがないかと常に探していて、そこで当社に出会ったのかもしれないですね」

――入社されて、物流を担当してみていかがでしたか。
「東京で1~2カ月研修した後、最初は札幌に赴任しました。やはり甘くないなと思いましたね。企業も簡単にはパレットを借りてはくれませんし、そもそも札幌は当社の中では比較的新しい営業所で、私は1993年に行ったんですが、その前の年の秋にできたばかりでした。しかも所長と事務担当の2人しかいなかった。パレットをレンタルするということ自体、皆さんご存じなかったので、営業先ではなぜそんなものが商売になるのか、どうやって当社は稼げるのかという基本的なところから説明しなければならなかった。知名度を広げるための取り組みでした。しかし、自分の会社の事業を説明する機会があることがすごく楽しくて、貴重な経験でした。今ではパレットレンタルは多くの方に知っていただいているので、当社の社員でもそうしたことを経験できる社員はもういないと思いますから」

「ちょうど1993年は冷夏で北海道も含めてコメが不作となり、急きょ輸入することが決まりました。そこで以前、パレットを知ってもらおうとあちこち回った営業先の企業から多くのレンタルパレットの注文が寄せられました。お渡しした名刺やカタログを捨てないでいてくれたんですね。そこから引き合いをいただいた農協の方が別の農協の方を紹介していただいたりといった好循環が生まれていきました。農協の中でもコメだけではなくて資材などさまざまなものを取り扱っていて、パレットの利用が広がっていった。本当にありがたかったですね」

「北海道は東京などと異なり、パレットは輸送用よりも保管用の需要が多いんです。そしてコメにしろ肥料にしろ、農産物は一時的な利用なんです。最短で1カ月くらい、長くても6カ月くらいだけパレットが欲しいという方が多かった。そういう方々にとっては、パレットを必要な期間だけレンタルできるという仕組みが非常に合ったんです。パレット利用の仕方がすごくマッチしていたという気がします」

――1回使えばパレットの良さは実感してもらえる?
「そうですね、非常に使いやすいとの評価をいただきました。そのうち、保管に加えて輸送のお客様からの引き合いも増え、徐々に売り上げが伸びていきました。非常にラッキーだったと思います」

――パレットが今のように、物流現場にとって本当になくてはならないものになってきたと感じたのはいつごろでしょうか。
「7年ほど経って東京に異動してからですね。こちらでは輸送にパレットを使われるお客さまがたくさんいらっしゃったんですが、輸送ルートが変更になった場合、当社へ真っ先に連絡が来たんです。パレット輸送ができなくなれば物流が止まってしまいますから、対応を求められる。こんなに物流現場の中にパレットが入り込んでいるのかと思いました」

――御社は既に、パレットのレンタルだけにとどまらない、幅広いサービスを展開しています。顧客からの要望を重視した結果でしょうか。
「そうですね、そもそも当社のパレットをなぜご利用いただけるのかと考えてみると、安全、安心かつ安価にパレット輸送をしたいとのご要望をお持ちで、それを実現してくれるのが当社だとの思いからお話をしていただいています。われわれもそのことを売りにしていたので、お客様のご要望を実現し続けないといけないという思いはありますね」

「お客様がパレット輸送される場合、最初は作業の効率が上がって満足されるんですが、パレット伝票が紙だったため取り扱いや保管がわずらわしく、ミスも起きてしまう。次第にもっと何か効率的にできないだろうかということを言われて、そこから現在のパレット伝票電子化の動きにつながっていったということはあったと思います。パレット輸送をより効率的に、かつより広範囲に展開していくためにはどうすればいいのか、という点でいろいろとご意見をいただきました。基本的にお客様がこうありたいと願われているものをどのように実現していくか、と考え続けてきた点が何十年もわたって新たな仕組みを作る原動力になっていたんだなと感じています」

――創意工夫を凝らし、過去の成功体験にとらわれないのが御社の企業文化なのでしょうか。
「それはもともとあったと思いますね。例えば、当社はレンタルパレットを当社のトラックが巡回して回収する『共同回収』の仕組みを構築しましたが、これも当社が単独で実現したのではなく、主要なメーカーや卸の方々が参画して一緒に考えていった結果、出来上がったものなんです。社員数がわずかなころから当社のサービスは大手のお客様にご利用いただいていて、そこから得られる知見と経験は新たなサービスの開発などに役立ったと思います」

