昨年に続いて2回目の開催、「取引先からの被害も対応検討が重要」で一致
航空機の誘導など空港の地上業務(グランドハンドリング、グラハン)を担う業界団体の空港グランドハンドリング協会と、航空会社の労働組合が加盟している航空連合の両者は1月27日、東京の羽田空港内で、双方の幹部らが参加した「産業内労使懇談会」を開き、安全対策の在り方などについて意見交換した。
開催は昨年に続いて2回目。顧客や取引先から理不尽なクレーム・言動を受けるカスタマーハラスメント(カスハラ)や人手不足、従業員の待遇改善など、同業界が抱える課題への対処に関し、労使が連携して議論、解決策を推進できるようにするのが狙い。
双方は懇談会で、カスハラについて労使がそれぞれの立場から解決に向けた取り組みを進めていくことの必要性をあらためて確認。空港利用客だけでなく取引先からのカスハラについても対応を考えていくことが重要との認識で一致した。
懇談会
懇談会の冒頭、同協会の服部茂会長(ANAエアポートサービス会長)は「グラハン各社やグラハン業界が成長を果たしていくことが、航空産業の成長につながることをしっかりと発信していきたい」とあいさつ。「適正取引の実現は航空産業のサプライチェーン全体で生み出した付加価値を、その貢献に応じて適正に受け取るための至極まっとうな取り組み」と述べ、サービス料金の価格引き上げによる賃上げの原資確保に取り組む姿勢を強調した。
服部会長
同連合の内藤晃会長は「労働集約型の航空関連産業は企業がコスト競争力を高めるため、労働条件にしわ寄せが行きやすい産業構造になっている。産業全体の安全と、全ての人が安心して働ける産業内の適正な取引を推進し、労務費上昇分を適正に価格に転嫁することで持続可能な産業構造に変革していく必要がある」と指摘した。
内藤会長
両者によると、懇談会の席上、同協会が実施したカスハラに関するグラハン業界の実態調査結果を説明。その結果を分析し、2024年度中にカスハラ対策のガイドラインを取りまとめる方向で作業を進めていることなどを紹介した。
ガイドラインについては、可能な限り具体的な内容にすることや、取引先からの行為についても定めること、組織としてカスハラにどう対応するかについて言及すること、未然に防止することの4点を重視して策定する方針であることを説明。同組合からも大筋で同意する旨の発言があった。
一方、同組合からは、今年1月に適正取引と価格転嫁推進のため、独自の「適正取引ガイドライン」を作成したことを報告。並行して、石破茂内閣の矢田稚子首相補佐官に対し、グラハン業界は業務を受託する側が十分な料金を受け取っていないことなどを指摘、適正取引推進の対策を講じるよう要請したことにも触れ、同業界の持続可能性を高めるための行動の重要性を同協会に呼び掛けた。
懇談会後に記者会見した服部会長は、カスハラのガイドラインについて「年度末に向かって鋭意取り組んでいる。現場に下ろして実効性がなければ意味がないと議論した」と説明。内藤会長は「かなり踏み込んだ内容になると相当期待している」と語った。
会見する両会長
(藤原秀行)