NEXT DELIVERYが山梨・小菅村で公開、遠隔監視の様子も
エアロネクストと子会社でドローン物流を手掛けているNEXT DELIVERYは9月25日、山梨県小菅村で定期的に実施している、ドローンなどの技術を組み合わせて地域の物流ネットワーク維持を図る新スマート物流「SkyHub」(スカイハブ)のオペレーションをメディアに公開した。
エアロネクストは、山梨県が実施しているスタートアップ支援策「TRY! YAMANASHI!実証実験サポート事業」の対象に採択され、SkyHubの基盤整備を進めた経緯がある。
同日、県が新たにスタートした幅広い分野で新事業の創出や成長・飛躍を支援する「事業共創プラットフォーム TRY! YAMANASHI!」に関連し、メディアツアーを実施した中で、ドローンを使った商品配送の様子を説明した。
小菅村ではNEXT DELIVERYがSkyHubの運営を担当。村内にある商品の保管・出荷拠点「ドローンデポ」に村民から注文が入ると、ドローンで食品などを空輸し、村民の利便性向上と物流機能の維持を図っている。必要に応じて軽貨物車両で届けることもある。
この日は、注文した商品がドローンで届いた際、以前のように安全確認のため人を配置する必要がなく、既にドローンが商品を置いて飛び立った後に注文者が直接商品を受け取る「置き配」に移行し、物流の効率化と進化を図っている点をアピール。NEXT DELIVERYによれば、ドローンで届けた回数がこの日までの累計で580回を超え、着実に村民の間で受け入れられていることを感じさせた。
村内のドローンデポ
配送実績を表示している。ドローン物流の積み重ねてきた歴史を感じさせる
ドローンが小菅村内の着陸エリアに到着。周りに人はいない
無事商品を届けた
小菅村でSkyHubをスタートした21年当時は、着陸場所に人を配置し、ドローン着陸の際、機体の下に人が立ち入らないよう監視するなどしていた。航空法の規制緩和に伴い、昨年12月からドローンに装着したカメラで飛行ルートの下に人がいないかどうか確認できることなどを条件に人の配置が不要となる「レベル3.5飛行」が解禁されたため、置き配を実現している。
また、小菅村内にNEXT DELIVERYが構えている拠点で、オペレーションの様子も公開。拠点から小菅村に加え、北海道上士幌町など既にSkyHubを社会実装している複数の自治体の飛行を、カメラなどを使って同時に遠隔監視しながら進めている。1人の保安要員で多くの運航をカバーすることで運航の効率化とコスト抑制を実現、人による配送を代替できるようにしている。
村内のNEXT DELIVERY拠点
複数の自治体のドローン飛行を遠隔で監視、安全をサポートしている
オペレーションの様子を見学する小菅村の舩木直美村長。今年4月にエアロネクスト、NEXT DELIVERY、セイノーHDとドローンを含む次世代高度技術の活用による地方創生に向けた包括連携協定を締結するなど、ドローン物流実現を積極的に支援している
現地でメディアの取材に応じたNEXT DELIVERY企画部の近藤建斗部長代理は、新たにドローン配送の早期社会実装を果たすための重要な取り組みとして、配送を担うサービス事業者と荷物を委ねる事業者らとの間で締結するドローン配送約款の普及を図っていく必要性を強調。「約款を使うことで、安心して荷物を空輸することができるようになる。非常に重要なコンテンツ」と指摘した。ドローン配送約款は9月に、全国新スマート物流推進協議会の公式サイトで公開を開始した。
また、新スマート物流に関し、2024年度中に小菅村を含む全国12自治体で事業化を果たせるとの見通しを示した上で「平常時に地域の物流インフラとして新スマート物流を導入することにより、地域のラストワンマイルの問題を解決するとともに、災害時にも被害状況把握や物資輸送などにドローンを使えるようになる」と意義をアピール。平時と緊急時のいずれにも有効活用できる「フェーズフリー」のドローン活用に移行していく方針をアピールした。
物流ドローンの性能などを説明する近藤氏
物流ドローン
(藤原秀行)