サプライチェーンに脅威も
韓国の現地メディアなどによると、韓国の尹錫悦大統領は12月3日夜、緊急声明を出し、「非常戒厳」を宣言した。野党が過半数を占める国会が行政をまひさせていることを理由に挙げた。
同時に、軍幹部らによる戒厳司令部を立ち上げ、政党の活動や集会、デモなど一切の政治活動を禁止するとの布告を公表した。
しかし、韓国国会が12月4日未明、非常戒厳の解除を要求する決議を可決したため、尹大統領は約6時間後の同日未明、テレビ中継で解除する方針を発表した。国会前には政治活動禁止に反発する市民らが集結するなど、波紋が広がった。
韓国の大統領が非常戒厳を出すのは、1987年に民主化して以降では初めて。
韓国では今年4月の国会議員選挙で与党が敗北し、野党が過半数を占めるねじれ状態となった。野党は尹大統領との対決姿勢を鮮明にしており、尹大統領の支持率は低迷していた。
野党は尹大統領に強く反発し、弾劾の手続きに乗り出す構えを見せている。韓国の政局は一気に流動化しそうで、新たな地政学的リスクの高まりになりかねない。
現状では韓国国内の物流に大きな混乱は生じていないようだが、グローバルに展開しているサプライチェーンを抱える日本の産業界にとっても脅威となりそうだ。
(藤原秀行)