国際標準の速やかな規格開発に貢献、社会実装加速図る
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は4月22日、委託事業「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」の成果を基に、日本無線と三菱総合研究所が取りまとめた、無人航空機(ドローン)の衝突回避技術に関する国際標準化機構(ISO)の技術報告書「ISO/TR 23267:Experiment results on test methods for detection and avoidance (DAA) systems for unmanned aircraft systems」(ISO/TR 23267)が4月15日に公開されたと発表した。
報告書はレーダー、光学センサー(カメラ)などを駆使したドローン用衝突回避システムに関する規格「ISO/DIS 15964 Detection and avoidance system for unmanned aircraft systems」(ISO/DIS 15964)の要求事項の根拠と位置付けられており、NEDOは新たな国際標準の速やかな規格開発に貢献することで、無人航空機の社会実装の加速が期待できると意義を説明している。
NEDOの委託事業における衝突回避の実証実験イメージ
ドローンを物流などで活用する際、他の航空機との衝突をどのように回避するかが重要な課題となっている。NEDOの「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト」は2017年度からドローンの衝突回避技術の開発をスタート。21年度までにさまざまな実証実験を展開し、衝突回避技術に関する複数の研究開発成果を公開してきた。
23年度からは日本無線と三菱総合研究所が主要な研究開発成果を取りまとめ、日本発として提案したISO/TR 23267がお披露目された。
ドローンの衝突回避に関しては、2023年10月に運航手順の規格「ISO 21384-3:2023 Unmanned aircraft systems Part 3: Operational procedures」(ISO 21384-3:2023)が衝突回避のCONOPS(運用構想)として新たな章を追加し、6ステップから成る基本的な衝突回避手順を規定した。さらに、この6ステップの衝突回避手順を具現化する衝突回避システムとしてISO/DIS 15964の規格が現在開発中。
今回の技術報告書は、ISO/IEC 専門業務用指針2023年(第3版)の3.3TR(技術報告書)で示される、「関連するIS(国際規格)に関する特定の要求事項に係る根拠を提供するため」を目的として、NEDOの委託事業における衝突回避の実証実験の中から重要な成果を取りまとめており、具体的にはドローンの衝突回避6ステップで使用されるハードウエア・ソフトウエアを本文に提示し、裏付ける根拠として各種実証実験結果などをAnnex(別紙)で示しながら、引用先をBibliographyに明記する構成としている。
レーダーと光学センサー(カメラ)を備えた機体による衝突回避システムの手順について説明している。
また、衝突回避のモデリングとシミュレーション、機器単体の定量的評価試験、ハードウエア・ソフトウエアを試作搭載した飛行試験へとステップアップするテスト方法を解説することで、要求事項の根拠となる衝突回避CONOPSの6ステップにおける各種センサー機器の役割や探知・認識距離などを明示している。
ドローンと有人航空機の衝突回避6ステップ
衝突回避6ステップで使用されるハードウエア・ソフトウエア
衝突回避試験における探知・認識距離
日本発の技術報告書「ISO/TR 23267」が公開されることで、世界各国の無人航空機に関する製造者、販売者、購入者、顧客、業界団体、ユーザー、規制当局などステークホルダーが、個別に進めてきた衝突回避システムに対して、共通概念が提供されることが可能となり、現在開発が進められているハードウエア・ソフトウエアの国際規格(ISO/DIS 15964)の要求事項の根拠と位置付けられることで、早期の国際標準化を推進し、国際的なドローンの社会実装への貢献が見込まれるという。
(藤原秀行)※いずれもNEDO提供