JDSC、大規模言語モデルで海事産業の問い合わせ工数97%削減可能なソリューション開発

JDSC、大規模言語モデルで海事産業の問い合わせ工数97%削減可能なソリューション開発

回答精度は30%向上

AI開発のJDSCは6月17日、生成AIの基盤となるLLM(大規模言語モデル)を活用し、海事産業特有の問い合わせ対応業務の工数を削減できるソリューションを開発したと発表した。

米AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の生成AIサービス「Amazon Bedrock(アマゾンベッドロック)」上でClaude 3 Opus / Sonnet / Haiku(Anthropic Claude on Amazon Bedrock)を利用し、関連する各種契約書や技術情報、規制情報、FAQ、メールなど約1万の専門ドキュメントを横断的に調査、回答することが可能。

これまでに従業者が要した対応時間を約97%削減できる上、回答の精度は30%高められると見込む。

海事産業は荷主、船主、傭船者といった海事クラスターを構成する関連当事者間で日々膨大な問い合わせが行われており、規制への対応確認という即時性が求められるものから、過去事例を参考にした判断が必要なケースなど多種多様。熟練者でもケースごとに参考とする資料が多岐にわたるため確実な回答を行うには1時間以上要する複雑で難易度の高い業務となっている。

対応者の熟練度に応じて回答精度にばらつきがある点も課題で、業務平準化や従業員の高齢化に伴うノウハウ継承の対応が求められている。

JDSCは海事産業のアップグレードを目指し、合弁会社のseawise立ち上げをはじめとする業界横断でのDX支援を推進。その一環として、各種海事関連での仲介をはじめとする総合サービス会社とともに、2023年9月から業務シナリオごとの問い合わせ量と内容の把握と分析、回答に必要となるデータの収集と整理加工、顧客への提供方法の検討を行い、LLMが問い合わせに的確かつ迅速に回答できるようAIの精度の向上に取り組み、開発にこぎ着けた。

船舶運航管理上で課題となる、荷物の積載や寄港地ごとの規制、荷役に関する問い合わせをはじめとする幅広い船舶業務に対応。

LLMが調査と回答を行うことで、これまで対応に1時間要していたものが1~2分で完了できるようになったとともに、これまで15年以上の経験者でなければ回答できなかった専門性の高い内容についても、従事3年目の社員が対応できるようになるなど、業務の平準化と人材活用の幅拡大、後継者への業務手法の引継ぎ、知識継承といった働き方改革の推進に寄与できると想定している。

(藤原秀行)

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