業界団体が初調査、24年度中に対応のガイドライン作成へ
空港で航空機の誘導や貨物の積み降ろし、旅客の搭乗支援といったグランドハンドリング業務(地上支援業務、グラハン)を手掛けている事業者の業界団体「空港グランドハンドリング協会」は12月3日、同業務に従事している人を対象にしたカスタマーハラスメント(カスハラ)の実態調査結果を公表した。
グラハン業界でカスハラの実態調査を実施したのは初めて。一般社団法人ココロバランス研究所、日本カスタマーハラスメント協会と連携して行った。今年6~7月に同協会会員企業の従業員約3万9000人を対象に行い、3割強の1万4714人から有効回答を得た。
従業員の18.9%が直近2年以内に、被害に遭ったことがあると回答。特に、空港内のカウンターで利用者の搭乗支援などを担う「旅客サービス・インフォメーション業務」に当たっている人は35.7%に達した。
航空への貨物搭降載などを担当する「ランプ・上屋業務」は5.0%、航空機の運航をサポートする「オペレーション・その他業務」は5.4%だった。グラハン業務でも見過ごせない程度のカスハラが起きていることをうかがわせた。
被害に遭った人に回数を尋ねると、「1~5回」が最も多く2013人で、全体の9割を占めた。
苦情を言ってきた人と最初に関わった場面を選んでもらったところ、「直接対面」が2371人で8割強に到達。「電話」は1割の278人、「佐内の相談・苦情等の報告」が約2%の77人などと続いた。
苦情を言ってきた人の性別と年代では、50代が男性974人・女性143人、40代が男性646人・女性153人に上り、この両世代からのカスハラ被害が目立っている。
グラハン協会は今回のアンケートを分析し、実際のカスハラへの対策に関するガイドラインを2024年度中に取りまとめたい考えだ。
カスハラに遭遇しやすい旅客サービス・インフォメーション業務の人からの回答では、カスハラ被害の契機として「苦情者の要因(思い込みや勘違いなど)」が532人で、断トツのトップ。「受託物(手荷物・貨物)の汚損、破損、紛失、引き渡し遅れなど」が235人、「苦情者の要因(乗り遅れ)」が232人、「欠航や出発・到着遅延など(天候事由)」が174人などと続いた。
グラハン協会は「3割程度が従業員による解決が難しい事象でカスハラを経験している」と指摘した。発生する時間は午前10時台と午後4時台に多く起きているという。
また、小売・外食などの業界の労働組合「UAゼンセン」が実施した同様のカスハラ実態調査結果と比較した結果、「カスハラ被害の自覚がない従業員がいる可能性や、カスハラへの対応力を備えることがストレス反応を高くさせないことにつながっている可能性などが考えられる」と分析している。
(空港グランドハンドリング協会資料より引用)
(藤原秀行)