官民研究会で提言案、近く正式取りまとめへ
政府は6月5日、東京・霞が関の国土交通省内で、有識者らによる「共同物流等の促進に向けた研究会」(座長・矢野裕児流通経済大教授)の第5回会合を開き、事務局が議論を踏まえた提言の原案を示した。
提言案は物流現場が抱える人手不足などの課題を物流共同化で解決しようとする際の方向性として、短期的な経費削減のためだけでなく、中長期的に一段と物流コストが上昇したり商品を運べなくなるリスクが生じたりすることを避けるためにも必要との認識を荷主企業も含めて共有することが重要などと指摘。
国の施策として、物流総合効率化法(物効法)の認定申請手続きを最大限簡素化し企業による取り組みを後押しすることや、制度上・財政上の支援対象範囲を拡充して荷主と物流事業者の連携を促すことなどを要望した。
研究会は今後意見調整を進めた上で、提言を正式決定。国土交通、経済産業の両省を軸に政策へ反映させていく見込み。
荷姿やシステム、納品条件などの標準化へ施策必要
提言案は、人手不足の深刻化や頻発する災害、国連の持続可能な開発目標(SDGs)への対応、東京オリンピック・パラリンピックといった大規模イベントへの対応などの点から「各企業単位での努力だけにはとどまらず、企業の垣根を越えた協力による物流効率化がますます重要になると考えられる」と指摘。
今後の連携の在り方に関し、輸配送や保管の共同化という“ヨコの連携”に加え、発荷主と着荷主、または荷主と物流事業者という“タテの連携”も重要と強調。幹線輸送の改善にも触れ、共同物流の取り組みを推進していくべきと明記した。
先行事例として、ビール大手4社が関西・中国エリアから九州方面へ共同でモーダルシフトを進めていたり、大手外食チェーンで店舗納品時間・日の平準化を図ったりしていることなどを紹介。共同物流を進める上で、関係者の意識変革、荷姿やシステム、納品条件などの標準化、さまざまな情報の見える化などが必要と整理した。
国に期待する施策として、国がトラックドライバーの長時間労働是正へ物流業務効率化などを民間企業に呼び掛けている「ホワイト物流」推進に言及。官民で標準化を検討する協議会を業界ごとや業界横断的に創設したり、省力化・自動化につながる自動データ収集技術を開発してサプライチェーン全体で最適化を目指したりするよう訴えた。
併せて、共同物流の取り組みが独占禁止法に抵触しないか、分かりやすく情報整理して提示することを国交省に求めた。
研究会の模様(写真は今年5月の第4回会合)
(藤原秀行)