――御社は1970年代末にはパレット管理をコンピューター化されていました。IT化の面でもかなり取り組みが早いですね。
「それこそ加納が入社した後、そうしたことをやりだして、請求などを電算化していったのですが、取り組みは非常に早かったと聞いていますし、パレットの発着場所照合やデータ化の仕組みなども間違いなく業界内で最初に手掛けてきたと思います。まさに今で言うDXですね」

――流通業界の紙伝票電子化を進めるTSUNAGUTEを2018年に設立され、取締役を兼務されています。そちらの方面でいろいろと活動されてきて、いかがでしたか。
「大変でしたね(笑)。納品伝票の電子化に加えて、バース予約が可能な入出荷予約受付システムの『telesa-reserve(テレサリザーブ)』も展開しています。特にバース予約は今まさに波に乗っている領域ですね。電子化や入出荷予約受付システムなどは、それぞれお持ちの会社はありますが、われわれはパレット輸送の仕組みに加えて、納品伝票電子化のDDPlus(プラス)などそれぞれのツールをうまく連携させることができるのが強みです。連携させることでもっと物流の効率を高めていくことができるとの思いで、TSUNAGUTEにも参加しています」

「人手不足より業務効率の悪さを常に感じていた」

――物流現場の人手不足が深刻化していると感じたのはいつごろでしょうか。
「私の感覚ですと、人手不足というよりも業務の効率の悪さはずっと感じていました。効率が悪いから業務がうまく回らないんじゃないかとの思いがずっとあったんですよね。いずれ、もうどうにも回らなくなる時が来るのではないか。物流センターでものすごく待たされた上に作業は手積み、手降ろしも多かったですし、検品も長かった。いずれ納品が計画通りできなくなる時が来るんじゃないかと、そちらの方が気になって仕方がなかったですね」

――それはかなり前からですか。
「私が入社した時からずっとそうでした。今でも状況が大きく変わっているかといえば、必ずしもそうではありませんし」

――ずっと前から効率の悪さは課題と言われていたにも関わらず、変革できなかったのはなぜだと思われますか。
「1つは物流の地位が低かったことでしょう。日本はものを作るところが主力です。企業に入って物流部に配属されるとなっても残念ながら花形の部署ではなかった。だから担当者もずっと変わらない。何か新しいものを作り出そうという発想もない。自分が担当している間は今のやり方でいいんだ、というところがあったのではないでしょうか。もう1つは、ここは日本のいい面でもあるんですが、几帳面なところです。入庫の際の検品は数をきっちりチェックするのに加えて、外装の傷やへこみに対しても過剰なくらい気にしている。そうした部分はやはり物流を効率化する上で妨げになっていた。海外にない、日本特有の要素がいっぱいあって、それが物流にのしかかってきて、効率の悪さ、近代化の妨げ、物流の生産性の低さにつながっていったのではないでしょうか」

――そうした中でも、パレットの導入で非効率を改善できた部分は大きいのではないでしょうか。
「ありますね。確実にパレット輸送は増えました。私が物流業界に入った30年以上前からはずいぶん変わりました。やはり、パレットが現場にあれば皆さん使っていただけるようになると思うんです、パレットは便利なものですから。今、ばらで出荷されているようなメーカーさんや卸さんでも、おそらくパレットがその場にあれば使っていただけるようになると感じています」

――先ほど指摘されていた、物流現場でずっと残っていた非効率は、人手不足の深刻化でより顕在化しているように思えます。
「そうだと思いますね。現場からは結局パレット輸送すればいいのではないかとか、バース予約システムを入れればいいんじゃないかと期待されることが多いのですが、それだけで待機時間や人手不足の問題は解消しないんです。パレット輸送を導入しても物流センターが目詰まりを起こして(入荷してからその)前がつかえていたら荷物を降ろせませんし、パレット積みで降ろせたとしてもそこから先、延々と検品に時間を要していたらドライバーさんは帰れません。納品伝票の電子化もそうですし、『ノー検品』もやり方はいろいろと議論があると思いますが省力化にはつながります。パレット輸送とバース予約など他のサービスを組み合わせることで、おそらく待機時間の削減、拘束時間規制、人手不足の問題は解消されていくのではないかと思います」

後編に続く)

(藤原秀行)

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