理論回収率99.0%、製品当たりの消費電力量抑制も可能に
木村化工機は8月28日、環境負荷が低い航空燃料「SAF」の原料用バイオエタノールを蒸留する際、CO2排出をゼロにする新型のヒートポンプ式バイオエタノール蒸留装置を開発したと発表した。
同装置のシステムとシミュレーションプログラムで特許を出願した。
同装置は従来機と同様、ボイラー蒸気を不要とし、電力のみで蒸留する。ヒートポンプが装置から排出される低温レベルの熱を回収し、有効エネルギーとして再利用する。
従来機より回収率を上げるために独自の新システムを開発。新たなプログラムによる性能シミュレーションでは、理論回収率99.0%を達成すると同時に、製品当たりの消費電力量を0.7kWh/Lへと大幅に抑えることに成功した。
さらに、再生可能エネルギー由来の電力を使用することで、蒸留時のCO2排出量をゼロとみなせる。
新たな蒸留装置のイメージ(木村化工機提供)
同社は今年4月、国産SAFの商用化と普及拡大に取り組む有志団体「ACT FOR SKY」に加盟、他の加盟企業と連携し、SAFのサプライチェーン構築に尽力する方針を公表した。現状、国内のバイオエタノール自給率はほぼゼロで、海外からの輸入に頼らざるを得ない。
同装置の発明により、輸入品よりカーボンニュートラルで安価な国産バイオエタノールの生産が期待できるとみている。
例えば、食料と競合しない木質系バイオマスのパルプ、稲わらや麦わら、ソルガムなどの草木系ソフトセルロース原料からバイオエタノールを製造する技術が知られており、原料を構成するセルロース、ヘミセルロース、リグニンを前処理として酸またはアルカリで可溶化した後、糖化を経てアルコール発酵させる。
得られた低濃度のエタノールを濃縮する蒸留工程に必要なエネルギーは、プロセス全体の消費エネルギーの大半を占めており、同装置を活用することで、蒸留工程を大幅に省エネ化することが可能という。
同社は他にも、ソフトバイオマスの糖化を容易にする環境負荷が低い亜臨界水を溶媒として連続操作ができる水熱処理技術も保有している。同処理技術と同装置の実用化を通じ、SAFの普及を加速させていきたい考えだ。
(藤原秀行)