【独自】DHLサプライチェーン、新設物流拠点は全て「カーボンニュートラル」化

【独自】DHLサプライチェーン、新設物流拠点は全て「カーボンニュートラル」化

自社専用の場合、太陽光発電を積極展開

DHLグループで3PL事業などを手掛けるDHLサプライチェーンは、ESG(環境・社会・企業統治)を重視した経営を徹底するため、日本で展開している物流拠点の脱炭素化を進めている。拠点屋上に設置した太陽光発電設備で生み出した電力を拠点内のオペレーションに用いることなどで温室効果ガス排出量を抑制、実質的に排出をゼロにする「カーボンニュートラル」の達成を目指している。

今後、国内で新設する物流拠点は、自社のみで1棟借りしていたり、自社が保有・運営したりしているものに関しては全てカーボンニュートラルを実現していく方針だ。2025年には新設分と既存分の両方でそうした物流拠点の全てをカーボンニュートラルとすることを目標に掲げており、再生可能エネルギーを有効活用し、物流の持続可能性を高めていくきたい考えだ。


自社物流拠点の屋上に太陽光発電設備を導入

“農地の太陽光発電”産電力を活用

DHLグループは物流の持続可能性を高めるための戦略として、2030年までに航空・海上輸送に用いる燃料の30%以上を環境負荷の低い燃料に切り替えて行くことや、世界で初めて電動貨物航空機を24年末までに現場へ投入することなどを打ち出している。グループ全体で30年までに70億ユーロ(約1兆1200億円)を脱炭素化領域に投資する計画だ。

30年までの計画では、DHLグループとしてラストワンマイル配送を手掛ける車両の60%を電動化することなども進めている。日本でもそうした戦略の一環で、21年から物流拠点に関し、再生可能エネルギー由来の電力を活用、物流拠点のカーボンニュートラルを図っている。

象徴的な物流拠点の1つが、22年に千葉県印西市でグッドマンジャパンが開発した物流施設「グッドマン・ビジネスパーク・ウエスト」の一角に入居、開設した「印西ロジスティクスセンター・ウエスト」だ。著名なアウトドアアパレルブランド「パタゴニア」を展開している米パタゴニア・インターナショナルの日本支社から物流業務を受託している。

グッドマンジャパンが屋上に取り付けてある太陽光発電設備を利用し、DHLサプライチェーンが同拠点内で使っている電力の約半数を賄っている。梱包資材の徹底したグリーン化を進めており、リユース、リサイクルを通じて廃棄物削減なども進めている。同社のジェローム・ジレ社長兼日本・韓国クラスターCEO(最高経営責任者)は「当社だけでなく、パタゴニアさんとも連携して事業の持続可能性を高めている。ESGの実現には荷主企業との協力が不可欠だ」と指摘する。


「印西ロジスティクスセンター・ウエスト」が入るグッドマンジャパンの物流施設


「印西ロジスティクスセンター・ウエスト」内では、従業員らに対してパタゴニアやDHLSCが目指すESGの取り組みを分かりやすく掲示、説明している

さらに、23年末に千葉県八千代市で竣工した延床面積が約4万㎡の「DHL八千代ロジスティクスセンター」も自社で開発し、複数の企業の物流業務を担う大型拠点として、屋上に取り入れた太陽光発電設備の活用に加え、モーションセンサー付きLED照明の導入による電力使用量抑制なども並行して進めている。カーボンニュートラル達成を強く意識している。

今年3月には、神奈川県相模原市の物流拠点「相模原ロジスティクスセンター」で新たな取り組みをスタートした。太陽光発電パネルを農地の作物の上に設置し、土地を有効活用するとともに、太陽の光が過剰に作物へ当たるのを防いで生育を促進する「アグリPV」の展開を決定。今年10~12月の稼働開始に向け準備を進めている。

アグリPVシステムの企画・設計・運営を手掛けるグリーンシステムコーポレーション、東京大学研究室発のスタートアップで電力の「特定卸供給事業者」のデジタルグリッド、再生可能エネルギーを使った発電に注力している小売電気事業者のリエネの3社が戦略的パートナーとして参加。グリーンシステムコーポレーションが栃木県で設置する大量の太陽光発電パネルから生み出す電力を相模原ロジスティクスセンターで活用する計画だ。

ジレ社長は「アグリPVは農地の有効活用や地域の雇用創出など、非常に社会的な意義が大きい。われわれがそのプロジェクトに参加できるのは非常にうれしいこと」と語る。


アグリPVのイメージ。農地に太陽光発電パネルを配置している


ジレ社長

DHLサプライチェーンは今後、大阪で26年をめどに約5.6万㎡の新たな物流拠点を開設する方向で調整を進めている。この新拠点に関してもカーボンニュートラルを視野に入れている。

併せて、全体の方針として非化石証書の購入はなるべく抑え、極力実際に再エネ由来の電力を物流拠点で使う形に移行していくことを念頭に置いている。自社がテナントの1社として入居している物流施設についても、全体でカーボンニュートラルになるよう、施設のオーナーや他のテナントと協力していくことも検討しているという。

EVトラックの導入に加え、輸配送ルートの最適化を進めて運用車両台数を減らし、物流業務全体からの温室効果ガス排出量抑制を進めていく考えだ。

(藤原秀行)※写真はいずれもDHLサプライチェーン提供

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